小企業のマネジメント

小企業は、一方では、家族的で風通しもよく、コミュニケーションが円滑であるという考え方があります。柔軟で迅速な対応が可能であるとも言われます。

他方、ワンマン社長によるパワハラで社員は酷使され、社員の士気やコミュニケーションの劣悪さの見本のように言われる例もあります。

極端に評価が分かれる理由は、小規模であるがゆえに、マネジメントせずとも社長の統制が全体に及びやすいことです。社長の資質、人柄、社員や事業に対する考え方が、企業全体の姿を決めています。

しかし、ドラッカーによれば、小企業だからこそ高度なマネジメントが必要です。

小企業の実態

小企業は家族的で風通しもよく、コミュニケーションが円滑であるという考え方があります。柔軟で迅速な対応が可能であるとも言われます。

小企業は、一般的に従業員数が少なく、組織も単純なことが多いので、マネジメントに力を入れていることはむしろ少ないと言えます。

最低の士気は、どのような反対も許さす、すべての意思決定を自分で行おうとするワンマン社長の小企業に見られます。

マネジメントの仕組みはなく、時々の社長の気分に左右されます。目的、目標、計画などはすべて社長の胸の内にあり、社員は何も知らされず、ひたすら命令に従うのみです。

部門や担当という考え方も実態はなきに等しく、場当たり的に仕事が割り振られるばかりです。

結局のところ、小企業だから家族的になるわけではなく、逆にワンマン経営になるわけでもありません。小規模であるがゆえに、マネジメントしなくても社長の統制が企業全体に及びやすいことが理由です。社長の資質、人柄、社員や事業に対する考え方が、企業全体の姿を決めています。

家族的な社長が経営すれば家族的な企業になり、支配的な社長が経営すればワンマン企業になるだけのことです。

高度なマネジメントの必要性

ドラッカーは、小企業だからこそ高度のマネジメントが必要であると指摘します。小企業だからこそ戦略が必要です。本能と勘によるマネジメントではなく、慎重な分析、思考、計画が必要です。

成り行きに任せていては、市場において永続し、成長し、際立った存在となることはできません。市場において限界的に小さな存在にされてしまっては、生き残ることもできません。

小企業は、ニッチを見つけなければなりません。問題中心ではなく機会中心であることが必要です。機会に強みを適応させる明確な戦略を構築しなければなりません。

「われわれの事業は何か、何であるべきか」を徹底的に問い、それに答えることが必要です。戦略に基づいて基幹活動を識別し、集中します。

トップマネジメントの役割の組織化

トップマネジメントである経営者は、現業の仕事を行っていることも多いでしょうが、トップマネジメントが行うべき役割をおろそかにしてはいけません。

日々の行動のための意思決定に追われがちな状態から、いかに分析、思考、計画のための時間を確保できるかが重要になります。

トップマネジメントが他の者に任せられないこととして、ドラッカーは次の2点をあげています。

  • 社内の重要な人間と接触すること
  • 社外の市場と顧客、技術と接触すること

小企業のマネジメントは、視界の狭さや外部との接触の少なさというハンデがありますので、特にこれらは重要です。知識や能力が時代遅れになり、事業の成否を左右するような社会的変化に気づかないことになるからです。

必要な情報

ドラッカーは、小企業において特に欠かすことができない重要な情報として、次の4つをあげています。

資金需要

小企業は財務基盤が脆弱ですから、それを超えた資金需要を発生させないようにしなければなりません。いつ、どのように追加資金が必要になるかを余裕を持って知る必要があります。

経営環境の変化

変化をいち早く察知する必要があります。事業が対象とするニッチ内の変化は、全て掌握しなければなりません。

社内の鍵となる重要な人材がどこにいるか。

重要な人材に成果と問題のどちらを担当させているかが重要です。当然、成果に関わる仕事を担当させなければなりません。

顧客の情報

特定の顧客に依存していないかを知ることが、特に重要です。

メーカーであれば、最低限、最終消費者への売上の数字をつかんでおくべきです。そうでないと、需要の見込みを誤ります。