経営環境による統制 − 「X理論」と「Y理論」⑩

X理論では、命令による統制、すなわち、部下にやるべき仕事を命令し、そのとおりにやるように監督し、結果を判定し、賞罰をするというやり方が典型的です。

Y理論では、会社の目標を納得させ、その達成のために自ら工夫し、自己統制ができるような環境を作ろうとします。

部下を公平に取り扱うこと

労働者の心理的環境としてもっとも直接的で重要なものは、上司との関係です。この関係は相互依存、すなわち持ちつ持たれつの関係ですので、お互いにプラスになる関係を作ることが不可欠です。

上司と部下の関係において、部下の高い生産性と志気の双方に影響を与える上司の行動および態度には、いろいろな型があることが分かっています。

これら型とその影響度は、部下が公平に扱われたいという期待と関係があります。

上司が部下に個人的関心を示し、部下の福祉に真の関心を寄せ、上司が会社の上に向かって意見が言えることが、部下が上司から公平に扱われているという信頼につながります。

もし上司が、給与の増額・昇進・作業条件について決定に関して実質的な力を持たないなら、部下は上司の態度にかかわらず信頼を置くことはありません。

部下が、上司の独断的行動、えこひいき、特別待遇など、公平な扱いが損なわれる恐れを感じると、防衛策としての保障(公平な扱いが損なわれないことの担保)を求めるようになります。

このような恐れがなく、上司が部下に対して誠実であることを信じることができれば、部下は上司の公平な扱いを信頼するようになります。

部下を信頼すること

上司に対する部下の態度は、結局のところ、部下に対する上司の態度を反映しています。部下を信頼しない上司のことを、部下は信頼することができません。

普通の人間であれば誰しもかなりの知識と能力を持っていると信じるべきです。ほとんどの人間は成長し、発展し、責任を遂行し、創造的な仕事を完成していく真の能力を持っています。

上司は部下を、自分の責任を遂行するに当たって助けてくれる本当の資産であると考え、この資産を活用できるような環境を作ることに関心を持つべきです。

このような環境において、上司は効果的な権限委譲を行い、上司の指導のもとに、部下の能力を開発する機会を与えます。

さらに、上司は部下を、自分の所属する部門に起こる問題を解決することを助けてくれる人材として用います。参加させるのは、部下を信頼している証拠です。

結局のところ、上司と部下の間で生まれる環境は、方針や手続きによって決まるのではなく、上司の人柄によって決まるのでもなく、上司が抱いている経営の基本観念、従業員一般に対する考え方から出てくるものです。

上司の考え方は、日頃の微妙でかつしばしば無意識に漏れる言動に現れるので、方針や手続きが同じであっても、違った環境が生まれるのです。

形作られた経営環境にしたがって、方針や手続きが実行されるというのが実態です。