公的機関とサービス機関のマネジメント

社会を構成する組織は企業だけではありません。企業以外の組織、すなわち公的機関やサービス機関(「公的・サービス機関」と呼びます。)こそ、現代社会の成長部門です。

ますます増加する公的・サービス機関ですが、未だ十分な成果をあげておらず、不満や不信の対象となっています。成果をあげるべく適切にマネジメントされていないからです。

しかし、例外的に成果をあげている公的・サービス機関も存在します。成果をあげている理由を知ることで、公的・サービス機関が成果をあげるための基本と原則を知ることができます。

企業と公的・サービス機関との違いを知ることが、その鍵となります。

公的・サービス機関の重要性

政府機関、学校、社会福祉法人、医療法人、労働組合、NPO、慈善団体、職業別団体、業界団体など、数多くの様々な公的機関が存在します。

企業内でも、様々なサービス部門(スタッフ部門)が存在し、多数の社員を抱えています。

これらの機関の特徴は、他の経済活動が生み出す余剰(間接費)によってコストが賄われている点にあります。

これらの機関が社会や企業の中で果たす役割は大きいので、社会や企業が適切に機能するために成果をあることが不可欠です。

教育、医療、知識、移動手段といった公的機関が担うべきサービスは、先進社会の経済的能力と生産性の増大によってもたらされた貴重な果実です。先進社会の価値観を体現し、形成するものでもあるからです。

企業内サービス部門は、単に規模と予算が大きくなったことが問題ではありません。知識労働が進展して、現業部門がそれだけサービス部門の成果に大きく依存するようになったからこそ、成果をあげることが不可欠です。

公的・サービス機関の不振

公的・サービス機関の成果は不十分です。ドラッカによれば、立派どころか、なるほどどと思わせるレベルにも達していません。

どこの国でも、行政機関における官僚主義への不満が高まっています。自分たちのためにマネジメントしているという不満が向けられています。

一方、企業においても、サービス部門への不満が存在します。彼らの仕事ぶりを測定し、成果を評価する方法がないため、サービス部門の膨張が問題になっています。サービス部門の越権も問題であり、スタッフ機能への目が厳しくなっています。

一方で、公的・サービス機関がマネジメント手法を学び、取り入れようとする動きはありますが、まだまだこれからです。他方、公的・サービス機関は本質的にマネジメントすることは不可能であるという意見も根強くあります。

公的・サービス機関の不信の原因について詳しく知りたい方は、次の記事を参照してください。

公的・サービス機関はマネジメントできる

公的・サービス機関の中にも例外的に成果をあげているものが存在します。公的・サービス機関が成果をあげるべくマネジメント可能であることの証明です。

マネジメントには3つの役割があります。そのうち、公的・サービス機関と企業との違いは、第一の役割である「特有の使命」に関わる部分、すなわち本業としての事業の部分です。それ以外に違いはありません。

その部分の違いが重要です。存在の目的、価値観、目標、成果のあげ方の違いだからです。この違いに着目したマネジメントが必要です。

公的・サービス機関の成功の条件について詳しく知りたい方は、次の記事を参照してください。

企業内サービス部門の問題と対策

企業におけるマネジメントは、当然のことながら事業の運営のために行っています。したがって、事業の目的を果たすための直接の機能であるライン部門に関わるマネジメントが主体です。

そのライン部門に専門的事項に関する助言や勧告を行うサービス機関がスタッフ部門です。ライン部門は組織の骨格であり、権限と責任を担っていますが、スタッフには公式の決定権や命令権はありません。にもかかわらず、スタッフの権限逸脱行為は日常的にみられ、組織内抗争(コンフリクト)の典型的な原因の一つになっています。

スタッフ部門に対しては、もちろん、公的・サービス機関としての問題と解決策が当てはまりますが、スタッフ部門特有の問題と解決策に関して特に詳しく知りたい方は、次の記事を参照してください。

非営利組織のマネジメント

ドラッカーは、NPO(非営利組織)を公的機関に分類していますが、近年、福祉国家の衰退と社会ニーズの多様化・複雑化に伴って、第三セクタとしてのNPOが脚光を浴びています。

特に、アメリカでのNPOの躍進は目覚ましく、際立った特長をもっています。さらに、国際的に大規模な活動を行うNPOあるいはNGOも目立ってきました。

日本では、社会問題の解決は政府や行政の仕事であるという考え方が未だ根強いと思いますが、問題はますます多様化・複雑化し、政府や行政の対応能力には限界があります。アメリカにおける非営利組織の成功は、今後の日本においても大いに参考とすべきです。

NPOのマネジメントについて詳しく知りたい方は、次の記事を参照してください。