規模のマネジメント

組織の規模を表す指標の代表は、従業員です。売上で表現する場合もあります。

しかし、ドラッカーは、規模とは総合的なものであると言います。また、産業や市場によって、大小や適正の基準も異なります。次の要因を総合的に見る必要があります。

従業員数、売上高、付加価値、製品、市場、技術、産業構造

一方で、ドラッカーは、企業の規模をある程度正確に判定する基準を教えています。

結局のところ、規模の問題は、トップマネジメントの構造、行動の問題に集約されます。企業が必要とするマネジメントの大きさによって規定されます。

大規模が有利である時代はとうに終わりました。組織の目的に応じた機能を果たすために必要十分な大きさであるかどうかが問題です。

適正規模、すなわち、手にしている資源から最高の果実を生み出すことができる規模を目指し、規模に相応しいマネジメントを行わなければなりません。

規模の判断基準

ドラッカーは、企業を小、中、大の3つに区分し、それぞれの規模を判断する大まかな基準を示しています。

小企業の基準

書類を見たり、人に聞いたりしなくても、中心的な成果に責任を持つ者が誰か分かる状態です。中心的な人間は15人を超えない程度です。一人の人間が本当によく知ることができる数の限度が、15人だと言います。

小企業のマネジメントについて詳しく知りたい方は、次の記事を参照してください。

中企業の基準

3〜4人の人間を通して、本当に重要な人間全員を知ることができる状態です。中心的な人間は40〜50人になります。

中企業のマネジメントについて詳しく知りたい方は、次の記事を参照してください。

大企業の基準

組織図や記録を調べて初めて、決定的に重要な人間を知ることができる状態です。重要な人間を知るとは、次のすべてを知ることです。

  • 誰か
  • どこにいるか
  • 前に何をやっていたか
  • 現在何をしているか
  • これからどのような道をたどりそうか

これだけのことが分かるかどうかが判断の基準になります。

大企業のマネジメントについて詳しく知りたい方は、次の記事を参照してください。

結局のところ、特にトップマネジメントの構造や行動、思考と計画によってマネジメントすべき領域の大きさが規模の基準になるというのが、ドラッカーの見解です。

このような判断基準をもとに、自らの企業がどこに位置するのかを正しく知って、規模に相応しいマネジメントを行う必要があります。

なお、不適切な規模への対応方法について詳しく知りたい方は、次の記事を参照してください。

規模と優位性は無関係

大規模が有利であった時代

以前は、産業ごとに特有の技術分野があり、異種の技術や産業が重複することはないと考えられていました。

つまり、産業に必要な技術や知識は、すべてその産業内で生み出され、その産業内の製品やサービスになって販売されていました。

小売業でも、明確に区分された重複しない市場の存在を前提としており、それぞれの市場で購入される商品はすべて、価格帯、品質、ライフスタイルなどの訴求度は同一のカテゴリに属するものとして扱われていました。

もちろん、顧客自身は複数のニーズをもちますが、異なるニーズは異なる産業、異なる小売業態で満たされるのが通常でした。

企業は、川上、川下へ統合し、多角化して規模を大きくすることによって、競争力を高めることができました。小売業は、製品の配給者から、自ら製品を開発するバイヤーに変身していきました。

環境の変化

大企業が必要なくなったわけではありません。グローバル経済の出現によって、大企業でなければ効率的に対応できない市場が存在します。環境問題など、大企業がグローバルに社会的責任を果たすべき問題も生じています。

しかし、技術、産業、市場は互いに重複し、交差しています。産業の概念さえ曖昧になっています。市場もまた細分化し、重複し、交差しています。

ですから、大企業であるから効率的であるとは言えなくなりました。大企業であるがゆえに、競争力を維持する方策が必要になっています。

市場志向であることは当然必要です。市場で成果をあげられなくなったものを体系的に廃棄し、イノベーションを中心に据えなければなりません。

技術(製品分野)または市場において集中することも必要です。ドラッカーは、多角化する場合、買収や自社開発よりも戦略的提携の方が成功しやすいと言います。

現在、多様な製品、技術、市場をもつ場合は、分権化よりも分離の方が望ましいと言います。つまり、現在の本社は、自ら全体をマネジメントするよりも、マネジメントしていることを確認する投資家となる方が望ましいということです。代表例として、ウォーレン・バフェットのバークシャー・ハサウェイをあげています。