ピボット(方向転換)のタイプ − 「リーン・スタートアップ」とは何か?⑧

「ピボット(方向転換)」とは変化の一種で、リーン・スタートアップにおいて、製品やビジネスモデル、成長のエンジンについて根本的な仮説を新しく設定し、それを検証するための行動を指します。

ピボットにはいくつかのタイプがあります。

ズームイン型ピボット

製品が実装していた複数の機能のうちの一つに集中します。顧客の評価が特に低い機能があり、それが原因でうまく行っていない場合に、その機能に集中して方向転換します。

評価が特に低い機能だから捨てるべきと考えてはいけません。アーリーアダプターの多くが特定の機能に低い評価をするということは、その機能を重視していることを意味しているからです。

ズームアウト型ピボット

ズームイン型ピボットの逆で、一つの機能で製品全体を支えきれない場合に機能を増やし、これまでの機能をもっと大きな製品の一機能としてとらえ直します。

顧客セグメント型ピボット

製品の機能を変えるのではなく、ターゲットを変えます。想定していた顧客とは異なる顧客が想定外に強い関心を示している場合に、試してみる価値があります。

顧客の適切な問題を解決してはいるので、製品仮説が部分的に検証されている状態です。ただ、想定とは異なる顧客の問題であったということです。

顧客ニーズ型ピボット

製品仮説を検証しながら顧客をよくよく知っていく過程で、当初解決しようとしていた問題が、顧客にとって重要性が高いものではなかったことに気づくことがあります。

この場合も、製品仮説は部分的に検証されている状態ですが、自分たちに解決できるもっと重要な問題を別に発見できたということですので、そのもっと重要なニーズに方向転換します。

このピボットは、それまでに作った製品の位置づけを調整する程度で対応できることが多いですが、新しい製品を作り直さなければならない場合もあります。

プラットフォーム型ピボット

ソフトウェア製品をアプリケーションとして販売しようと想定していたものを、プラットフォーム製品に転換させ、利用や参加に応じて課金するようになる場合です。その逆もあります。

よくあるパターンは、新しいプラットフォームを構築したいと思いつつ、まずは自分たちのプラットフォームで使うキラーアプリケーションを発売したところ、後にそのプラットフォームがサードパーティ各社の製品構築に利用されるようになるというものです。

事業構造型ピボット

高利益率・少量の「複合システムモデル」と低利益率・大量の「大量操業モデル」の間での構造転換を行うものです。

前者は企業間取引(BtoB)やエンタープライズ相手の営業サイクルになります。後者は消費者製品になることが多いですが、例外もあります。

価値捕捉型ピボット

製品が生み出す価値の捉え方を変えることです。

価値の捉え方は製品仮説の一部で切り離すことができないため、価値の捉え方を変えると、事業戦略や製品戦略、マーケティング戦略に様々な影響が出ます。

成長エンジン型ピボット

成長のスピードアップや利益の多い成長を実現するために、成長戦略を切り替えることです。

スタートアップの成長エンジンは、ウィルス型、粘着型、支出型の3種類の成長モデルが基本です。

成長のエンジンを切り替えると、多くの場合、価値の捕捉方法も変わります。

チャネル型ピボット

製品を顧客に届ける機構である販売(流通)チャネルを切り替えることです。

技術型ピボット

同じ製品をまったく異なる技術で実現でき、その異なる技術のほうが価格や性能の面で優れていると分かった際に行うもので、確立された事業で利用されることが多いピボットです。

いわゆる持続的イノベーションであり、既存の顧客ベースに訴求して維持することを目的に段階的に改良するパターンとなります。

ピボットには製品を捨てることが伴う場合もあります。それは苦労を無駄にすることのように思えますが、貴重な価値があるのは製品ではなく学びです。学んだ価値を重視することで、ピボット後のフィードバック・ループは一層加速されます。