チームワークの良否 − 「X理論」と「Y理論」⑳

マグレガーは、組織におけるチームワークの重要性を強調します。

組織の個人の集まりであると理解されることが多いですが、マグレガーは、集団もまた組織の構成単位であることを指摘しています。

その集団とは、個人が互いに面識的なコミュニケーションを図ることによって成り立つ最小単位の集まりで、人間関係論における「第一次集団」に相当すると考えられます。

集団は個人の総体ではなく、それ独自の振る舞いをします。したがって、組織においては、個人にのみ焦点を当てるのではなく、集団のチームワークを適切なものにすることを重視しなければなりません。

マグレガーは、うまく行っている集団とうまく行っていない集団の特徴を列挙しています。

優れたチームワーク

マグレガーは、うまくいっている集団の特徴を次のようにあげています。

  1. 肩がこらず、楽しく、ゆったりとした雰囲気を持っている。従業員が生き生きし、巻き込まれ、関心を持っていて、退屈している兆候はない。
  2. 議論は大いに闘わされ、すべての従業員が参加する。議論では仕事に関連したことしか取り上げず、脇道に逸れたときは、誰かが素早く元に戻す。
  3. 集団の課業または目標をメンバーがよく理解し、納得している。目標を決めるとき、メンバーは自由に議論するが、決まったらこれに献身する。
  4. メンバーはお互いに相手の言うことを傾聴する。酷いことを言っても、創造的な考えを述べている限りは、馬鹿にされはしないかと心配することはない。
  5. 意見の不一致はあるが、軽々しく集団行動によって抑圧したり、蹂躙したりすることはない。その理由を慎重に検討し、異議を唱えた者を威圧しないで理由を解明しようとする。少数の暴力もない。意見の違いは、皆に聞いてもらって解決しようと思っている。意見の不一致があってまとまらないときもあるが、それで集団の努力を妨げるようなことはさせない。処置が必要な場合は、後で再検討することを皆に周知させ、納得したうえで処置する。
  6. 決定は満場一致が原則である。全員が基本的に同意見であり、自発的に協力しようとする。単純な多数決によって措置を決めることはしない。
  7. 批判は率直に、気持ちよく行われるが、建設的であり、集団が直面している障害が仕事の邪魔をしないようにするために行われる。個人攻撃したり、裏に回って足を引っ張ることはない。
  8. 感じていることやアイデアを遠慮せずに表明する。誰もが、他人がどう思っているかをよく知っている。
  9. 措置をするときは、はっきり分担が決まり、それを納得する。
  10. 集団の議長は、集団を支配しないし、集団は不当に服従することはない。状況によってリーダーシップを取る人間がその都度代わる。異なるメンバーが、知識や経験によって、いろいろな場合に集団の知恵袋となる。権力闘争はない。常に問題はどうやって仕事を片付けるかである。
  11. 集団は立ち止まって、どのくらいうまく行っているか、何がその運営の邪魔になっているかを検討する。公開討議を行い、解決策を見つける。

問題のあるチームワーク

逆に、目標が達成されにくい集団の特性については、次のように述べています。

  1. 雰囲気は無関心および退屈または緊張を反映している。互いに耳打ちしたり、他の話をしており、明らかに溶け込んでいない人がいる。敵意と反感が底流し、ぎこちなく、不自然なよそよそしさがある。明らかに仕事に体当りしていないし、没入してもいない。
  2. 少数の人間が議論を牛耳ろうとする。ほとんど誰も集団がはっきりと軌道に乗るようにしようとしない。
  3. 集団の仕事が何であるか分かりにくい。人それぞれが秘密の個人的目標を持っており、集団の中で達成しようと思っているが、集団の仕事とも抵触していることが多い。
  4. お互いに相手の言うことに耳を傾けようとしない。議論は飛躍してまとまりなく、一つの筋道に沿って進もうとしない。明らかに他人に対する印象をよくするために議論しているようである。リーダーや他のメンバーがいつも自分の成績を評価していると思っているので、発言について極度に慎重になる人もいる。
  5. 意見の不一致をうまく処理できない。喧嘩になることを心配して、リーダーが最初から不一致を押さえてしまう。意見の不一致から表立った争いになると、二派に分かれ、結局一つの分派が他の分派を支配する。個人または少数派が厚かましく、少数の暴力がある。多数派が穏便に済まそうとして、または仕事を続けるため、少数派の要求に応じる。厚かましいメンバーの考えのみが取り上げられ、おとなしい従業員は沈黙を守るか、耳を傾けさせようと無駄な努力を試みたあげく諦める。
  6. 本当の問題を検討したり、または解決していないのに、早まった措置をとる。多数決を取りさえすれば措置が取れると考えており、少数派は追随すると思われている。しかし、大抵の場合、少数派はその決定に憤慨しており、決定に身を入れない。
  7. 措置をするとはっきり決めない傾向がある。誰が何をしようとしているかを本当に知っている人はいない。職務を割り当てられても、本当にそれをやるかどうか大いに疑問である場合が多い。
  8. リーダーシップは明らかに委員会の議長が握っている。
  9. 批判には、多くの場合、個人的な敵意が含まれており、メンバーはこれを不快に感じるが、対抗することができない。アイデアは批判でぶち壊しになりがちなので、アイデアを出さなくなる。
  10. 個人的な感情を公に発散させないで、内に秘める。個人的感情は討論に相応しくないものであり、会合に持ち出せば、すぐにも爆発してしまうというのが、集団の全般的空気である。
  11. 集団はそれ自身の維持について議論を避けようとする。会合が終わってから、何が間違っており、その理由は何かについて、多くの議論が交わされることが多い。

チームワークの質を決める要因

集団がうまく動かない最も重要な理由の一つは、相剋や敵意を恐れることです。お互いに協力し合うよりは、妨害するような行動をします。敵意、裏議題など、集団活動に有害な個人的要素はよくあります。

集団活動がうまく行かないもう一つの重要な要素は、「集団がうまくいくかどうかは専らリーダーに左右される」という誤った考えです。

優れたチームを作るためには、リーダーだけでなくすべてのメンバーが、優れた感受性と理解力と技法を持たなければなりません。

メンバーが手慣れた、しかも思いやりのある行動をすることが、グループをうまく運営する本当の鍵であることが、研究の結果、明らかになっています。

本当に有能で手慣れた集団では、指名されたリーダーがいなくても、メンバーが事実上うまく運営することができます。

最後に、相剋と敵意を恐れる以外に、集団それ自体の維持に注意しなければならないことを理解していないことが問題です。

能率よく運営しようと思えば、普段の手入れが必要です。集団は、会合の外ではなく中で、正面から集団維持の問題について議論しなければなりません。

集団活動を妨げる問題のすべての背後には、X理論に根ざした考え方があります。それは、集団がうまく機能すると、命令統制による経営ができなくなるという考え方です。

部下に対して個人的な権力を行使しようとすれば、分割統治こそ正しいと考えるのです。

しかし、もし現代産業における複雑な相互依存関係の存在を認識し、個人的な権力よりも、自分が使う人材を会社の目標達成のために動かす条件を作り出すことのほうに関心を払うならば、協力な集団を作り上げようとすべきです。

会社の目標に打ち込み、その達成のためにうまく協力するには、うまく行っている集団でないと生まれない独特の相互作用がなければなりません。

会社に関係のある事柄について議論したり決定する場合、集団討議しかありません。