問題解決技法の習得 − 「X理論」と「Y理論」⑰

管理者の仕事の大部分は問題解決です。

管理者は、経営戦略を選んだり、計画を立てたり、自分自身と部下の仕事を割り振ったりするなど、幅広い意思決定をします。

その際は、問題を診断し、関連資料を収集分析する技法、解決案とその実施過程の効果についてフィードバックするなどの技法が必要です。

事例研究

この種の技法は磨くことができます。そのために広く用いられる教育方法は、事例研究です。

ただし、事例研究だけを使う場合、問題診断の技法は向上するものの、解決案の質はあまり向上しないという意見もあります。理由は、事例研究だけを使う場合、理論を軽視しがちだからです。

事例が示すような複雑な問題には、最善の解答が一つしかないことは稀ですから、問題の分析を十分に行ったとしても、導き出される各解答の根底にある理論的な仮定を意識的かつ批判的に検討しなければ、ただ解答を出すだけで終わってしまいます。

問題解決の結果の検討

問題解決の技法を向上させるための重要なフィードバックの源は、何が、どうして起こったのかを理解するため、そこで生じた誤りを批判的に検討することです。

誤りは避けがたいものだということを認め、誤りに関する検討から価値ある勉強に進むことができます。

部下が仕事で誤りを犯した場合、管理者がどのように処理するかが、部下の仕事への態度に大きな影響を与えます。

部下に責任をなすりつけるだけに終始するのか、管理者自身にも責任があるものとして学ぼうとするのか、管理者のこのような日頃の態度の違いが、部下が自分自身の行為に対して責任をとることを心得ているかどうかを決める最大の要素であるといいます。

もちろん、うまく問題を解決した成果を分析することも、学習のための効果的なフィードバックになります。

ロール・プレイング

問題解決の訓練にロールプレイングを活用すると、教室で学習することができます。教師が生徒の行動を直接観察し、後にこれを批判的に検討することになります。

ロール・プレイングは、個人が実生活では取ろうとしない行動を取ることができる安全な環境ですから、勉強の助けになります。

同じ状況で、複数の異なる方法を試みることもできるため、実際の仕事では得難いフィードバックが得られます。

実情の公開

問題解決の技法を直接向上させるわけではないものの、問題に対する洞察力と理解力を増す方法として、一定の条件のもとで、同じような問題に直面している他の人々に実情を公開する方法があります。

大学の教育コースで異なる会社や業種から参加した管理者が共に学ぶ場合、教室内外で、そのような討論が行われ、多くのことを学びます。

経営首脳部の体験談の聴講

ミドル・マネジメントを対象にした教育コースで、会社の経営首脳部の話を次々と聞かせて、生徒たちに、重大な経営上の問題とその処理方法について質問させるものがあります。

これを繰り返すことによって、生徒が批判的に学ぶ技法を身につけていきます。

経営診断

経営診断も有効な訓練であると言われています。職務上の関連が深い何人かの管理者が、現在仕事の上で解決しようとしている実際の問題について、教師と一緒に検討します。

教師は、問題のみではなく、それを解決するために用いようとしている手段についても批判的に見るように指導することによって、自分たちの問題解決の手順を理解させ、その技法を向上させます。