ギャップの存在

イノベーションの機会としてのギャップは、理想と現実の乖離や不一致を意味します。

内部の者には、はっきり認識できますが、当たり前のこととしているため、機会として利用できません。その間、新たな競合が機会を利用し、成功します。

ギャップには、次の4つがあります。

  • 業績ギャップ
  • 認識ギャップ
  • 価値観ギャップ
  • プロセス・ギャップ

同じ現象が、複数のギャップとして現れることもあります。

ギャップとは何か

ギャップとは、理想と現実の乖離や不一致を意味します。経済構造や社会構造に変化をもたらす不安定な状態であり、すでに起こった変化や起こり得る変化の兆候、すなわちイノベーションの機会を示す兆候です。

一つの産業、市場、プロセスの内部に存在するギャップであり、内部やその周辺にいる者には、はっきり認識できるものです。

認識できるにもかかわらず、機会として利用できない理由は、内部の者には当然のこととして受け止められ、見逃しやすいからです。内部の者は「ずっとそうだったから仕方がない」と思っているのですが、実際はごく最近のことにすぎないこともあります。

さらに、ギャップは数字や報告に表れるような定量的なものではなく、定性的なものがほとんどです。

原因は分からないこともありますが、機会ととらえてイノベーションに利用することはできます。しかし、内部の者はギャップを埋めようと躍起になっており、原因解明にとらわれていることもあります。その間に、誰にも気づかれないまま、新たな競合が機会をとらえて成功していきます。

業績ギャップ

製品やサービスに対する需要は伸びているのに、業績があがらない状態です。特定の企業等で起こるのではなく、産業全体あるいは社会部門全体でマクロ的に起こっている現象を指しています。

通常、中小の専門企業がイノベーションとして利用することが多く、利用できれば長期にわたって利益を享受することができます。その間、他の企業等は、あちこちをいじり回し、需要の増大と業績不振とのギャップを埋めるのに忙しく、競争相手に気づくことさえありません。

原因が分からないことも多いですが、それにとらわれ、原因を取り除こうとしていると、機会として認識することができません。ギャップの存在は分かっているのですから、

  • イノベーションの機会として利用するためにはどうすべきか。
  • 何がそれを機会に変えてくれるか。
  • 何ができるか。

を検討することが先決です。

イノベーションの機会として利用するには、まず解決すべき問題を明確し、既知の技術と既存の資源を利用してイノベーションを実現します。開発のための努力は必要ですが、革新的な知的発見が必要なら、企業にとっては機が熟していないと考えるべきです。

ギャップを利用するためのイノベーションは単純で、当たり前のものでなければなりません。

認識ギャップ

産業内部の者が、現実についての誤った認識を持っている場合です。間違った方向に努力を傾け、間違った問題を解決しようとしています。本当の問題に気づいていないため、成果を期待できない分野に集中しています。

このギャップも、産業や社会的部門全体に見られる現象です。

真剣な努力が事態を改善せず、むしろ悪化させるときは、努力の方向が間違っていると考えるべきです。

このような場合、単に成果のあがることに力を入れるだけでイノベーションできます。ですから、華々しいイノベーションが必要なことはあまりなく、通常、的を絞った単純で小さなイノベーションで済みます。

価値観ギャップ

企業等が、顧客の価値観や期待、あるいはそれらの変化に気づいていない場合、誤解している場合です。顧客が本当に買っているものを誤解している場合、価値観が細分化して新たな需要が生まれていることに気づいていない場合などです。

ギャップの背後には、企業等の傲慢、硬直、独断があります。そういう場合の企業等のセリフは、

消費者は不合理であって、品質に対して金を払おうとしない

というものです。そのような認識がギャップの存在を示しています。最も多く見られるギャップであり、容易に競合の参入を許してしまいます。

プロセス・ギャップ

顧客が製品やサービスを利用する過程に存在するギャップです。顧客はすでに知っていて、現に困っていますが、仕方がないと思っています。

製品やサービスそのものの利用に存在するギャップであれば、クレームや要望として把握しやすいですが、その前後のプロセスや関連するプロセスなどに存在している場合は、簡単には分かりません。

必要なことは、顧客の声に耳を傾け、真剣に取り上げることです。困っていることを率直に聞くことが必要です。

このギャップは、内部の者だけが利用できます。外部の者は容易に見つけ、理解することはできないギャップです。