インフォーマルな集団は、フォーマルな集団の背後にオーバーラップする形で形成されます。
個人間の面識的な相互作用の重なりによって、それ自体が単一の有機体であるかのように存在し、振る舞います。
その結果、独自の信念や信条を持ち、個々人に帰属感を起こさせ、自動的に協力を要求するような社会的な掟や規範を持つようになります。
したがって、インフォーマルな集団を、個々人の考えや行動の総計として理解することはできません。
インフォーマルな集団であるといっても、フォーマルな会社組織の中に存在し、日々の職務遂行の中で影響を与えているため、個々人の行為を観察するに当たって、その行為がどのような要請に基づいているのかに注意する必要があります。
集団内の社会的相互作用を研究するための技術に「ソシオメトリー」があります。人間が相互に示し合う基本的態度に基づいて、インフォーマルな集団を支える中核の基本的タイプを明らかにします。
研究の基本的前提
インフォーマルな集団を研究する場合には、注意すべき点が2つあります。
第一に、ホーソン調査によっても明らかになったこととして、個々人よりも社会関係を観察の単位とすることです。
集団は、それ自身一つの単位をなしており、個々の成員の行動の単なる総計として理解することはできません。個々人の行動や意見は、集団全体のものとして統合されるとき、まるで違ったものとなり得ます。
第二に、どの行為が自主的なものであり、どの行為が業務の遂行に関連したフォーマルな要請によって規定されたものであるか、という点を注意してみる必要があります。この場合、技術的行為、社会技術的行為、社会的行為の3つを区別することが必要です。
例えば、岩石に穴を開けるために鑿岩機を使う行為は、技術的行為です。作業者の社会的地位や文化的背景は、直接的には無関係です。
職務に関連して上司に報告したり、同僚と議論したり、新人に教育をしたり、組合の会合に出席したりする行為は、社会技術的行為です。職務の一部として必要な行為ですが、人間同士の社会的相互作用を含んでいるからです。
技術的行為と社会技術的行為は、フォーマルな組織の一側面です。
一人の人間としての個々人に対する、純粋に個人的な関心に基づいて生まれる社会的相互作用が、社会的行為です。社会的行為は、インフォーマルな構造に属します。
労働移動率が高いとか、フリーの労働者が容易に受け入れられるような場合には、半永久的従業員の小集団以外には、インフォーマルな構造である第一次集団が生じる機会がほとんどありません。
一時的な小遣い稼ぎのために働いている者が多いような場合も、彼らの関心の中心は主に職場外にあり、職場生活にはほとんど無関心ですから、第一次集団を形成するのは困難です。
第一次集団があればこそ、職場生活に対して強い感情を抱く可能性があります。たとえその感情がマイナスのものであったとしても、第一次集団が存在する限り、その集団への何らかの働きかけによって感情の方向性を変えられる余地が残ります。
働きかけるべき第一次集団が十分に形成されておらず、職場に無関心な個々人が多数存在しているような状況であれば、問題を解決することが困難になります。
よく統合された集団、およびその中における真の社会生活は、次のような環境の下で見出されると考えられます。
- 熟練した業務
- 会社の置かれている地域社会が、比較的小さく、かつ古い歴史を持っている場合
- フリーの労働者、ないしパート・タイムの労働者を雇わず、また、労働者の大量雇用・解雇が季節ごとに絶えず行われることがない場合
ソシオメトリー
「ソシオメトリー」とは、集団内の社会的相互作用を研究するための技術です。アメリカの社会学者J・L・モレノによって生み出され、彼自身が命名しました。
集団内の社会的相互作用の型を説明する図を「ソシオグラム」と言います。
モレノは、人間が相互に示し合う基本的態度を「誘引」、「反撥」、「無視」に分類し、研究されるべき集団の成員には、交際したい、あるいは、交際したくない、と思う人々を指摘するよう求めます。次に、彼らの選択にしたがって、グループ替えを行います。
この研究は、低いモラールと規律の不足が問題になっていた女子師範学校で実施され、モラールと全員の満足を高める効果が得られました。
この研究において、インフォーマルな組織を支える社会学的中核の基本的タイプに関する知識が見出されました。中核の基本的タイプは、次の5つでした。
- 2人ないしそれ以上の個人間の相互選択で、一対関係、三角関係、四角関係、円関係、ないしは他のより複雑な形をとるもの。これが最も基本的かつ明確な中核である。
- 幾人かの個人が連鎖上に他を選ぶもの
- 一人の個人に向かって幾人もの選択が集中するもの(「花形(スター)」)。中心人物以外の人々の間には、誘引、反撥、無視の反応があり得る。
- 人気のある個人と勢力のある個人とは異なる。人気のある個人は、多くの人々から選択の対象にされるが、彼を選択した多くの人々同士は接触が限られているため、ほとんど一般に広い影響力を与えることができない。他方、人気があるほんの少数の人々だけから選ばれた個人は、彼を選んだ人々が人気者であるために、その人気者たちを通じて広く一般に強力な影響力を与えることができる。
- 自分が誰かを選ぶことはあっても、彼自身は誰からも選ばれないような孤立した人々がいる。そのような人々は、しばしば集団生活に不適応な人であり、集団の中の不調整の原因(「人間相互関係の分裂点」)となり得る。
多くの人から選択され過ぎる成員は、表面的な意味で人気があるのではなく、多数の成員の欲求と熱望を主唱する人です。彼らは、仲間の広範囲な欲求を洞察し、自らを他人と結びつけ、他人の欲求に効果的はけ口を作り出すことに最も優れた能力を発揮します。