スタートアップにも組織の構築が必要です。チャンスを起業につなげるには、マネジメントの原理が必要です。
その原理は、構造や組織の設計、ビジョンやコンセプト、製品開発、マーケティングと営業、スケールアップ、提携と流通に至るすべてをカバーするものです。
スタートアップは、とてつもなく不確実な状態で新しい製品を創り出さなければならないため、確実で完璧な計画を立て、それを実行するような方法ではうまく行きません。
スタートアップの目標は、できる限り早く、作るべき製品を突き止めることです。その方法がリーン・スタートアップであり、その中心コンセプトは、実験による仮説検証と学びのフィードバック・ループを素早く回転させることです。
進みながら素早く調整する
スタートアップは、綿密な企画と設計の下で、完璧な新製品を作ろうとしがちです。その結果、誰も欲しがらないということが少なくありません。この場合、予算内で予定通りに完成できたことなど何の意味もありません。
スタートアップは、発車後に方向を調整できないロケットのようであってはいけません。運転しながら方向を調整できる自動車のようでなければなりません。
リーンスタートアップでは、様々な仮説に基づいて複雑な計画を立てるのではなく、「構築−計測−学習のフィードバック・ループ」というハンドルによって、継続的に調整を行います。
「ピボット(方向転換)」すべきなのか、今のままの方向性を維持して「辛抱」すべきなのかを学びます。
順調にエンジンの回転が上がった後、スケールアップして事業を成長させます。
明確な目的地としてのビジョン
自分たちがどこに向かっているのかは、操縦している間、明確に意識し続けます。その目的地は、スタートアップの「ビジョン」です。
ビジョンを実現するため、「戦略」を採用します。戦略は、ビジネスモデル、製品ロードマップ、提携企業や競合他社の視点、予想される顧客などの項目で構成されます。
成長のエンジンとしての製品
この戦略から生み出される成果物が「製品」(サービスを含む。)です。製品は、スタートアップにとって「成長のエンジン」です。機能やマーケティング方法などの改良は、成長のエンジンのチューニングに相当します。
製品は、フィードバック・ループの繰り返しによる「最適化」プロセスを通して、チューニングが行われます。スタートアップの仕事の大半は、成長のエンジンをチューニングすることです。
戦略は仮説に基づくため、仮説が間違っていれば、変更が必要です。これを「ピボット(方向転換)」と呼びます。ただし、全体を支配するビジョンはめったに変わりません。失敗や障害は、ビジョンという目的に到達する方法を学ぶチャンスであるととらえます。
スタートアップを目的地に到達させるのが、アントレプレナーの仕事です。
検証のための「学びの中間目標」
目的地に向かっているかどうか測る定量的な方法も必要です。検証可能な予測が行える必要があります。これらは、通常の管理会計ではうまくできません。
機能部門ごとに成績を上げるように求めるものではなく、機能横断的なチームとしての「学びの中間目標」を定量的に定め、達成するように求めます。
現実のスタートアップでは、様々な活動が並んで進行します。様々な活動をバランス良く進めなければならないのが難しいところです。成長によって変化するのは、様々な活動内容のバランスです。