経営科学に求めるもの

経営科学はマネジメントの有力なツールですが、活用できているマネジメントはほとんどいません。経営科学を生産的なものにし、マネジメントの道具として活用しなければなりません。

マネジメントは、経営科学を分析の道具であると位置づけ、マネジメントし、経営科学に問題提起と問題理解、代替案の提示を要求します。そして、その成果を意思決定に活用する必要があります。

マネジメントの責任

マネジメントは、経営科学が必要としているものを与えることができ、与えなければならないにもかかわらず、与えていないと言います。

経営科学が期待に応えられていないのは、むしろマネジメントの側に責任があると、ドラッカーは指摘しています。

マネジメントが経営科学に求めるべきもの

リスクのある意思決定を行うために必要な情報

技術と経済と社会は、複雑かつ急激に変化します。その中で、リスクのある意思決定を行うために必要な情報を求める必要があります。

期待と成果の尺度

必要な知識分野は、それぞれ固有の知識、論理、用語を持ちます。それらの知識分野を結合しなければなりません。そのための尺度が必要です。コミュニケーションとビジョンの共有をもたらすための尺度です。

体系とコンセプト

教え、かつ、学ぶことのできるものでなければなりません。

経営科学を生産的にするための期待と要求

ドラッカーは、経営科学に対する期待と要求を4つあげています。

これらの要求には、経営科学が計算の道具ではなく、分析の道具であるという前提があります。経営科学の目的は、診断を助けることであり、問題に対する洞察です。

したがって、同時に、マネジメントの側も、経営科学という道具を活用するという責任を果たすことを要求されることになります。

前提を検証すること

当然のこととされている前提のうち、検証が必要なものを考えることです。

正しい問題を明らかにすること

経営科学の強みは問題提起です。

解答を出すべきはマネジメントです。事業上の解答は、条件が揃えば一意に決まるような計算問題の解答とは違うからです。解答とは判断であり、リスクの選択です。知識に基づくだけでなく、経験や願望にも基づく選択です。

一つの答えではなく複数の代替案を出すこと

未来に関して正しい唯一の解答など存在しません。不完全かつ不確実でリスクを伴い、必要とされる行動もコストも異なるいくつかの代替案から選択できるだけです。

しかし、選択肢とその意味を提示できることは、それ自体が大きな価値です。

問題に対する公式ではなく理解に焦点を合わせること

問題解決の公式は提示できません。提供すべきは、問題理解の方法です。問題に対する洞察です。

マネジメントが間違った問題を見ているときに、「それでは問題が違う。これが本当に取り組むべき問題である」と指摘することです。

つまるところ、経営科学の役割は、マネジメントが取り組むべき問題を明らかにし、その理解を助け、それに対応するための複数の代替案を提示することによって、マネジメントの意思決定を支援することです。