「構築−計測−学習」のフィードバック・ループ − 「リーン・スタートアップ」とは何か?③

スタートアップは、アイデアを製品に変える触媒のようなものです。実験の繰り返しによってフィードバックやデータを得ることによって、製品が具体化され、持続可能な事業が構築されていきます。

その中核は、「構築−計測−学習」のフィードバック・ループにあります。これを素早く繰り返しながら、データを科学的に検証し、成功や失敗を通して学びを深めていきます。

「構築」とは、アイデアを製品にする段階です。「計測」とは、製品を使ってもらってデータを得る段階です。「学習」とは、データを基にアイデアを改善する段階です。

リーン・スタートアップは枠組みであって一定のステップをただ踏襲すればよいというものではありません。会社ごとの状況に合わせて応用すべきものです。

仮説の設定

アントレプレナーの多くは、アイデア、製品、データといった個々の部分にエネルギーを集中しがちです。

重要なことは、それらを完全なものにしようとして一喜一憂することではなく、フィードバック・ループを素早く回転させることによってトータル時間を最小にすることです。

なお、「構築−計測−学習」のループはこの順番で実行しますが、計画は逆順で行います。まず、学ぶべき仮説を見つけ、仮説検証による学びを得るために計測しなければならないものを革新会計で確認し、実験と計測を可能とする製品を設計します。

まず、フィードバック・ループにおいて検証すべき仮説を選ばなければなりません。

スタートアップの計画で最もリスクが高い要素、すなわち他のすべてを支える基礎となっている部分を「挑戦の要となる仮説」と呼びます。

特に重要なのが、「価値仮説」(この製品は顧客にとって価値ありとする仮説)と「成長仮説」(この製品は事業の持続的成長に貢献できるとする仮説)です。

構築

次に「構築」の段階です。できるだけ早く「実用最小限の製品(Minimum Viable Product=MVP)」を作ります。

MVPは、フィードバック・ループを回せるレベルであって、最小限の労力と時間で開発できる製品です。

MVPはプロトタイプの一種であり、見込み客に見せ、あるいは使ってもらって、反応を見定めることが目的です。

無料で配布することが前提ではなく、売る努力をしなければならない場合もあります。買ってもらるかどうかも仮説検証になり得るからです。

計測

「計測」の段階では、製品開発が本当の前進につながっているのかを判断できなければなりません。そのための独自の仕組みとして「革新会計」という手法を用います。

革新会計を支援する基準として、「行動につながる評価基準」(顧客の行動を分析できる基準)を設けます。そこでは「虚栄の評価基準」に気をつける必要があります。

学習

「計測」されたデータを検証して、顧客のニーズ(本心)を学びます。しかし、学んだものは、その段階では仮説に過ぎません。その仮説もまた検証する必要があります。

新たなフィードバックループ

学習によって得られた新たな仮説を検証するために、新たにフィードバック・ループを回します。

まず、新たな仮説に基づいてMVPをチューニング(改善)します。これが、新たな「構築」の段階です。続いて、計測し、学習します。

この「構築−計測−学習」のフィードバック・ループの繰り返しによって、MVPが徐々に最適化され、作るべき製品が明確になっていきます。

最適化の限界

「構築−計測−学習」のループの繰り返しによって最適化に限界が来ると、重要で難しい問いに直面します。当初戦略を維持するか、それとも「ピボット(方向転換)」するかの判断です。

挑戦の要となる「価値仮説」や「成長仮説」などに誤りがあると分かった場合、仮説の根本的な見直しを迫られます。

これは戦略自体の見直しになるため、単なるチューニングによる改善・最適化ではなく、「ピボット(方向転換)」と呼ばれます。