時代は急激な変化の中にあります。重要なものの多くが陳腐化し、新しい課題やイノベーションの機会が生まれます。
あらゆる組織は新たな機会を利用し、自らも変化し続けていかなければ生き残ることさえできません。イノベーションを生み出し続ける企業家精神が必要です。
企業家精神には共通の原理がありますが、組織の種類に応じて直面する特有の問題があることから、それぞれの組織にとっての具体的な手引きが必要です。
変化の時代を生き抜く
時代は急激な変化の中にあります。社会の支配的な認識や空気が大きく変化している時代です。
変化の中にあっては、重要な地位を占めていたものの多くが陳腐化し、問題への取組の多くが無効となります。代わりに、新しい課題、実験、イノベーションの機会が生まれます。
社会の中に存在するあらゆる組織は、イノベーションによって新たな機会を利用し、自らも変化し続けていかなければ生き残ることさえできません。
個々のイノベーションを成功させることはもとより、イノベーションを生み出し続ける土壌としての組織の精神、すなわち企業家精神(アントレプレナーシップ)を築くことが必要です。
企業家精神は、トップマネジメントだけがもつべき精神ではなく、組織としてもつべき精神であり、組織のすべての人々の行動原理とならなければなりません。ただ、そのためにはトップマネジメントの率先した行動が必要です。
組織に応じた企業家精神の手引き
ドラッカーは、既存の企業やベンチャー企業、公的機関や非営利組織など、組織の種類にかかわらず、企業家精神には共通の原理があると言います。
ただし、組織の種類ごとに特有の問題に直面するため、それぞれに具体的な手引きが必要であると言います。
既存企業
既存企業の多くは、既存の事業をマネジメントする方法は知っていますが、いかにイノベーションを行うべきかを知りません。
特に大企業にとって、企業家としての能力は致命的に重要です。大企業の社会的責任ゆえにです。大企業が増加し、社会のシステムとして不可欠の存在となっているがゆえに、大企業の崩壊は社会的脅威を招きます。雇用、金融システム、社会秩序、政府の役割に大きな影響を与えます。
一方、大企業を初めとする既存の企業には、企業家的なリーダーシップを発揮できるだけの能力があります。必要な資源、特に人材をもっているからです。現に事業のマネジメントを行い、マネジメントチームをもっているからです。
企業家精神を育てることによって、その能力を生かさなければなりません。
既存企業の企業家精神について詳しく知りたい方は、次の記事を参照してください。
ベンチャー企業
今も昔も、ベンチャー企業がイノベーションの主たる担い手であることに変わりありません。
しかしながら、ドラッカーは、ベンチャー企業もまた、いかに企業家たるべきか、いかにイノベーションを行うべきかを知らないと言います。
いかにマネジメントを行うべきかを知らないということです。最初のイノベーションでたまたまヒットして一時的に成功したとしても、マネジメントができなければ、事業を継続させることができず、新たなイノベーションを生み出すこともできません。
ベンチャー企業のマネジメントについて詳しく知りたい方は、次の記事を参照してください。
公的機関
公的機関や非営利組織についても、既存の組織は、企業と同様に企業家的なリーダーシップの能力をもっています。必要な資源をもち、事業のマネジメントを行い、マネジメントチームをもっています。
特に民間の公的機関は、社会的な変化や改革の役割を政府に代わって果たすことを期待されており、そこにイノベーションの機会あります。
公的機関の企業家精神について詳しく知りたい方は、次の記事を参照してください。
企業家精神の豊富な成功例
幸いなことに、それぞれの種類の組織において、企業家精神の成功例は豊富に存在します。それらの成功例をもとに、ドラッカーは、企業家としての原理と方法、診断と処方を体系的に提示してくれています。