ミドルマネジメント

情報化の進展により、ミドルマネジメントはいなくなると言われました。そう言われ始めたまさにその頃、彼らは激増しました。

特に、新種のミドルマネジメント、知識専門家が様々な分野で増加しました。知識を使って組織全体に影響を与える意思決定を行う人たちです。

彼らは、トップマネジメントの意思決定に必要な知識を供給するという重要な役割も担っています。彼らを効果的な存在とし、成果をあげさせることが、マネジメントの新しい中心課題です。

トップマネジメントは、彼らとの間にコミュニケーションを確立する必要があります。

ミドルマネジメントの過剰

かつて、情報化やオートメーション化によって、組織はフラット化し、中間管理職(ミドルマネジメント)はいらなくなると言われました。

しかし、ドラッカーによると、現実に起こったことは、逆の状態でした。そのように言われていた同時期に、ミドルマネジメントは増加し始めたとのことです。

ミドルマネジメントの人員は過剰になり、弊害が生じました。特に大組織の士気と動機づけに悪影響を与えたと言います。

忙しくなったのですが、仕事、挑戦、機会ではなく、ただ単に、互いに作用しあうことに忙しかっただけでした。調整や会議といったことで延々と時間を使っていたということでしょう。

やるべきことは、

  • 本当にしなければならないことは何か
  • 必要のないこと、削減したり廃止すべきことは何か

を考えることでした。

新種のミドルマネジメント

いわゆる中間管理職に相当する従来のミドルマネジメントも増加しましたが、本当に増加したのは新種のミドルマネジメント、すなわち「知識専門家」でした。

彼らは、

知識を仕事に適用し、かつ知識を基礎として、組織全体の能力、成果、方向に影響を与える意思決定を行う者

です。製品、製造、工程、税務、市場調査、マーケティング、広告の分野で増加しました。

かつての中間管理職は命令する人です。下に向かって、すなわち自分に報告する人に対して権限を持ちます。

一方、知識専門家は、知識を供給する人です。上や横に向かって、すなわち自分が命令できない人に対して責任を持ちます。貢献が横向き、上向きに実行されることで、組織全体の目標に貢献します。

さらに、トップマネジメントの意思決定に必要な知識を供給することも、重要な役割です。

  1. われわれの事業は何か、何であるべきか
  2. 目標は何か
  3. 優先度の高いものは何か、何であるべきか
  4. 資金や人材などの基本的な資源をいかに配分するか

かつての中間管理職のような命令の伝達者ではありません。彼らの決定と行動が組織の方向と能力に直接影響を与えています。

ですから、新種のミドルの知識専門家を効果的な存在とし、成果をあげさせることが、マネジメントの新しい中心課題です。

明確な権限の必要性

知識専門家としてのミドルマネジメントは、あらゆる組織階層、あらゆる部門に存在し、貢献を求められています。

今や知識組織です。旧来のライン組織よりも、縦横の関係がはるかに複雑になっているようです。いたるところで迅速な意思決定が求められます。

ですから、知識組織も明確な権限を必要とします。決定がどこでなされるべきかを明確にしておかなければなりません。あらゆるプログラム、プロジェクト、プランについて、「誰が計画変更の権限を持つか」を決めておかなければなりません。

事態は思いもよらない動き方をするため、権限を規定しておかないと、機能不全は必定です。

ラインのミドルさえ意思決定の一翼を担い、意思決定の内容を理解していなければなりません。命令の権限を与えられていない場合には、少なくともそれが誰に与えられているかを知らされていなければなりません。

トップマネジメントの役割

トップマネジメントは、自らの重大な意思決定に知識を供給する者たち、すなわち知識組織としてのミドルマネジメントを、部下ではなく若手の同僚として扱うべきだと、ドラッカーは提案します。

トップマネジメントは、彼らとの間にコミュニケーションを確立し、チームを形成しなければならないと言います。

彼らに指示をするのではなく、意見を求めます。

  • あなた方の仕事や私たちの仕事について、私たちが知らなければならないことは何か
  • 問題や機会は何か
  • 私たちはあなた方の仕事の助けになることをしているか、邪魔になることをしているか、教えて欲しい

少なくとも年に数回は聞かなければならないと、ドラッカーは提案しています。