多元化の時代 ー 断絶の時代③

20世紀の特徴は、あらゆる社会的な課題が組織に委ねられる社会、すなわち組織社会が出現したことです。政府に権力が集中するのではなく、多様な組織に権力が分散した多元化社会です。組織の間に上下関係はありません。

あらゆる組織が規模や予算において増大しましたが、ドラッカーが指摘する重要なことは、今日の社会的機能のすべてが組織によって果たされるようになったことです。組織は永続的な存在であり、それぞれが独自の経営陣をもち、独自の目的、存在理由、役割、価値観をもちます。

もっとも強大な組織は政府ですが、もはや主君ではなく、調停人、取りまとめ役、リーダー役にしかすぎません。政府はあまりに多くのことを行い過ぎて問題を起こしたため、他の組織に仕事を移譲していかなければ、意味ある存在であり続けることができなくなりました。

それぞれの組織が別々の役割をもっているため、社会全体に対処するためには、各組織が共存し、依存し、協力し合わなければなりません。組織社会に関わる理論は、組織間の相互依存性を基盤として組み立てなければなりません。コミュニケーションが重要になります。

既存の法令や規制、慣行などが、この関係に対処できるようになる必要があります。特に、政府の公的資金が民間に流れる場合の煩雑な手続きや制約が問題です。民間の生産性を落とし、結果的に政府が被害を被ることになります。かといって、公的資金に対する政府の責任を安易に簡便化することは許されません。

多元化した社会には、既存の法律や規制だけでなく、社会学や経済学といった学問においても、新しい理論を必要とします。

大組織は昔からありましたが、一握りの監督がすべてを知り、決定し、大多数の肉体労働者に命じることによって成り立っていました。ところが、現代の組織は、肉体労働ではなく知識労働が主体になっています。知識労働者は、自ら意思決定を行い、自らの責任で自らの知識を使って仕事をします。

現代の組織は恒常的な存在です。ほとんどの人は組織で働きます。組織のおかげで、教育によって得た専門的な知識を生かせる仕事を得ることができます。

このような多元社会を構成する組織には、特有の問題があります。まず、権限の正統性です。組織の働きは社会に対して何らかの影響を与えるため、その権限には社会的な正統性が必要です。また、目的、役割、成果、マネジメントに関わる問題もあります。さらに、秩序、倫理、効率、相互の関係に関わる問題も、関心の対象です。

多元化する社会において、組織、政府、個人のそれぞれにに問われるさまざまな問題や課題について、次の記事を参照してください。

なお、『新しい現実』において、多元社会のメンバーとして、政治的な機関(グループ)を新たに取り上げました。いわゆる大衆運動の機関であり、民主主義制度に基づく公式の手続きによらずに、政治的な力を行使します。次の記事をご覧ください。