顧客発掘 − 「高確率セールス」とは何か?①

高確率セールスは、有望であると思われる見込み客を訪問して対面で行うセールスプロセスが基本です。

しかし、有望な客に最大限の時間と労力をかけることを重視することから、訪問すべきお客を選別する段階がまずは重要になります。

その方法自体は決して特別なものではなく、いわゆる「テレアポ」を取る方法を基本にしています。

多数にのぼる見込み客に接触し、有望なお客とのアポイントを効率的に獲得する段階を「顧客発掘」と呼びます。

優れたセールスパーソンは、顧客発掘に全体の時間の4〜5割を当てているといいます。電話架けの時間は一日あたり3時間(休憩を除く。)、一日当たり件数60件(一件当たり最長45秒)程度です。

ニッチなターゲットを見極める

売り込まなくても売れるように有望な客を選別することは、言うは易しでも、行いはきわめて難しです。周到な準備と段取りが必要になります。

そもそもの前提として、どんな商品にも使える方法ではないと考えます。何故なら、商品に競争力がなく、その会社から買う理由がないのであれば、売り込まなくても売れることはあり得ないからです。

その商品が必要であり、欲しいと思い、それを手に入れるためならお金を出しても構わないと考えるお客が一定の数いることが前提です。

ですから、いの一番に行わなければならないことは、まず自分の会社がどのような点で競争力を有するのかを明確に認識しておくことです。

そのうえでこそ、その競争力を活かせるお客をはっきりさせることができ、そのお客に対してオファーできる商品をはっきと表現することができます。

競争力の主要な要素には、①価格、②品質、③サービスの3つがあります。通常、これらの3要素のすべてで同時に卓越することはできませんから、まずは、これらのうち自社が売りものにできるのは何かをはっきりさせなければなりません。

そして、わが社の売りを高く買ってくれるお客と取引することを重視し、見込みのないお客につぎ込む時間を節約します。

実際に行われる顧客発掘では、長くて45秒の電話による会話で選別します。これを可能とするには、わが社の商品を必要とし、希望してくれるお客にはっきりと訴えることができるような、短くて分かりやすいオファーの言葉をあらかじめ用意しておかなければなりません。

そのようなオファーを伝えることによって、いわば自動的にターゲットとすべきマーケットを限定し、有望なお客を選別することになります。

正しくは、お客が、わが社の商品を「有望な商品」として選別してくれるのです。そのようなマーケットが、わが社にとっての「ニッチ・マーケット」です。

有望な客を見つけ出す

通常、見込み客は多数にのぼります。高確率セールスの顧客発掘で通常使われる見込み客名簿は、特殊なルートから購入したり、精密なデータ収集・分析によって抽出するといったものではなく、電話帳レベルの情報から大まかに選別され、リストアップされたものです。

見込み客は、少なくとも1,000社をリストアップすることが推奨されます。一度除外したら二度と電話しないのではなく、オファーの内容を変えながら、3〜4週間ごとに電話を架けることを繰り返します。見込み客が、いつ有望なお客になるかは分からないからです。

顧客発掘は、有望な客を識別するプロセスであり、セールスプロセスではありませんから、必要のない相手と話すのは時間の無駄だと思わなければなりません。無駄話はせず、請求されていない資料を送ったりもしません。

有望な客だけに時間を使うためにこそ、望み薄の客を速やかにすべて「除外」しなければなりません。なるべく短い時間で、なるべく多くの見込み客にコンタクトし、短時間で「有望な客」をふるい分けるという意図をはっきり持つ必要があります。

商品を端的かつ簡潔なオファーとして伝えたうえで、商品を希望するという顧客からの意思表示がない限り、アポイントを取りません。つまり、商品を希望している顧客だとあらかじめ知ったうえでしか会わないのです。

ですから、会話の中で、相手が「自分は除外すべき客である」ということを示す機会を与えるためにあらゆる努力をするのです。

このようなことをすると、有望な客までわざわざ断る方向にもっていっているように思えるかもしれませんが、決してそうではありません。相手に「仕方ないから会う」とか「興味があるからとりあえず会う」などと思わせてはいけないのです。それは双方にとって時間の無駄です。

有望な客は、自分から外れることはめったにないといいます。危険なのは、除外すべき客を曖昧な対応によって除外しそこなうことであるということを認識しなければなりません。

電話による会話でこちらが行うことは「質問」だけです。相手が答えることを通して選ぶのであり、こちらは相手が選んだとおりにするのです。

これによって、条件に合わない人は自ら除外されるのです。

率直な答えを得るために、率直に質問します。そのお客が有望であれば、本気で買うつもりがあるので、逆に用心深くなります。信用がおけない相手に対しては買う意志を見せることをためらうのです。

「いつでも断ってもらって構わない」という率直な姿勢が、有望なお客の心を開きます。

顧客発掘の原則

見込み客との最初の接触であり、この段階で電話先の相手が「有望な客」であるかどうかを見極める必要があります。

このことを高確率セールスで正しく言い換えるとするなら、相手が「その商品こそ、私が必要とし、希望しており、買う用意があるものだ」と見極めてもらう必要があります。

提供しようとする商品の担当者(責任者)につないでもらい、冒頭に商品のオファーをします。そのために、すでに述べたとおり、商品のイメージを一瞬で頭の中に描いてもらえるようなオファーを簡潔明瞭に言語化しておく必要があります。

オファーは、商品が正しく伝わる限り短ければ短いほどよく、挨拶と自己紹介を含めて100字(約20秒)以内に抑えることを要求しています。その中に商品の特徴を2つ盛り込むようにします。実際に使ってみて、相手の反応を見ながら改善していきます。

相手に主体的に選んでもらうことが必要ですから、なるべく淡々と感情を込めないでオファーを言葉にします。

オファーの後、商品を希望するかどうかを相手に尋ねます。明確な意思表示をせず、「まず説明に来い」などと答えるかもしれませんが、商品を欲しがっていることが分からないうちはアポイントを取りませんし、条件等の話もしません。

曖昧な答えに対しては、率直に希望するかしないかを聞きます。「興味がある」や「とりあえず資料を送ってくれたら検討する」というのは、買う気がない人が好む婉曲な断り文句です。

はっきりと「イエス」であれば、取引を目的とする商談の場を設ける気があるかどうかを相手に尋ねます。商談をお願いするのではなく、相手の方から会いたいと行ってもらいます。

「会いたい」と言われたら、「会って何を達成したいか」を聞きます。

最初の商談の段階では、商品のデモンストレーションはしません。基準を満たせば必ず買うという明言があって初めて、デモンストレーションの段階になります。

「今はアポイントのタイミングでない」という答えであれば、一定期間後に話を進めるために改めてコンタクトしてほしいかを聞き、はっきりと「イエス」であれば、特定の日時にもう一度コンタクトする予定をスケジュールに入れます。相手がその時に会いたい理由も聞いておきます。

こちらの質問に対し、一度でも否定的な回答があった場合は、その時点で電話を切り上げます。

相手が、ある時期が来たら有望な客になる可能性を示した場合に限り、再度電話するようにスケジュールに入れておきます。