マネジメントのスキル

マネジメントの仕事は様々ですが、体系的な分析により、客観的に共通する仕事が存在します。

  1. 目標を設定する。
  2. 組織する。
  3. 動機づけとコミュニケーションを図る(チーム・ワーク)。
  4. 評価測定する。
  5. 人材を育成する。

これらの仕事をこなすには、一定のスキルが必要です。ドラッカーによると、必要なスキルは4つあります。

意思決定

マネジメントの仕事の中で、絶対に避けては通れないのが「意思決定」です。

意思決定の体系的な方法論を開発しているのは、日本の組織であると、ドラッカーは言います。ドラッカーによれば、日本と欧米の意思決定の本質的な違いは、意思決定の力点の違いです。欧米では問題の「答え」に力点がありますが、日本では「問題の明確化」に力点があります。

答えの違いの多くは、「何についての意思決定か」についての認識の違いから生じます。答えを出そうとしている問題についての認識が違っているということです。

ですから、問題の明確化を徹底して行う必要があります。

意思決定においては、何もしないことを決定することも一つの決定です。行動によって得られるものが、コストやリスクよりも大きいときは行動します。また、行動するかしないか、いずれかにしなければなりません。

決定前の議論から、すべての関係者の参画を求めなければなりません。行動と成果に対する関係者全員のコミットが必要です。意思決定のなかに実行の手順や責任を組み込み、フィードバックの仕組みも導入しておきます。

意思決定のスキルについて詳しく知りたい方は、次の記事を参照してください。

コミュニケーション

コミュニケーションは、マネジメントのスキルであるとともに、マネジメントの仕事そのものでもあります。組織の一員として、組織の成果に責任を持つ以上、コミュニケーションを避けて通ることができません。

コミュニケーションには、いくつかの基本的な原理があります。ドラッカーが指摘する最も重要なことは、コミュニケーションが受け手の知覚によって成立するということです。受け手に焦点を合わせない限り、コミュニケーションは成立しません。

仕事においてコミュニケーションを成立させる最善の方法は、「自己目標管理」です。

まず、上司は、部下が設定した自己目標を通して、部下の理解や期待を知ります。次いで、部下は、自己目標に対する上司の見解を通して、上司の理解と期待を知ります。互いに知覚の違いが分かります。互いの知覚の違いを知ることから、本当のコミュニケーションが始まります。

コミュニケーションのスキルについて詳しく知りたい方は、次の記事を参照してください。

管理

マネジメントの役割の一つに、仕事を管理する活動があります。

一つは、既存の事業について、経営資源の生産性を高め、より少ないコストでより大きな成果を出すための活動です。もう一つは、企業家的活動です。成果の小さな分野から、成果の大きな分野、成果が増大する分野へと資源を振り替えること、すなわちイノベーションです。

管理とは、上司による命令や監督のことではなく、自己管理のための手段です。管理のための行動を起こすことのできる者に、確実に測定結果が到達し、行動につながる必要があります。

ただし、結局のところ、管理手段は賞罰のシステムに優るものではなく、人事、賞罰と整合した管理手段でなければなりません。

管理手段のスキルについて詳しく知りたい方は、次の記事を参照してください。

分析

分析のスキルとは、経営科学(マネジメント・サイエンス)をツールとして活用できることです。

経営科学とは、組織的活動全般における種々の管理活動を管理者の意思決定プロセスとしてとらえて、そのプロセスを合理化、効率化するための科学的方法を研究する学問分野です。(参考:『ブリタニカ国際大百科事典』)

経営科学はマネジメントの有力なツールですが、活用できているマネジメントはほとんどいないと言います。経営科学の方も、マネジメントの期待に十分応えられていません。

原因は双方の側にあります。経営科学の側に独立した真の学問としての自覚がないこと、マネジメントが経営科学に求めるべきものを求めていないことです。

経営科学を生産的なものにし、マネジメントの道具として活用しなければなりません。経営科学に問題提起と問題理解、代替案の提示を要求し、その成果を意思決定に活用する必要があります。

経営科学のスキルについて詳しく知りたい方は、次の記事を参照してください。