一般的には、イノベーションが変化をつくり出すと考えられているようですが、実際にそうであることは稀であると、ドラッカーは言います。
イノベーションとして典型的だと理解されている発明・発見による技術的イノベーションは、実際のところ例外的で、成功確率も非常に低いものです。
ドラッカーは、イノベーションの具体的で処方的な体系を教えてくれます。それに従って、組織的に取り組むことが効果的です。
ドラッカーが提言するのは、すでに起こった変化を利用するものが成功するイノベーションであるということです。変化そのものと、それが認識されて受け入れられるまでの時間差を利用します。そこにイノベーションの機会があります。
イノベーションの方法論
イノベーションの方法論は、企業家の行動としてあげたとおり、変化を探し、変化に対応し、変化を新しいものを生み出す機会として利用することです。変化とは、すでに起こった変化または起こりつつある変化です。
- 変化を、典型的な分類に従って、意識的かつ組織的に探す。
- 見出した変化を、その分類に応じた適切な方法によって、経済的・社会的イノベーションの機会として体系的に分析する。
大事なことは、変化は、予見するというより、探すものであるということです。さらに大事なことは、変化が機会を生み出すという認識です。
機会は、その看板を掲げて外部に存在しているものではありません。自ら変化を機会に換えようとしなければなりません。自社に特有の強み、顧客が価値とするものを考慮しながら、機会として利用できないかを考え抜くことが必要です。
イノベーションの7つの機会
ドラッカーは、イノベーションの機会として利用できる変化を7つに分類しています。それぞれ異なる性格をもっていることから、分類に応じた探し方や分析の仕方を類型化しています。
- 予期せぬことの生起(予期せぬ成功、予期せぬ失敗)
- ギャップの存在(理想と現実のギャップ)
- ニーズの存在
- 産業構造の変化
- 人口構造の変化
- 認識の変化(ものの見方、感じ方、考え方の変化)
- 新しい知識の出現
最初の4つは、組織や産業の内部の事象であり、表面的な事象です。内部にいる人たちには、よく見えるはずのものです。
残りの3つは、組織や産業の外部の事象です。
これらの事象は、完全に独立したものではなく、一つの出来事が複数の事象として見える場合もあると言います。その意味で、ドラッカーは7つの窓に似ていると言っています。
7つの機会で見つかる変化は、実際、いずれが重要であり生産的であるかをあらかじめ知ることはできませんが、7つの機会の順序には意味があると言います。
上記の順番に信頼性と確実性が大きく、失敗のリスクや不確実性は小さく、事業の開始から成果が生まれるまでのリードタイムが短いと言います。
それぞれの機会について詳しく知りたい方は、次の記事を参照してください。
なお、機会を活用するイノベーションではないものの、数として最も多く、全体の70~80%にのぼるのはアイデアによるイノベーションです。これについて詳しく知りたい方は、次の記事を参照してください。