職場における労働者の態度を直接に発見し、測定することは簡単ではありませんが、一定のヒントを得るための調査は可能です。
この種の調査には欠点もあり、反対意見もありますが、だからといって、何もしないで職場の緊張を放置すれば、実害が生じます。
調査によってすべてを知ることができるわけではありませんが、改善すべき職場の問題点を発見するための一つの手段として利用することはできるはずです。
態度調査の方法
態度を発見し、測定する最も簡単な方法は、意見を調査することです。態度は意見と同一ではありませんが、意見は態度を反映し、その徴候を知らせるはずです。
この種のテストの主な欠点は、個人の感情の度合いを測定することができないことです。態度の方向と当該集団における頻度数とを示すに過ぎません。
これを補うものとして、ボガーダスの社会距離尺度があります。この方法は、承認、不承認の両極端の間に尺度を設けるものです。
しかし、この方法では、強度の決め方が研究者の随意で、どんな段階や間隔が含まれるべきかは研究者の判断に依存します。
最も正確な尺度はサーストーンによって工夫されたもので、態度が測定されるべき主題に関して多くの記述が集められます。
これらの記述は、多義曖昧性がないように、また、当該主題に対し同意・不同意の態度が明確にできるように、実験的に分析されます。
態度調査に対する反対説と反論
産業内で態度調査を行うことに対しては、反対する意見もあります。次の3点が代表的です。
- 従業員が何を考えているかを見出そうとするのは経営者の弱体の徴であり、部下を完全に掌握管理している経営者が関わり煩う必要はない。
- 労働者が何を考え、またどう感じているかを、経営者はとっくに知っているから、このようなテストは不要である。
- テストは正確ではない。なぜなら、従業員は質問に正直に答えるのを恐れるからであり、意見は必ずしも行動と密接に関連していないからである。
1.と2.の反対意見については、これまでの議論から適切でないことは明らかです。問題などないと経営者が言う会社に限って、ストや労使間のトラブルが起こりがちです。
フォーマルな組織において従業員の人間的な感情の問題を把握することはそもそも難しいことであり、経営者の弱さや強さとは関係がありません。積極的に耳を傾けようとする姿勢こそが重要です。
経営者の強さというものが、恐怖や権力による専制的統制による部下の完全掌握を意味しているとすれば、それ自体が人間の尊厳に対する尊重を欠く考え方です。そのような管理こそ、従業員が心を閉ざし、緊張や不満を鬱積させる原因そのものです。
3.の反対意見については、無記名によって正直な回答を促進できます。また、意見と行動との密接な関連は、心理学者による徹底的な研究によって証明されています。
上記の3点以外にも、「触らぬ神に祟りなし」的な理由で反対される場合もあります。これは、従業員からの意見を恐れるものです。
このような恐れは、一部の下級管理者によく見られます。ちょっとした管理の弛緩でも無能力の兆しと解するような上級管理者から、不断に監視されていると感じているからです。
しかし、職場の緊張を増大させたままで放置しておくほど危険なことはありません。緊張は、早めに放出されるほうが安全です。どんな場合でも、放出の過程が、予期していたように劇的であることは珍しいといいます。
調査は、従業員の間の憤懣の源を早期に明らかにするうえで役に立ちます。源が分かれば是正可能であり、後々の面倒が回避されます。
実際のところ、意見や不満を調査への回答によって表現できるという事実だけでも、安全弁の役割をします。緊張を解消し、志気を高めることがあります。
調査によって明らかにされた多くの意見は、政策が策定されるとき、変更が行われるとき、監督者の訓練のときなどに活用することができます。
従業員によって望まれてもいなければ、必要だと感じられてもいない福利厚生に大金を投じるよりも、まず意見を聞くべきです。
なお、従業員の態度を発見するのには、調査以外にも方法はあります。会社を辞めていく人々に面接する、提案制度を用いる、職場会議を開催して意見を吸い上げるなどです。定期的に面接を行うこともできます。