御社の採用面接は本当にうまく行ってますか?

人材を採用するうえで最も多用されるのは面接です。人物本位の採用が尊ばれる一方で、採用のコストダウン圧力が強くなって、面接に対する信頼感や重要度、依存度がさらに増してきていると言われます。

採用面接とは、質問に対する口頭の反応から応募者の将来の職務遂行を判断する選考の仕組みです。口頭による受け答えという形式は明確ですが、それ以外の詳細が決まっているわけではありません。

その意味で、面接は自由度が高い選考方法です。経営者や人事担当者からすると、その自由度のゆえに万能な採用方法であるとみなしがちです。

応募者と相対しているため、その場の状況、応募者の受け答えや態度に応じて、臨機応変に質問することができると思っています。ですから、応募者のすべてを見抜き、理解できると考えます。

そこには、面接担当者としての自信(自分には人を見る目がある、人物を見抜く才能がある、といった思い)も作用しているでしょう。

しかし、多くの場合、それらは思い込みであり、錯覚にしか過ぎません。

面接に対する心理学者の見解

面接に対しては、実務家(経営者等)が高い信頼を寄せてきた一方で、心理学者は様々な問題を指摘しています。

自由度が高いから、あらゆる視点から臨機応変に人物を評価できると簡単に考えるのですが、実際のところ、何を評価しようとしているのかがはっきりしていないことの表れであることがほとんどです。

要するに、明確な評価基準がなく、評価方法や質問事項も明確に決めておらず、それをもって「自由」や「臨機応変」と表現しているだけなのです。面接官も、自分が今何を評価しており、相手の反応から何を読み取っているのかを分かっていないのです。

そうなると、結局、評価基準は「自分の好き嫌い」にならざるを得ません。

面接評価に伴うバイアス

心理学者は、面接評価には様々な誤りが伴うことを指摘しています。代表的なものは、次の5つのバイアスです。

意思決定の性急さ

研究によると、大半の面接では、開始4分以内に採否の印象が固まってしまうといいます。

そうなると、応募者があがっていたり、慣れていなかったりする時点で出てしまった言葉や態度から、決定的な評価が下されてしまうことになりかねません。

面接官からすると、そのような状態のときこそ、その人の本性が出ると思うかもしれませんが、それ自体がかなりバイアスのかかった見方であると言えます。

人は、あがっていたり、慣れていない状況では、本来の能力が発揮できないことの方がほとんどです。だからこそ、仕事においてもスポーツ競技においても、事前の準備や段取り、あるいは訓練が行われるのです。

あがっているときの対応能力も、一種の職務能力であると言えなくもありませんが、それがすべてであるかのうような評価をするとしたら、その会社が重視する職務能力というのは、そもそも体系化されていない能力であり、教育や訓練の対象ともなり得ない、きわめて場当たり的な能力であると言わざるを得ません。

確証バイアス

出身校や学業成績や適性検査などから、あらかじめ一定の評価を持ち、それが先入観や思い込みになって質問を行い、誤った印象を確証してしまうことです。

例えば、無名大学出身であれば、あまり賢くないだろうという印象を事前に持ってしまい、普段よりも厳しい質問をして、「やっぱりレベルが低い」という印象を再確認してしまうことがあります。

不都合な情報

企業としては、優秀な人材を誤って不採用にするよりも、さえない人材を誤って採用してしまうことの方を気にするようです。

ですから、採用選考では、不都合な情報を重視する「減点評価」になりがちです。相手のあら捜しをし、落とすための口実を見つけるような質問をします。場合によっては、「これで、ダメな奴が一発で分かる」というようなノックアウト型の要件や質問を決めることもあります。

そうなると、「一芸に秀でる」ということを評価する発想ができなくなります。優れた強みには、その裏腹に際立った弱みが伴うという発想もできません。

厳格化

熟練した面接官は、過去の経験から積み上げた応募者の理想像を持っているため、経験のない面接官よりも評価が厳しくなることが分かっています。

このような面接官のメガネにかなった応募者は、確かに優秀であることが多いと思いますが、圧倒的多数の応募者が低い評価を受けてしまうことになりかねません。

非言語的行動

面接では、口頭での受け答えを介して人材の評価が行われるので、話の内容や流暢なコミュニケーションなどの言語的要素が評価を大きく左右するはずです。

しかし、実際には、姿勢、身振り、視線、表情、服装、容姿、化粧などの非言語的行動も、評価に大きな影響を与えることが知られています。ここに、リクルートスーツが推奨されたり、リクルート整形が黙認されたりする理由があります。

面接官は、できるだけ総合的に判断しようとして、言語的要素だけでなく非言語的行動にも配慮するようにしていると思われますが、無意識のうちに非言語的行動に影響を受け過ぎて、誤った評価につながることがあります。

面接評価を適切に行うために

採用選考においては、職場に適応し、高い生産性を示す優秀な人材を選び出すことが目的ですから、その目的を果たすために、事前に準備すべきことは準備しなければなりません。

いくら面接の自由度が高いといっても、自由度が高いから万能であるわけではありません。自由度が高いから、裁量の幅が大きく、ブレ幅も大きくなります。評価基準や方針が不明確な状態で自由度が高いのは、単なる放縦、放逸、放浪になるだけです。

自由度が高い面接であるからこそ、評価基準を明確にし、聞くべき質問をリスト化し、面接官の意識合わせをしっかりしておかなければなりません。そうであればこそ、自由度の高さが生かされます。臨機応変は、目的に向かって常に軌道修正できることを意味します。

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