スキャンロン・プラン − 「X理論」と「Y理論」⑧

統合と自己統制による経営にはいろいろな形態が考えられますが、優れた方法としてマグレガーが紹介しているのは「スキャンロン・プラン」です。

スキャンロン・プランは、事業経営の一つのあり方であり、一つの経営理念です。中心となる2つの特徴は「原価引下げ配分」と「参加」であり、これらが一体となることによって強力な組織統制を可能とします。

原価引下げ配分

第一の特徴は、会社の業績向上から生じた経済的利益の配分方法です。これは既存の給与体系に取って代わるのではなく、それに上積みすることを基本とします。

原価(労務費等)を引き下げることができた場合、その節約分を配分します。

その節約分がいくらになるかを決めるための基準として、一般的には、特定の年(基準年)の総人件費と産出値(総売上)もしくは付加価値との比率を用います。この比率を「配分比率」と言います。

配分比率の決め方は、実際のところ企業によって異なります。実態に即し、かつ利用しやすいものでなければなりません。財務記録を慎重に検討し、議論を重ねた上で決定します。必要があれば、その都度変更します。

ほとんどの会社で、配分比率は長期に渡ってかなり安定したものになるといいます。ただし、技術的もしくは経済的変動が大きかった場合は、この配分比率も大きく変動します。

配分比率が改善されるということは、会社全体が儲かっていることを意味します。配分比率からの改善分を節約分とみなし、その一部(例:75%)を計画に参加した者に毎月基本給に比例して支払います。残り(例:25%)は会社の取り分です。

経済的報奨が毎月支払われるため、それを算出した行動に合理的にうまくタイミングが合い、心理的に高い動機づけ効果があります。

これは相互依存体制下で協同を推進する方法です。経済的報奨が、自分たちの努力によって推進された種々の変更や技術革新の結果であることが分かります。

自分たちの行動と会社との結びつきが分かるので、直接肌で会社の経済状態が分かり、無茶な筋の通らないことを言わなくなります。

効果的な参加

スキャンロン・プランの第二の特徴は、従業員に対し、業績向上に心身を労して創意を凝らす機会を与える公式の方法です。

この手段によって、従業員が企業の目標に向けて努力することによって、自分の高度の欲求を満たす機会が豊富に与えられることになります。

自分の能力を利用することによって、人に認められることによる社会的満足や自我の満足を得ることができます。

生産性を会社の総合的成果という形で理解し、これに貢献するものすべてを尊いものとみなします。従業員は、自分の行動について考え、計画し、判断し、創造し、命令し、統制する能力によって貢献できます。

貢献する機会を従業員に与えるための具体的な方法として、一連の委員会を設置し、誰でもそこに、配分比率の改善につながるような取り組みを提案できます。

委員会には、社内の各部課および各職能部門の労使代表が参加し、提案された取り組みを受理し、討議し、評価して、役に立つと認められたものを実施します。

特定の部門内で実施可能な取り組みであれば、部門別委員会において検討し、実施することができます。もっと広範な内容の場合は、上級の選考委員会に付託されます。

会合の議事録は保存され、アイデアが行方不明にならないようにし、どのような措置が取られたかを誰もが分かるようにします。