組織の基本単位の位置づけ

組織の基幹活動を明らかにし、それらの果たすべき貢献を分析することによって、組織の基本単位を明らかにすることができます。

次は、それらの基本単位を組織に位置づけられるようにします。

まず、基本単位が必要とする意思決定を分析します。意思決定の内容、種類、レベル、影響範囲が、基本単位の位置づけを左右します。

次に、活動相互間の関係を分析します。

これらの分析によって基本単位の位置づけを決定することができます。活動の関係性、階層性の判断根拠となり、部門や階層の分割の基礎になります。

決定分析

組織における活動の位置づけを左右する要素に「意思決定」があります。

ドラッカーが発見したところによると、ある大企業で過去5年間になされた意思決定の90%が定型的なものであって、その種類はごく僅かでした。

しかし、この企業では意思決定分析を行っていなかったため、常に問題の4分の3が「わが家を求めて」うろついた挙句、本来行くべき組織レベルよりもはるかに上の階層に行き、意思決定されていたと言います。

意思決定の大半を占める定型的意思決定が、上位マネジメントが本来なすべき仕事をできない状態にしていたのです。

社長の好みで意思決定の分野が決められている場合もあります。客観的なニーズではなく好みで意思決定者が決まるなら、成果をあげる組織も優れた仕事もできません。

体系的な分析によって、意思決定の客観的なニーズを知り、トップマネジメントの役割、現場の各階層のマネジメントの権限と責任を明らかにします。

意思決定の分類

成果を手にするには、

  • どのような内容や種類の意思決定が必要か。
  • どのレベルで意思決定を行うか。
  • どの部門に意思決定の影響が及ぶか。

を知ることが必要です。

ドラッカーは、4つの観点から意思決定を分類します。

  1. 影響する時間の長さ
    • その意思決定が企業の行動を拘束する期間
    • 意思決定の変更可能性や早さ
  2. 他の部門や他の分野、あるいは組織全体に与える影響の範囲
    • 部門内にとどまる意思決定は低いレベルで行います。
    • 他の部門に影響を与える意思決定は、一段高いレベルで行うか、影響を受ける部門と協議します。
    • 影響の度合いによって、意思決定に参加を求めるか、事前に相談するか、結果を知らせるだけでよいかを判断します。
  3. 考慮に入れるべき定性的要因の数
    • 定性的要因とは、行動原則、価値観、信条などです。特に重要な要因は、人に関する価値観です。
    • 例えば、アッパーミドルの昇進人事はトップマネジメントが関与すべきです。
    • 価値観の問題が入る場合は、意思決定を高度のレベルで行うか、高度のレベルでチェックします。
  4. 問題が繰り返し出てくるか、まれにしか出てこないか。
    • 繰り返し出てくる問題は、原則を決定しておきます。
    • 人や価値観の問題は、高いレベルで原則を決定し、実際の適用は低いレベルに委ねます。
    • 初めての問題は、それ自体一つの独立した事件として扱います。

意思決定の原則

意思決定のレベルを決める基本原則は、次の2つです。

  • 可能な限り低いレベル、行動に近いところで行う。
    • 具体的な決定には、十分低い位置、すなわち現場にできる限り近い位置での知識と経験が必要です。
  • 意思決定の影響を受ける活動全体を見通せるだけの高いレベルで行う。
    • 意思決定に参画すべき者、その結果を知らされるべき者の範囲を明らかにします。
    • 典型的な決定には十分高い位置の権威が必要になります。

関係分析

  • どこの誰と協力して働かなければならないか。
  • どこの誰に対して、いかなる種類の貢献を行わなければならないか。
  • どこの誰から、いかなる種類の貢献を受けることができるか。

を明らかにすることによって、活動相互間の関係の深さを知ります。

最も重視すべきは、上に対する貢献です。全体の成果への貢献が最も重要だからです。下に対する貢献を重視すると、本来あるべき位置づけよりも低い位置づけに置かれ、全体の意思決定に必要な知識を提供できなくなってしまいます。

関係分析は、いかなる組織の構造が必要かを決定するうえで必要不可欠です。また、いかに人員を配置するかという重大な決定においても必要です。

活動間の関係は、重要な意味あるものだけに限ります。致命的に重要な関係は、円滑、密接、中心的な関係とし、同じ部門の括りにします。

技術的に同じ専門分野だからということで、活動を一括りにしてしまうと、活動間の関係が複雑になり、原則に反します。例えば、「生産計画」という活動は、「計画」という専門分野の一部ととらえると、他の計画活動と一緒にしてしまうかもしれません。しかし、他の計画活動よりも、生産活動自体との関係性の方が密接なので、生産活動と一緒にするのが一般的です。

なお、ドラッカーは、決定分析と関係分析による位置づけに矛盾が生じたら、関係分析の結果に従うことを提案します。