グローバリゼーションのための七大改革 − グローバリズムの正体⑬

発展途上国におけるグローバリゼーションの進め方について、スティグリッツが考える重要な改革には次のようなものがあります。

政府が積極的な役割を担って、順序とペースをコントロールしようとする点が重要です。

資本市場への政府の介入の容認

資本市場の自由化には危険が伴い、短期資本の流れ(ホット・マネー)には大きな副次的影響があるため、取引の直接的な当事者(貸し手と借り手)以外の関係者が費用の負担を受け入れることが必要です。

大きい副次的な影響がある場合は、常に政府の介入(銀行制度と税制を通じて行われるものを含む。)が望ましいと指摘します。

国際的な金融機関はこうした介入に抵抗するのではなく、介入をよりよく機能させることに努力を傾けるべきです。

破産法の改正とスタンドスティル

スタンドスティルとは、権利行使の一時停止のことです。民間の借り手が債権者に返済できなくなった場合、問題に対処する適切な方法は、IMFの融資による債権者の救済ではなく破産です。

マクロ経済の混乱から生じる破産の特性を認識した破産法の改正が必要です。そのために、構造改革を促進し、現在の経営陣が続投する見込みを大きくする規定が必要です。

このような改革は、放漫な融資を助長するのではなく、債権者の側がより適切な注意を払うようになるなど、更なる利点があると考えられます。債権者にとって都合がよくなるばかりの破産法の改革を押し付けようとするのは正解ではありません。

この改革に関し、IMFが中心的な役割を果たすことはできません。IMFは主要な債権者であり、債権国によって支配されているからです。

救済措置に依存する度合いを低くすること

破産法とスタンドスティルの適用が増えれば、大規模な救済措置の必要性は減るはずです。

救済措置は度々失敗してきました。救済資金は西側の債権者が予想以上の返済を受けられるようにするため、あるいは為替レートを予想よりも長い間過大評価ぎみの水準に維持するために使われてきました。

これにより、当事国の金持ちはより有利な条件で金を持ち出せましたが、当事国はより多くの負債を抱えたままになりました。

救済措置は機能しなかっただけでなく、融資に当たっての注意や、為替リスクをカバーしようとする意欲を削ぐことにより、むしろ問題の一因となりました。

先進国と途上国の両方における銀行規制の改善

先進国の銀行規制は弱いため、貸出態度の悪化や不安定性の輸出につながる可能性があります。短期融資を助長することがグローバルな不安定性を高める一因となっています。

必要とされる規制へのアプローチは、各国の能力と状況に即したものでなければなりません。場合によっては、投機的な不動産取引への融資を制限したり、速度制限(銀行の資産増加率に対する制限)など、安定性を高める見込みのある制限はいくつかあります。

その反面、改革はより広い目標を見失ってはなりません。安全で健全な銀行制度は重要ですが、それはまた、企業と雇用創出の資金として、資本を供給するものでなければなりません。

リスク管理の改善

世界各国は今日、不安定な為替レートによる大きなリスクに直面しています。問題ははっきりしていますが、解決策ははっきりしません。

途上国は、おそらく国際資本市場のこのような変動に対して保険をかけることにより、リスクを回避する必要がありますが、途上国は今日、短期的な変動についての保険しかかけることができません。

先進国は間違いなく、途上国に比べて遥かにうまくこうしたリスクを処理できるので、このような保険市場の発展を助けるべきです。例えば、実質金利の大きな変動リスクを債権者に吸収させることにより、リスクを軽減する形で先進国が途上国に融資する手もあるでしょう。

セーフティ・ネットの改善

リスク管理の仕事の一つは、国内の弱者がリスクに対処する能力を高めることです。ほとんどの途上国には、失業保険などの弱いセーフティ・ネットしかありません。

それぞれの国々がセーフティ・ネットを改善する必要があるとしても、国際的な援助は不可欠になります。

危機対策の改善

セーフティ・ネットが乏しいこと、信用の流れの維持がきわめて重要であること、諸国間の貿易の崩壊は危機を広めることなどを十分に考慮する必要があります。

企業を回復させるよりも倒産させるほうが簡単であり、高金利がもたらしたダメージは金利が下がっても取り消されないことを認識する必要があります。

バランスを回復する必要があります。つまり、労働者や中小企業の利害と債権者の利害とのバランスを取る必要があります。

現在は外国の投資者に対して過度の注意が払われているように見受けられますが、国内資本の流出に関する政策には、そうしたバランスを取る効果がなければなりません。

将来の財政危機への対応は、社会的・政治的な状況を踏まえて考えなければなりません。社会的・政治的な混乱に直面している国に資本が引き寄せられることはないし、政策が外部から押し付けられたと分かっている場合は特に、そうした混乱は収拾不能となるからです。

IMFは、投資者の貪欲さや気まぐれや自信に注目するのではなく、景気後退に直面する国の総需要を回復させるために資金を提供するという本来の使命に立ち返る必要があります。

発展途上国が繰り返し投げかける疑問は、アメリカは自国が景気下降に直面したときには財政拡大政策と通貨拡張政策の支持を訴えるのに、なぜ途上国が景気下降に直面したときには正反対の主張をするのかというものです。

プログラムが貧困と失業に及ぼす影響の公表をIMFに強いれば、IMFもこうした側面に注意を向けるようになるでしょう。

どの国も、IMFが進める政策の結果、どういうことが起こりそうかを知っているべきです。その分析に間違いがあれば、例えば貧困の増大が予想よりも大きかった場合には、IMFに説明責任があると考えるべきです。そうすれば、様々な質問を投げかけることができます。