今日のような複雑な競争環境の下で企業経営することは、ジェット機を操縦するのと同じように複雑ですから、多くの計器を必要とします。従来のように、財務的な指標だけを計器とする経営は、変化に適応できないだけでなく、方向感覚さえ失ってしまいかねません。
バランススコアカードは、企業のビジョンや戦略を、複数の計器に当たる業績評価指標に置き換えます。財務的視点のほか、顧客の視点、社内ビジネス・プロセスの視点、学習と成長の視点という、4つのバランスのとれた視点で業績評価指標を設定するため、財務的な成果を追跡すると同時に、将来の可能性を築き上げるための進路を見守ったり、将来の成長に必要な無形資産を取得したりすることができます。
4つの視点で設定される業績評価指標は、最終的に財務的成果につながる因果関係を構成しますので、戦略の財務的成果だけでなく、その達成方法をも同時に明らかにします。したがって、戦略の業績を評価するだけでなく、戦略をマネジメントするためのシステムとしても利用することができます。
マネジメント・システムの要諦は、組織学習にあります。戦略の実行を統制したり効率化したりするためのオペレーションレベルでの改善だけでなく、戦略そのもの仮説検証や見直しに適用できてこそ、戦略的マネジメント・システムとして有効です。
バランス・スコアカードの必要性
現代の複雑で変化の早い経営環境をもたらした主要な原因の一つは、情報化の進展です。その前提には、工業化の進展によって大量生産が可能になったことがありました。
顧客の基本的なニーズが満たされるようになった結果、ニーズは一層高度で多様になりました。また、情報技術は世界を一つにし、グローバル経済をつくり出しました。
したがって、企業もまた、部門や組織の垣根を越えて、顧客指向による統合的な取り組みが求められます。
バランス・スコアカードが必要とされる前提としての経営環境の変化について詳しく知りたい方は、次の記事を参照してください。
バランス・スコアカードの構成
バランス・スコアカードは、長期的競争力を築き上げつつ、歴史的原価に基づく財務会計モデルを固守しようとする要求に応えるために誕生しました。
バランス・スコアカードは、企業のビジョンや戦略を基に、財務的視点、顧客の視点、社内ビジネス・プロセスの視点、学習と成長の視点という4つの視点に関して、目標と業績評価指標を導き出します。財務的業績評価指標は、過去に行ったことの結果を事後的に評価するものです。これを補強するために、他の3つの視点において、将来の業績向上を導く業績評価指標を併用します。
つまり、財務的視点により、短期的な利益を維持ないし確保することを要請しつつ、長期の財務的業績向上と競争優位を確保するためのバリュー・ドライバー(価値創造要因)を明らかにする総合的業績評価指標です。
4つの視点は一種の雛形です。事業に応じて、バリュー・ドライバーとして重要なものを選ばなければなりません。例えば、サプライヤーの視点、地域社会の視点などを含める例があります。
バランス・スコアカードでは、通常、「目標」は定性的に表現されます。目標の達成を定量的に図るために設定するものが「業績評価指標」です。一つの目標に対して、複数の業績評価指標を設定することもあります。業績評価指標の期待値が「ターゲット」です。つまり、ターゲットを達成することをもって、目標が達成されたとみなします。
「業績評価指標」には、目標の達成度を意味する「成果」を測る指標とは別に、「パフォーマンス・ドライバー(業績向上要因)」が含まれます。これは、成果を測る指標を高めることに貢献する指標です。
例えば、成果を測る業績評価指標として「製造のサイクルタイム」を選ぶ場合、「不良率」や「段取り替え時間」などがパフォーマンス・ドライバーとして考えられます。つまり、不良率を低下させ、段取り替え時間を短くすれば、製造のサイクルタイムは短くなるという因果関係を想定しています。
さらに、企業によっては、成果とパフォーマンス・ドライバーという2種類の業績評価指標のほかに、「診断的業績評価指標」を設定する場合もあります。これは、ビジネスが正常にコントロールされているかどうかを確認し、注意を必要とする異常な状況が発生したときにシグナルを発するような業績評価指標です。つまり、あらかじめ定めた正常値の範囲に入っている間は問題にされない指標です。
なお、バランス・スコアカードは、4つの視点のバランスをとることによって部分最適を防ぐことができますが、診断的業績評価指標を設けることによって部分最適を防ぐ方法をとる場合もあります。
例えば、納期遵守を目標とする場合に、敢えて長めの納期を顧客に提案することによって、結果的に達成しやすい納期を設定することがあります。このような目標達成に意味はありませんので、顧客の希望納期と最終的に合意した納期との差を診断的業績評価指標として設定することで、顧客の希望に即した納期遵守を動機づけることができます。
あるいは、在庫を余分に抱えることで納期遵守を達成しようとすることも適切ではありませんので、棚卸資産回転率を診断的業績評価指標として設定することで、過剰在庫を監視することもできます。
診断的業績評価指標と区別するために、成果とパフォーマンス・ドライバーの業績評価指標を特に「戦略的業績評価指標」と呼ぶこともあります。
財務的視点
財務的業績評価指標は、すでにとった行動の経済的結果を要約するのに便利です。さらに、企業戦略の立案と執行が現場の改善に貢献しているかどうかを表す測定尺度の役割を果たします。
財務的業績評価指標には、通常、利益性に関わる指標、例えば、営業利益率、使用総資本利益率、経済的付加価値などが用いられます。それ以外には、売上成長率、キャッシュフロー増加率なども利用可能です。
財務的視点について詳しく知りたい方は、次の記事を参照してください。
顧客の視点
顧客の視点では、現在の顧客およびその市場セグメント、今後の目標とすべき市場セグメントに関わる目標と業績評価指標を明らかにします。
成果の業績評価指標として一般的なものは、顧客満足度、顧客維持率、新規顧客獲得率、顧客の利益性、市場占有率、顧客占有度などです。
ただし、一般的なものだけでは不十分です。企業が顧客に提供しようとしている特定の価値提案プログラムの成果を評価できなければなりません。その価値提案プログラムが顧客のニーズに合致していれば、顧客満足度などの成果に関わる業績評価指標にも現れるため、その価値提案プログラムの有効性が確認できます。
すなわち、価値提案プログラムの業績評価指標の上昇が、顧客満足度などの業績評価指標の上昇につながったということになり、両者の因果関係が検証できます。前者の業績評価指標は、後者の業績評価指標のパフォーマンス・ドライバーに当たります。
顧客の視点について詳しく知りたい方は、次の記事を参照してください。
社内ビジネス・プロセスの視点
社内ビジネス・プロセスの視点では、他社に比べて秀でていなければならない重要なビジネス・プロセスを明らかにします。
社内ビジネス・プロセスは、顧客への価値提案プログラムを効果的かつ効率的に提供し、顧客の視点に関わる業績評価指標に大きく貢献できるものでなければなりません。しかも、財務的目標を達成するようなものでなければなりません。
そのような社内ビジネス・プロセスは、既存のビジネス・プロセスを改善したものではなく、まったく新しいものでなければならないかもしれません。したがって、既存のビジネス・プロセスを前提に考えるのではなく、財務や顧客の視点に関わる業績評価指標に最大の貢献ができるビジネス・プロセスを開発するものでなければなりません。
さらに、バランス・スコアカードは、3年から5年にわたる長期的な成長につながる戦略を具体化するものですから、社内ビジネス・プロセスにはイノベーション・プロセス、すなわち新製品や新サービスを開発するプロセスを含むものでなければなりません。
社内ビジネス・プロセスの視点について詳しく知りたい方は、次の記事を参照してください。
学習と成長の視点
学習と成長の視点は、長期の成長と改善を確保する基盤ないし組織をつくるための視点です。新たな社内ビジネス・プロセスの実行を支えます。
学習と成長は、人間、システム、業務手続の3つが源泉となっています。バランス・スコアカードにおける財務、顧客、社内ビジネス・プロセスの3つの視点は、既存の人間とシステムと業務手続において不足している点を明らかにするはずです。
その不足を埋めるために、従業員の再訓練、情報技術やシステムの強化、業務手続の変更を行わなければなりません。これらが、学習と成長の視点において明らかにされます。
学習と成長の視点について詳しく知りたい方は、次の記事を参照してください。
因果関係としてのバランス・スコアカード
戦略は、因果関係に関する一種の仮説です。これは実行されて検証されるべきものですから、現場レベルで実行できるように、業績評価指標間の関係を具体的な視点にまとめる必要があります。
戦略の内容だけでなく実行プロセスも理解でき、マネジャーや従業員の個々の努力が企業の成果に貢献することを確認できることによって、彼らを動機づけることができなければなりません。
バランス・スコアカードは、そのための視点を4つ(財務、顧客、社内ビジネス・プロセス、学習と成長)用意しており、4つの視点が因果関係の結びつきをつくるようになっています。
バランス・スコアカードは、このような因果関係を通して、戦略に関するストーリーを語ります。業績評価指標が因果関係でつながることによって、企業の戦略の前提である仮説が明らかにされ、具体化されなければなりません。
なお、企業の戦略を特有なものにするのが因果関係の仮説ですが、その因果関係のメカニズムを具体的に表現するものが「パフォーマンス・ドライバー」です。
すでに述べたとおり、バランス・スコアカードには、通常、「成果(目標の達成度)」を測るための業績評価指標と、成果を生み出すために貢献し得る「パフォーマンス・ドライバー(業績向上要因)」としての業績評価指標が含まれます。
成果の業績評価指標は、業界や企業で共通の一般的な指標になる傾向があり、事後的な指標になります。それに対し、パフォーマンス・ドライバーは、その企業に特有で、事前的な指標になる傾向があります。
パフォーマンス・ドライバーがなければ、どのように成果を達成すべきかが示されていないということですから、現場は何をすべきかが分かりません。今やっていることが成果に貢献するかどうかも分かりませんし、うまく行っているかどうかも知りようがありません。たとえ、成果が出たとしても、その原因を理解することができません。
もちろん、パフォーマンス・ドライバーがあっても、成果を測る業績評価指標がなければ、プロセスの改善にはなっても、最終的な利益につながるとは限りませんし、つながっているかどうかも分かりません。改善プログラムの実施自体が目的となっては意味がありません。
企業が存続していくためには財務的な成果としての利益をあげ、成長を目指さなければなりませんから、企業におけるすべての活動は、使用総資本利益率や経済的付加価値といった最終的な財務的業績に貢献するものでなければなりません。
戦略は、目標とそれを達成するメカニズムを明らかにして初めて機能します。バランス・スコアカードは、戦略を、成果とパフォーマンス・ドライバーによる一連の因果関係をもった業績評価指標に落とし込むことを目指します。
マネジメント・システムとしてのバランス・スコアカード
経営戦略を実行するマネジメント・プロセスには、それを阻む様々な障壁が存在します。
財務的業績評価指標と非財務的業績評価指標の両方を持っている企業は多いですが、後者については、現場の業務改善のみに利用されていることが少なくありません。
バランス・スコアカードの目標と業績評価指標は、企業のビジョンや戦略からブレイクダウンされたものであり、財務的業績評価指標と非財務的業績評価指標はいずれもビジョンや戦略を実現するために欠かせないものとして、企業の全階層の従業員に共有され、実行されなければなりません。
このときの業績評価指標は、株主や顧客という外部に向けた業績評価指標と、重要なビジネス・プロセスやイノベーション、学習と成長といった内部に向けた業績評価指標とのバランスを表しています。また、過去の努力結果を表す成果の業績評価指標と、将来の業績向上を導く業績評価指標とのバランスも表しています。さらに、客観的で定量化しやすい業績評価指標と、何らかの主観的な判断を要する業績評価指標とでバランスも保っています。
この意味において、バランス・スコアカードは、「業績評価システム」であると言えます。業績評価システムは重要なゴールを達成するための手段です。ゴールとしての業績を評価するために用いる指標が「業績評価指標」であり、その指標が具体的に達成すべき数値が「ターゲット」です。業績評価指標を測定することによって業績を評価し、ターゲットを達成することをもって成果とみなします。
しかし、バランス・スコアカードは業績評価システムにとどまりません。4つのプロセスにより、「戦略的マネジメント・システム」として、長期的展望に立って戦略をマネジメントすることができるからです。「戦略的マネジメント・システム」とは、経営トップが戦略を実行したり、戦略に関するフィードバック情報の入手を支援するシステムです。戦略の実行プロセスを明確化し、その過程でフィードバック情報を得ながら、戦略レベルでの組織学習を支援します。
ビジョンと戦略を明確にし、わかりやすい言葉に置き換える
バランス・スコアカードの作成プロセスは、マネジャークラスがチームをつくり、ビジョンや戦略を戦略的目標にわかりやすく置き換えることから始まります。通常は、まず、財務的目標と顧客に関わる目標が定められます。
バランス・スコアカードの主な目的は、戦略を立案することではありません。立案された戦略を実行するために、目標や業績評価指標の因果的連鎖関係をつくり、企業全体でコミュニケーションし、現場レベルでの行動にまで落とし込むものです。
戦略の段階では、チームのメンバー全員が同様の理解をしているつもりでも、バランス・スコアカードに置き換えようとすると、いたるところで理解の不一致に気づきます。それでも、4つの視点で業績評価指標を作成するプロセスを通じて、最終的にコンセンサスを得ることができるようになります。業績評価指標が、一種の共通言語として機能するからです。
次に、オペレーショナルな目標として、社内ビジネス・プロセスのための目標や業績評価指標を明確にします。既存のビジネス・プロセスを前提とするのではなく、戦略を実現するためのビジネス・プロセスを開発しなければなりません。
最後に、学習と成長の目標を設定することにより、従業員の再訓練、情報技術や情報システム、高度な組織的業務手続などに対する投資の合理性の根拠を明らかにすることができます。ビジネス・プロセスを機能させるために必要な人材、情報システム、組織を準備するためのものです。
バランス・スコアカードの作成プロセスでは、部門間の垣根を越えた連携を要求し、全社的事業としての共有モデルを生み出します。バランス・スコアカードの作成および実行はチームの連帯責任となり、チームによる統合的なマネジメント・プロセスの基盤としての役割も果たします。
戦略的目標と業績評価指標をリンクし、周知徹底させる
バランス・スコアカードの戦略的目標と業績評価指標は、あらゆる内部的手段を通じて、全社的にコミュニケーションが図られ、シェアされます。
最初に作成されるバランス・スコアカードは、戦略レベルでの目標と業績評価指標を表しますが、これらを現場レベルで従業員が実践できるレベルの業績評価指標に落とし込む必要があります。現場での実践活動の積み重ねが、全社的な成功へとつながっていくものでなければなりません。
バランス・スコアカードに示される業績評価指標は、因果関係でつながれているため、異なる部門の人たちの役割や協力関係が、企業全体に与える影響を理解できるようになります。
計画、目標設定、戦略プログラムの整合性を保つ
バランス・スコアカードは、企業変革の促進に利用されるときに、もっとも大きな力を発揮します。もし成功すれば企業を変革するような、3年から5年先を見越したバランス・スコアカーの業績評価指標のために、意欲的なターゲットを設定すべきです。
それは意欲的な財務ターゲットの設定に始まり、それを達成するために、顧客、社内ビジネス・プロセス、学習と成長の各視点における業績評価指標について、意欲的なターゲットを明確にしなければなりません。各業績評価指標の間には、明確な因果関係が確認できなければなりません。
現在の自社においては見出し得ない社内ビジネス・プロセスが必要であると判断されたときは、ベンチマーキングを利用する必要があるかもしれません。
4つの視点におけるターゲットを設定し終われば、品質、リードタイム、リエンジニアリング・プログラムなど個々の改善プログラムとの整合性をもたせるようにします。個々の改善プログラムは、バランス・スコアカードと整合性をもたせることによって、部分的な改善に終始することなく、企業の戦略的成功に意味をもたせることができるようになります。逆に言えば、戦略の実現にとって重要でないプログラムに経営資源を投入してはいけません。
バランス・スコアカードは、戦略的計画の立案と予算編成プロセスを統合することもできます。例えば、3年から5年に及ぶターゲットに基づいて、次年度一年間に期待すべき具体的数値を設定します。具体的には、次のようなマネジメント・プロセスを踏むことになります。
- 達成しようとする長期の成果を定量化する
- それらの成果を得るためのメカニズムを明確にし、必要な資源を準備する
- 財務的業績評価指標および非財務的業績評価指標に関わる短期の具体的数字を決める
戦略的フィードバックと学習を促進する
バランス・スコアカードをマネジメント・プロセスとして機能させるために最も重要な部分は、戦略的フィードバックによる組織学習です。戦略の実践をモニターしたり、調整したりすることによって、経営トップ・レベルでの組織学習を提供し、必要に応じて戦略自体を根本的に見直すこともできます。
バランス・スコアカードには、財務に関する短期的な具体的数字を盛り込むこともできるため、例えば四半期ごとの財務的成果をチェックすることもできます。
また、顧客、社内ビジネス・プロセス、成長と学習の非財務的指標についてもターゲットを設定するため、財務的指標によって過去を反省するだけでなく、将来についての期待が軌道に乗っているかどうかを議論でき、将来に向けて学習するようにもなります。
フィードバックによる学習には、単一ループと複数フープがあります。単一ループでは、一定の目標に対して、実行結果が計画から逸脱している場合に、計画に沿った軌道に戻すための是正措置をとります。
複数ループでは、環境の変化等によって戦略そのものの修正が必要とされるか否かを判断するためのフィードバックが求められます。今日のような情報化時代には、このフィードバック・プロセスによる学習が重要です。そのようなフィードバック情報が経営トップに届くようにしなければなりません。
また、バランス・スコアカードは、業績評価指標が因果関係でリンクし、それぞれにターゲットが設定されています。その因果関係は仮説に基づくものですから、実行が仮説検証の役割を果たします。仮説が間違っていれば、実行の過程で因果関係がつながらないことがはっきりするからです。
ですから、経営トップは、ネガティブなフィードバック情報についても真剣に取り組み、戦略の見直しの必要性も覚悟しなければなりません。
バランス・スコアカードを活用してビジョンや戦略の整合性を達成する方法について、詳しく知りたい方は、次の記事を参照してください。
バランス・スコアカードを適用する組織
最初からバランス・スコアカードを全社的に導入することは困難です。まずは、戦略的ビジネス・ユニットに限定して導入することが望まれます。
「戦略的ビジネス・ユニット」とは、独自の戦略を策定し、網羅的に実行できる組織単位のことです。すなわち、すべてのバリュー・チェーン(イノベーション、オペレーション、マーケティング、物流、販売、アフターサービス)を含み、独自の製品、顧客、流通チャネル、生産設備を有している組織単位です。
まず、戦略的ビジネス・ユニット全体のバランス・スコアカードを構築します。これが、部門別のバランス・スコアカードを構築する際の基礎となります。部門のマネジャーは、全体のバランス・スコアカードに矛盾なくリンクし、支援できるように、自部門のバランス・スコアカードを構築することが望まれます。
ただし、部門別にバランス・スコアカードを構築すべきかどうかは、その部門がミッション、戦略、顧客(企業内顧客を含む)、ミッションや戦略を実現するためのビジネス・プロセスをもっているかどうかに依存します。
また、複数の戦略的ビジネス・ユニットをもつ企業全体としてバランス・スコアカードを構築する場合は、すべての戦略的ビジネス・ユニットに共通のテーマやビジョンをフレームワークとして作成することになります。
バランス・スコアカードを構築するに当たっては、組織構造と戦略との関連が重要です。この点について詳しく知りたい方は、次の記事を参照してください。
バランス・スコアカードの典型的構築方法
バランス・スコアカードを構築する典型的なプロセスについて紹介されていますので、詳しく知りたい方は、次の記事を参照してください。
バランス・スコアカードによる戦略の立案
バランス・スコアカードの主な目的は、戦略を立案することではなく、立案された戦略を実行することです。戦略を、因果関係を持った一連の業績評価指標に分解し、現場レベルでの実行・検証を可能にするものです。
ただし、多くの場合、戦略について明確化し、組織において合意したと思っても、その戦略を現場業務の業績評価指標に易しい言葉で置き換えようとすると、さらなる戦略の明確化と再定義が必要になります。つまり、バランス・スコアカードに落とし込む過程において、戦略が一層明確になり、完成に近づいていくと言うこともできます。
さらに、戦略を立案するために、バランス・スコアカードのフレーム・ワークを利用することもできます。一つは、顧客の視点から出発して、戦略を立案する方法です。もう一つは、優れた社内ビジネス・プロセスの能力(コア・コンピタンス)からスタートして、戦略を立案する方法です。
(参考:「コア・コンピタンス」とは何か?)