労働組合の重要性 − 「スキャンロン・プラン」とは何か?②

スキャンロン・プランは、全員参加による生産性向上の取り組みを行い、その成果を賞与として全員で分配しようとするものです。

スキャンロン・プラン成功の根本要件は、チームワークを促進するために、労働者の参加と労使のパートナーシップの原則を適切に実践し、発展させることです。

スキャンロン・プランを適用するには、2つの前提条件が必要です。

一つは、労働組合のリーダーシップが理性的であることです。経営側に対して条件闘争に終始するようであってはいけません。

労働組合は、通常の団体交渉の対象にならない多くの要因、例えば、企業間競争、競争価格、収益性などについても、よく理解することが必要です。

もう一つは、経営側の姿勢です。スキャンロン・プランに深い関心を持ち、全員を組織の問題解決に参加させるという積極的な意志と希望を持ち、苦境に耐え得る人でなければなりません。

労働者を遠ざけ、軽蔑しているような経営者では、スキャンロン・プランの運営はできません。

労働組合のリーダーシップ

スキャンロンは、最も幅の広い、最も意義のある参加を実現するためには、労働組合が必要であると考えていました。

組合のないところにプランを導入した結果、手間取ったり、問題が起こったりしたからです。そのような問題は、労働組合の助けがあれば片付くことでした。

労働組合がない状態で参加を推進しようとすると、委員会の場で生産の問題とは直接関わりのない個人的な苦情などが持ち込まれ、本来の生産の議論に焦点が定まらなくなる可能性があります。

ただし、個々の労働者の苦情やトラブルは、どのような会社でも完全になくすことはできないため、労働組合が強力なリーダーシップを持ち、個々の苦情を日常的に解決できることが重要です。

労働組合のリーダーシップが弱いと、生産の問題を議論する場に、労働者代表が苦情を大量に持ち込むことになってしまいます。

労使間の信頼関係は、会社全体としては、個人間の信頼関係というよりも、経営側と労働側といった集団を通じての信頼関係が重要です。また、組織化された協力関係こそが効果的です。

個人間のあらゆる関係を調整することによって組織を維持することは困難であり、個々人が直接属する集団間の相互関係を調整することによって組織は成り立つものだからです。

労働組合が理性的であること

労働組合は強力なリーダーシップを持つだけでなく、理性的であることも必要です。

リーダーシップが強力であっても、経営側との闘争においてそれが発揮されるだけであっては、生産に関わる労使のパートナーシップを確立することはできません。

労働組合が労働条件の要求を実現させることにしか関心を持たず、会社の業績向上に一定の責任を引き受ける覚悟や、生産の問題に積極的に提案する意思を持たなければ、スキャンロン・プランの導入は不可能です。

労働組合が労働条件の改善に向けて運動することは当然の役割であり、それをやめる必要はありません。大切なことは、通常の労働組合の問題と生産性の問題とを明確に区別することです。

このため、プランの導入時には、通常「協定の覚書」が交わされ、団体交渉において協議すべき事項と、労使合同委員会で協議すべき事項を明確に区別し、それを遵守することが求められます。

労使合同委員会には、すべての労働者が参加することはできません。限られた人数の代表者しか参加できませんから、労働組合は強く一致団結し、意見がしっかりと調整されていなければなりません。