人口構造の変化

産業や市場の外部で起こる変化のうち、最も明らかで予測が容易なものが、人口構造の変化です。いつ起こるか予測ができます。

人口構造の変化は、消費者市場の変化、労働市場の変化、社会そのものの変化です。

そして、最も実り多きイノベーションの機会です。あまりに明白であり、簡単に予測できるため、ほとんど誰も準備しようとしないからです。

人口構造の変化とは

人口構造の変化は、産業や市場の外部における変化のうち、最も明白なものです。予測が容易であり、タイムラグも明らかです。

人口の増減、年齢構成、雇用、教育水準、所得などの変化であり、顧客や市場そのものの変化を意味します。どのような製品が、誰に、どれだけ購入されるかに大きな影響を与える変化です。

イノベーションの機会

人口構造の変化は、常に実りあるイノベーションの機会です。なぜなら、明白な変化として予測が容易であり、タイムラグも明らかでありながら、ほとんどの企業はそれを無視しているからです。

明白であり、タイムラグが明らかであるため、その時になったら対応すればよいと考えています。「まだ先のことだから、今は他の緊急なことをやろう。その時が来たら、その時の人が考えるだろう。」と思っています。

その時はすぐやってきます。気づいたら、その時にやるべき人は自分であることに気づきます。早くに気づいていたはずなのに、まるで突然起こった自然災害のように右往左往します。

人手不足の状況を見れば、それがよく分かります。誰もがずっと前から分かっていたはずなのに、突然襲ってきた災厄のように口を揃えて不平不満を並べます。

かつて消費者の嗜好が大きく変化したとき、マーケティングの重要性が言われ始めました。作れば売れる時代を過ごしてきた企業は、それを受け入れることができませんでした。顧客のニーズに基づいて製品を企画し、生産するという発想が理解できませんでした。

今では、マーケティングの本質を理解できているかどうかは別として、少なくとも顧客のニーズに合わせて製品やサービスを提供することの重要性を理解しない企業はいないでしょう。

同じようなことが労働市場で起こっています。売り手市場でありながら、募集・採用に当たってマーケティングを行っている企業はごくわずかです。募集・採用にマーケティングが必要であることを伝えても、ほとんどの企業はポカンとしています。

未だに買い手市場の発想で募集・採用をしています。企業が社員を選ぶ立場であるという発想が支配しており、社員に選ばれるための募集・採用を真剣に考え、実践している企業は本当にわずかです。

顧客のマーケティングに取り組まない企業が淘汰されてきたように、社員のマーケティングに取り組まない企業が今後淘汰されていくことは間違いありません。

人口構造の変化をイノベーションの機会として利用できるかどうかは、来るべき将来の明白な現実を素直に受け入れるかどうかだけにかかっています。そのための行動を今行わなければならないことを受け入れるかどうかにかかっています。

多くの人は、その将来がまさに今訪れたときに突然気づき、行動し始めます。行動の結果が現れるときは、すでに次なる変化が訪れるときです。

ですから、人口構造の変化を受け入れ、タイムラグを利用して今から行動を開始する人は、常にイノベーションの機会を手にし続けます。

変化の分析

人口構造の変化の分析は、人口に関わる数字を扱いますが、人口の総数そのものではなく、年齢構成が重要です。

特に、社会の空気、市場の構造、消費者の嗜好の趨勢に影響を与えるのは、最大の年齢集団、すなわち人口の重心です。人口の重心が移動するにしたがって、時代の空気が一変します。

その他、教育水準、職業区分、雇用失業情勢、所得階層、貯蓄性向なども人口構造の分析の対象です。

重要なことは統計分析ではありません。統計は出発点ですが、それをもとに、わが社の事業にどのような機会をもたらすかを自問しなければなりません。

様々な仮説をもち、実際に現場を見て、聞かなければなりません。