会議が退屈で役に立たない2つの理由

会議は、一方では、きわめて重要であり、あらゆる組織の中核となる活動です。他方、会議は大抵、苦痛を伴うものです。イライラするほど長たらしく、無駄に思えることも少なくありません。

それでも会議がなくなることはありません。やはり必要なものだからです。問題は、リーダーと参加者たちの考え方、取り組み方にあります。

まず、会議の何が問題なのでしょうか。アメリカのコンサルタントであるパトリック・レンシオーニによれば、大きく2つの問題があるといいます。

第一に、会議そのものが退屈でつまらないということです。実際にやるべきことが他にあることを考えると、その苦痛は、ますます大きいものになるのは当然のことでしょう。

第二に、会議が役に立っていないということです。役に立つなら、多少つまらないことは我慢できるでしょうが、非常に多忙の中、それ相応の利益をもたらさない活動にエネルギーと時間を注ぎ込まなければならないのは、ことのほか苛立たしいと感じられます。

更に、それらの問題の原因として、レンシオーニは、それぞれ次の点をあげます。

第一に、会議が退屈なのは、ドラマ(対立)が欠けているせいです。ドラマ性は人を引きつけておくのに絶対不可欠なものであり、ほとんどの会議はドラマの可能性に満ちているといいます。

ところが、会議のリーダーたちの多くは、むしろ緊張関係を回避し、対立しないまま会議を定時に終えることにとらわれているようです。

会議をもっと面白くするには、リーダーは適切で建設的な意見の対立を誘い、明るみに出すための、もっともな理由を探さなければなりません。対立を引き出すことで、メンバーの関心を引きつけておけます。すると、それは更なる激論へ、そして結局はよりよい決定へとつながります。

第二に、会議が役に立たないのは、状況に応じた構造が欠けているせいです。多くの組織が、たった一つのタイプの定例会議しか行いません。2〜3時間、寄り合って、戦略から戦術まで、あるいは、つまらない管理上の細々した問題から企業文化に至るまで、あらゆる事について、行き当たりばったりに焦点を合わせて討議しています。

どんな議題が適切かが曖昧なので、いろいろ討議がなされても、それが何のためなのかがはっきりしませんから、メンバーは、討議すべきなのか、票決すべきなのか、ブレーンストーミングするのか、口を挟むべきなのか、ただ聴いていればいいのかが、よく把握できていません。結局、ほとんど何も解決されずに終わります。

会議をより効果的にするには、様々な目的、スタイル、開催日程を明確に区別した、多様なタイプの会議を聞く必要があります。

会議にドラマを取り入れる

会議は、本質的に退屈的なものではありません。会議とはそもそも、人が集まり、互いに活発に影響し合いながら、自分たちの生活に結びついたテーマを討論する場です。

それではなぜ、往々にして、会議は退屈になるのかというと、人間の活動を面白くさせるために必要な一つの要素、つまり「対立」を排除しようとするからです。

ご存知のとおり、あらゆる素晴らしい映画の中心には対立があります。対立はドラマのエッセンスであり、対立ゆえに、観客はストーリーに引き込まれ、夢中になります。

会議と映画とは全く違うと考えるかもしれませんが、レンシオーニによると、会議は映画より面白いはずです。会議には、映画よりも情熱を傾け、参加できる可能性が元々備わっているからです。

第一に、映画は受動的ですが、会議は双方向です。会議中には、誰かの発言に横槍を入れることができます。

第二に、映画は私達の日常生活には関わりがありませんが、会議は私達の職業生活に直結しています。

なぜ、受動的で生活に無関係な映画を、私達は楽しむことができるのでしょうか。それは、シナリオ・ライターも映画監督も、ストーリーに対立を織り込まなければ誰もその映画を見たがらないと知っているからです。

最初の10分間に劇的な出来事を入れて観客の心をつかまなければならないし、そうすれば残りの2時間、観客の興味をつないでおけることも知っているからです。

つかみ

会議にドラマを織り込む秘訣は、冒頭から仕掛けをすることです。リーダーが、まずい決定による危険性を説明するとか、不気味に迫るライバルの脅威を強調しなければなりません。

また、組織の大きな使命、およびそれが顧客、従業員、ひいては社会全体に及ぼす影響に対する責任が私達にはあるのだと訴えかけることによっても、それは達せられます。

会議が議題にしようとしていることについて、なぜ気にかけるべきなのか、メンバーはその理由を知りたいはずです。それは、会議のリーダーがメンバーに与えるはずのものです。

ところが、会議のリーダーの多くは、わざわざドラマを排除し、あるいは最小限に抑えて、ドラマによって生じる健全な対立を回避しようとするため、みんなの関心を失わせているのです。

まるで、会社が抱えている問題を不明確にしておくことが、会社にとってよいことだと言わんばかりです。

会議での興味を掻き立てるために、ドラマを引き出し、出席者同士が対決するよう挑発することがむしろ必要なことなのです。

対立を掘り起こす

知的な人々が集まって、重要な問題について話し合う場合、意見の食い違いが生じるのは当然であり、生産的でもあります。それらの問題を解決することこそが、会議を実り多く、魅力的で、楽しい場にします。

討論に値する問題であり、当然、意見の不一致があるはずの問題を避けようとするならば、会議は退屈なものになるのは当然です。それどころか、問題が未解決のまま終わるのは確実です。

それらが欲求不満の原因になり、後々、無益な個人的対立や権力闘争の形をとって現れるのです。会議が時間を浪費しているだけでなく、問題を引き起こしさえしているということなのです。

会議のリーダーは、意見が割れている重要な問題を探し出し、明らかにすることを優先させなければなりません。たとえ、メンバーがそれをめぐる論戦に尻込みしたとしても、リーダーは討論させるべきです。

常に対立を認める

リーダーが、もっと対立するように明言することが肝心ですが、それでも実際に対立が起こると、気まずい空気が漂い始めるものです。

そのようなときこそ、リーダーは、気まずさを最小限に食い止め、当事者の間に割って入り、その対立が正しいことであり、求めていることだと再認識させて、対立をできるだけ続けるように仕向ける必要があります。

目的に応じて異なる会議を設定する

会議における構造上の唯一最大の問題は、討議すべきあらゆるタイプの問題を一つの会議に放り込みがちなことです。このような会議は、誰にとっても無駄で不満の残る活動になります。

異なる目的のためには、異なるタイプの会議があってしかるべきです。そうすれば、そのそれぞれが適切で重要な役割を果たすことになります。

会議が退屈で役に立たないからという理由で、できる限り少ない会議で多くの議題をこなそうとするのでしょうが、それがむしろ逆効果になっているのです。

第一の会議:毎日の確認会議

毎朝チームメンバーが集まって、およそ5分間、立ったまま、その日のメンバーの活動を報告するものです。目的は、メンバーが優先事項をどのように行動に移すかについて、混乱が生じないようにすることです。

これにより、その日にやるべきことの見落としがなく、かつ、お互いの領域を侵害しないよう、手っ取り早い話し合いの場が用意されます。

スケジュール調整についてのメールのやり取りの繰り返しを避けることもできます。

この会議を続けていくための課題は、メンバーの日課の一部になるまで辛抱強く続けさせることです。そのためには、会議の時と場所を固定し、たとえ参加者が少なくてもあえて行うことが肝心です。

5分という時間を守ることも重要です。会議の議題に相応しくない(別の会議で取り上げるべき)議題に取り組もうとして時間が長引くようであってはいけません。そうならないように、会議中は立ったままで、長くても10分後には解散する方針を守るべきです。

第二の会議:毎週の戦術会議

当面の懸案事項である戦術的な問題に焦点を絞った定例会議です。毎週であろうと隔週であろうと構いません。重要なのは、常に全員出席のもと、規律正しく、一貫したパターンで行われることです。

開催の頻度によって45分から90分の長さが妥当です。

会議の冒頭で、出席者全員が、順番に、その週の自分たちの優先事項を2〜3点述べます。時間は一人一分とし、その間に手早く説明し、1〜2点の質問に答えて、曖昧な点を残さないようにします。メンバー数が多くても、全体を10分程度でやり終えるようにします。

こうした報告の場があることで、組織内で現実に行われている活動を出席者全員が実感できるので、余剰人員や欠員の可能性、緊急に対処しなければならない諸問題を見極めやすくなります。

次に、数値指標(収益、経費、顧客満足度、在庫、等々)など、決定的に重要な情報についての報告を行います。何を報告すべきかは、個々の業種や組織の状況によって異なります。

大事なことは、成功を左右するような指標によって進捗状況を点検する習慣をつけることです。所要時間は5分程度でよく、むしろ基本的な論点について長々と議論するのは避けなければなりません。

以上の報告が終わったら、その日の議題について話し合って決定します。議題を会議前に用意しないというのが、この会議の重要なポイントです。

議題は、メンバーが現に取り組んでいる具体的な課題や、会社の短期的な目標達成が危うくなるような戦術的な問題を取り上げます。

最優先で目指すべきことは、障害物を特定し、取り除くことによって、問題を解決することです。全員が同じ目標を共有する必要があります。

この会議では、長期的な戦略上の問題についての討議は行いません。主要な問題点をきちんと討論するだけの時間がないからです。戦術と戦略では時間的なスパンも重要性も異なるので、一つの会議で議論できることではありません。

議論の過程で戦略的問題が持ち上がったときは、リーダーがそれを討議事項から外し、別の会議(毎月の戦略会議)で討議されるべき議題の候補リストに入れることを明確にします。

第三の会議:毎月の戦略会議

根本的にビジネスに影響するような重大な問題について、役員が真剣に取り組み、分析、討議し、決定する場です。

最終期限や戦術的な懸案事項などに気を取られずに、一回の会議で特定の1〜2点の議題についてじっくり討議するため、一つの議題につき、少なくとも2時間を割り振るようにします。

開催を月に一度にするか、隔週にするかは、それほど重要ではありません。重要なのは、戦略会議が、毎週の戦術会議で浮上する重大な戦略的問題のためのタイムリーな「駐車場」の役割を果たせるよう、定期的に開かれることです。そうすることによって、メンバーは安心して重大な問題を保留しておけます。

戦略的な、あるいはきわめて重大な問題が、次の定例の戦略会議まで待てないときは、その問題に取り組むための臨時会議を開きます。

戦略会議で重要なことは、十分な時間を確保すること、議題を絞り込むこと、事前の調査や準備を怠らないことです。あらかじめ、しかもできるだけ早く議題をメンバーに知らせ、準備をして会議に臨むよう責任を持たせます。

第四の会議:四半期ごとのオフサイト・ミーティング

オフサイト・ミーティングが効果的なのは、日々の関心の的である問題や業務から一歩離れる機会を与えてくれるところです。これにより、より全体的に、長期的に事業を見直すことができます。

議論すべきテーマには、包括的な戦略上の見直し、チームの見直し、人材の見直し、ライバル関係と業界の見直しなどがあります。

チームの見直しは、チームとしての行動を定期的に評定し、組織に役立たないような傾向や体質を見分けることです。

人材の見直しは、組織内の主要な従業員について、部署を超えて話し合うことです。誰が花形社員で、誰が成績不振の社員かについての意見を交換することによって大局的な見方ができ、協力して対応できるようになります。

このミーティングでも、議題を絞り込んで、じっくりと考え、討議することが重要です。

参加者の人選も重要です。部外者を加えると、チームの力学を変化させ、結束を損ねることがあります。

ただし、リーダーを含めたメンバー全員が討議に集中できるよう、世話役として外部の者を参加させることが効果的な場合もあります。世話役は、チームから信頼され、その組織のビジネスを理解し、チームの目的を達成できるよう熱意を持って尽力してくれる人物でなければなりません。

会議の効果

会議は、うまく活用されれば、時間節約の手段になります。よい会議は、決議を迅速にし、同じ問題を繰り返し取り上げる必要をなくして、業務改善のチャンスをもたらすからです。

組織内で、いたずらに繰り返される動作や連絡作業(スニーカー・タイム)を減らす効果もあります。

「スニーカー・タイム」とは、著者の造語です。役員の多くはメールを送ったり、留守番電話にメッセージを残したり、元々会議で明確にされるべきだった問題点をはっきりさせようと、廊下をうろついたりして何時間も過ごしていることを指しています。

このような時間は日常の活動の中に埋もれているため、意識されることがありません。しかし、役員のスニーカー・タイムは、その直属の部下をも巻き込み、全体としての時間の浪費の可能性は格段に大きくなっています。

会議という無駄な時間を早く切り上げ、本来の仕事に戻りたいと考えていながら、その本来の仕事の多くをスニーカー・タイムが占めているとするならば、会議を効果的にすることによって、それを削減することができるはずです。

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