提案制度に対する見解 − 「スキャンロン・プラン」とは何か?⑫

提案制度とは、労働者が会社に業務の改善などについてアイデアを提案する制度です。

自らの仕事を改善するということに関しては、日常的に、自らの権限の範囲内で実施したり、上司に相談したりすることによって実行できる場合もあります。

しかし、それは会社によってまちまちであり、他の人の仕事や会社外に影響する場合は、一労働者の裁量を超えたり、直属の上司の権限を超える場合も多いため、容易に変更することはできません。

このような場合に、制度として提案できる仕組みを設け、一般的には、提案を検討する公式の委員会を設けている会社も多いでしょう。

提案に対しては、何らかの報賞を与えることによって、積極的に提案するよう奨励している会社もあります。

ところが、形式的になっていたり、マンネリ化したりして、制度が形骸化してしまっている会社も少なくないようです。

提案制度の問題

提案制度を持っている企業は少なくないでしょうが、機能してない場合がほとんどです。提案のインセンティブがなかったり、たとえあったとしてもそれを阻むような環境があるからです。

提案することによって仲間や管理者の恨みを買ったり、嫉妬されたりすることはよくあることです。

特に管理者は、自分の管理の仕方が批判されていると解釈し、提案を潰そうとしたり、提案を無効にするような変更をしたりすることがあります。

アメリカでは、部下が得た報賞の一部を取り上げる管理者さえ多かったといいます。

このようなことが起こるのを見れば、労働者は、上層部が言葉だけで実行する意思がないことを直ちに察知します。

自分には改善提案があるのに、上層部はそれに気づかない、あるいはその価値を認めないということであれば、上層部に対する侮蔑の念さえ起こすことがあります。

そのような会社には、事実上、労働者の参加の機会がないのと同じです。会社が抱えている問題を全く知ることなく、会社の様々な取り組みの必要性も分かりません。

ある会社では、提案制度が駆け引きの道具として使われていたといいます。社内の派閥が提案審査の委員会を左右し、内容に応じた正しい判定が下されるのを妨げていました。

提案制度は、単独で導入しても、労働者に対する会社の根本的な認識を変えない限り、効果的に運用されることはありません。

経営者の確固とした哲学や理念と同時に、提案を積極的に評価し、受け容れる公式の仕組みが必要です。基本的に、チームワークができていない会社で提案制度が機能することはありません。

提案制度を中核として、労働組合を巻き込んだ積極的な経営参加と全社的な報賞制度を導入し、労働者の高次の欲求を充足させ、動機づけ、会社の生産性向上を実現する「スキャンロン・プラン」の導入が有効です。

提案制度のメリット

労働者は誰よりもよく自分の仕事を知っているので、自分の仕事についてアイデアを持っているのは当然のことです。

ですから、労働者の提案を受けないこと自体、見す見す生産性向上の機会を逃していると言わざるを得ません。

単純な提案も、経営側から出されると、労働者の反発を受けることがあります。「変化への抵抗」という場合も、労働者の本性ではなく、変化の導入方法に関する反発であることがほとんどです。

経営側が提案を持っている場合に、そのまま命令として実行しようとするのではなく、労働者側に提案と批判を求めることで、より受け容れやすい提案になります。

労働者は変化を押し付けられるのではなく、変化の創出過程に自ら参画することになるため、抵抗は少なくなります。

特殊な問題が発生したときも、その情報を労働者に正しく伝え、提案を求めれば、よいアイデアが出てくるものです。

スキャンロン・プランの導入によって、労働者は経営に関する理解が深まるので、経営者や管理者は以前よりも遥かに注目の的になります。

再三の誤りはたちまち全体に知れ渡りますので、経営者や管理者は一層油断なく気を配るようになります。

経営者は、労働者側から現場の詳しい実態を知ることができるので、会社が実際にどう運営されているかという点について、以前より遥かに信頼のおける情報を入手できるようになります。