事業の目標に関わる基本的な意思決定

個別分野の目標を定める前に、行うべき重要な意思決定が2つあります。

事業の戦場とも言うべき領域(ドメイン)を決めるための「集中の目標」、市場セグメントとその中での市場シェアを決めるための「市場地位の目標」に関わる意思決定です。

集中の目標

事業のよって立つ場所、われわれの戦場に関わる目標です。集中の目標のない戦略は、戦略ではありません。

経営資源は有限ですから、あらゆる事業に手を出すことはできません。資源と行動を集中できるような目標を設定する必要があります。

だからこそ、リスクを伴う意思決定になります。一度決めたらそのままにしておくのではなく、市場の力学、トレンド、変化に合わせて、繰り返し検証していく必要があります。

市場地位の目標

市場地位は、市場の潜在性との対比(成長性)と、直接および間接の競争相手の仕事ぶりとの対比(市場シェア)において測定する必要があります。

リーダーになろうとする市場セグメントと、そこに投入する製品、サービス、価値を決定します。

売上の成長率にかかわらず、市場シェアは致命的に重要です。適正な市場シェアは、それ以上小さくなると限界的な存在になって存続できなくなる下限と、それ以上大きくなると賢明でないという上限との間にあります。

市場シェアが小さすぎると、景気後退のとき、小売店の在庫調整の対象になりやすくなります。十分なアフターサービスを行う余力も持てません。

逆に、市場シェアが大きすぎると、次のような弊害が出てきます。

  • 惰眠を貪るようになります。
  • 自己満足によって失敗します。
  • 組織の中にイノベーションへの抵抗が出てくるようになります。
  • 外部の変化に対する適応が難しくなります。
  • 市場の側にも、独占的な供給者に依存することに対する根強い抵抗が出てきます。

新しい市場、特に大きな新市場は、供給者が複数の方が速く拡大することが分かっています。競争がある方が、様々な市場や用途が発見され、開発されるからです。ですから、大手企業では、まったくの新製品を開発したときは、ライバルにも使用権を与えて、あえて競争環境を作ることもあります。

常に最適な市場地位を目指すことが大切です。

集中の目標によって戦うべき場所を限定し、特定の市場セグメントで最適市場シェアのリーダーを目指します。