注意:「経験、学歴、資格不問」の求人はブラック企業の疑いあり!?

このような「不問」求人を行っている企業は、注意してください。

このようなフレーズは、新卒正社員の使い捨てをするブラック企業の求人情報でよく見られたものです。

内定を取れなかった求職者をターゲットに、大量募集をするためによく使われ、

  • 人物重視
  • やる気があれば
  • 若手が活躍

といったフレーズがさらに付いている場合もあったようです。

リーマンショックの影響で新規学卒者の就職が厳しい頃でした。何社受けても内定をもらえずに落胆していた求職者にとっては、救いの手が差し出されたように思えたことでしょう。

その実、まともな選考もなく大量に新卒者を募集・採用し、使い潰すということが起こったわけです(参考:「ブラック企業とは何か」)。

ところが、このようなフレーズは今でもよく使われています。経営者の親切心で使っている場合もあります。

「経験、学歴、資格などを問わない」ということは、門戸を広く開き、求職者に大きなチャンスを与えているのだ、ということなのでしょう。

でも、大きな親切が大きな不親切につながり、ブラック企業を疑われる余地を与えるとしたら、それでもやり続けますか?

「経験不問、学歴不問、資格不問」って本当ですか?

筆者自身も失業者であった頃があります。

このフレーズは何度も見ましたし、有難いとも感じましたから、応募もしました。

応募の際、必ず「履歴書と職務経歴書を出すように」と言われました。

???

・・・だって、「経験、学歴、資格は不問」なんでしょ? 何でそんな書類が必要なの?

と思うものの、仕方がないので提出します。

何日かすると、選考結果通知が届き、「書類選考の結果、今回はご期待に沿えず・・・」というお決まりのフレーズが印刷されています。

???書類選考???

「経験、学歴、資格は不問」なのに、書類で何を選考したのでしょうか? 人物本位ではないのでしょうか?

書類で人物が判定できるとは、まるで霊能者のようです。

要するに、「不問」で募集したところ、経験、学歴、資格などでよさそうな人が何人か来たから、その人たちを選んだということでしょう。

このような経験は、私だけではないはずです。

「不問」は、結果的に本心ではなかったということなのです。

「不問」はあくまで「応募の条件」であって、「採用の条件ではない」という理屈なのかもしれません。

会社にとってはとても都合のよい理屈です。広く応募者を集めて、人物、経験、学歴、資格などあらゆる要素で選考するということなのでしょう。

でも、求職者にとっては、たまったものではありません。そうならそうと書くべきなのに、それを隠しているということになります。

求職者は、書類を作ったり、郵便料金を払ったりしています。面談があるなら、交通費も必要です。すべての時間やお金が無駄になります。

「不問」はとっても不親切

会社には必ず目的があり、事業内容もはっきりしているはずです。

ですから、人を募集するなら、何の仕事をしてもらうのかもはっきりしているはずです。余程資金的な余裕がない限り、何をしてもらうのかがはっきりしないまま人を雇う企業はないはずですから。

仕事がはっきりしているのであれば、どのような能力を求めるのかも、当然、はっきりしているはずです。

必要な能力を明確にしたうえで、「経験、学歴、資格は不問。一から丁寧に教育します。」という説明であればまだ良いですが、そんな説明もないなら、とても不親切と言わざるを得ません。

求職者の最大の不安は「自分に務まる仕事かどうか」です。

それを知る重要な情報が、「経験、学歴、資格」など前提となる能力なのです。それを「不問」と言われたら、何をもって不安を取り除いたらよいのでしょうか。

「職務内容を記載しているから大丈夫」と仰るかもしれませんが、それほど丁寧に説明している求人票はほとんどありません。求職者に分かるように書かなければ意味がありません。

ましてや、「不問」であれば素人を想定しているわけですから、なおさら詳しく、分かりやすく説明しなければならないはずです。でも、そうなっていない求人票は多いです。

「企業には求職者を選ぶ権利があっても、求職者には企業を選ぶ権利はない」と言われているかのようです。

親切心のはずが、求職者から見たらとても不親切であるということなのです。

本当の「不問」求人とは?

すべての「不問」求人に同じ問題があるわけではありません。本当に「不問」の求人はあります。

とある企業の例です。特定の分野で世界一の技術を持っている小規模製造業です。

必要書類はありません。それでも、応募者は履歴書を持ってくるそうです。

社長が対応しますが、会ったら即採用です。履歴書は、そのままシュレッダー行きです。

選考基準は明確です。それは、

早い者順

です。まさに本物の「不問」求人です。

なぜこのようなことができるのでしょうか?

社長は、自身の経営経験から、経験、学歴、資格は関係ないということを実感してきたからです。それに、短い採用面接でその人の本質など分からないということも実感してきたからです。

「この人は良い」と思って採用した人が全然役に立たなかったり、「この人は無理だろう」と思っていた人が会社にとってなくてはならない人になったり、ということを何度も経験してきたからです。

だから、強い信念をもって本当の不問求人ができるわけです。

当然ですが、入社した後もずっと能力がないままでよいわけではありません。徹底した教育訓練がなされます。その過程で、ついて行けない人は辞めていくことになります。

このような対応は、どこの企業でもできるものではありません。徹底して教育訓練する姿勢と、採用責任を持つ社長の目が、すべての社員にしっかりと行き届くことが前提になるでしょう。

それができない企業で、安易にやるべきことではありません。

「不問」求人でブラック企業と疑われる理由

なぜ「不問」求人でブラック企業と疑われてしまうのでしょうか。

一つは、上でも申し上げたとおり、不親切だからです。

求職者の立場に配慮できないと疑われてしまうので、就職できたとしても、「ちゃんと教育してもらえないかもしれない」と不安を抱きます。

もう一つは、「メチャメチャきつい仕事を強いられるかもしれない」と思われる可能性があることです。

これが、まさに新卒正社員を使い潰した会社の実態だったからです。

「経験も学歴も資格もいらん。とにかく死ぬ気でやれ!」

といったところでしょう。

求職者にも選ぶ権利がある

先ほども述べたことですが、「求職者にも選ぶ権利がある」ことを認識していない経営者はとても多いと感じます。

これほど人材不足になっているのに。

企業は広告などの販売促進に力を入れます。お金をかけて、商品やサービスの価値をアピールします。

なぜでしょうか?

お客には選ぶ権利があるからです。多くの競合企業の中から、自社を選んでもらうためには、それだけのアピールが必要だからです。

ところが、求人票はどうでしょうか? 多くの求人票は、未だに不親切です。情報が少なすぎます。

ホームページの募集情報もそうです。簡単な仕事の説明はあっても、大半は無味乾燥な労働条件(給与、勤務時間、保険)の情報です。

「最近の社員は給料が安いと言って直ぐ辞める」という社長がいますが、そういう原因を作っているのは、その会社の求人情報です。

会社の理念や理想が分からない、社長の人柄も分からない、仕事の詳しい内容もよく分からい、分かるのは労働条件ばかり・・・

という求人情報で採用した社員ですから。

仕事の内容で選んだ社員は、実態が思ったとおりであれば、仕事が変わらない限り、簡単には辞めません。

会社の理念や理想に共感して入社した社員は、それが真実である限り、そう簡単には辞めません。

条件で選んだ社員は、条件で辞めていきます。当然のことではないでしょうか。

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