ホワイトカラーの生産性

ホワイトカラーの数は、ブルーカラーの数を遙かに上回っています。

しかしながら、ホワイトカラーの生産性に関心をもつ経営者は多くありません。理由は、生産性を測定できないと考えているからです。生産性を測定できなければ、生産性の向上も議論できません。

ドラッカーは、厳密でなくても、十分に役立つ測定方法があるといいます。もっとも役立つ尺度は、生産台数などの産出量とホワイトカラー労働者数(または総労働時間)との比率です。

このような生産性の尺度をもつことによって、生産性の比較や変化の傾向を知ることができます。それによって、生産性の向上についても議論することができるようになります。

ホワイトカラーとは

「ホワイトカラー」とは、「ブルーカラー」に対比される言葉です。

「ブルーカラー」は、青色の襟で代表される作業服を着て作業する労働者であり、工場労働者、現場作業員などが代表的です。

「ホワイトカラー」は、白襟で代表されるYシャツを着て作業する労働者であり、一般的には、事務室で作業をする労働者を指します。

ホワイトカラーを具体的にいえば、専門的職業、技術・開発的職業、中・下級の管理的職業、事務的職業、企画・営業・販売的職業、対人サービスが挙げられ、精神労働、頭脳労働が特徴であるとされます。

しかし、現在は、この分類は非常に曖昧です。

機械のメンテナンス作業は、肉体労働的な要素もあり、作業着を着用することも多いですが、多分に頭脳労働的です。医療分野での臨床検査技師や看護師なども同様です。

事務職でも単純作業は数多くあります。頭脳労働というよりも、肉体労働に近いものも多いと言えます。

ドラッカーは、「ホワイトカラー」という言葉は希にしか使っておらず、明確な定義をしてもいないように思いますが、生産活動に直接携わっていない労働者を総称しているように解釈できます。

そのような労働者であるがゆえに、生産性が蔑ろになりやすく、肥大化しやすいということが言えます。

ホワイトカラーの生産性の尺度

代表的な生産性の尺度

代表的な生産性測定方法は、産出量とホワイトカラー労働者の総数(または総労働時間数)との比率です。

小売業の世界では、店員一人当たりの顧客数や販売高は、生産性の尺度として当然のこととなっています。

この比率は、それ自体で意味があるわけではありません。この比率を比較することによって、企業や産業の競争力を測定することができます。

自社内での時系列の比較も重要です。生産性が向上しているのか、低下しているのかが分かります。さらに、過去と現在を比較し、将来の目標を設定することもできます。

産出量と特定のホワイトカラー集団の比率を求めることによって、部門別あるいは機能別の生産性を見ることもできます。

この尺度を比較することによって、いかなる分野におけるホワイトカラー集団の改善が、全体の改善につながるかが分かります。

ドラッカーは、アメリカと日本について、ホワイトカラー労働者100人当たりの自動車生産台数を比較して、日本の方がはるかに多いと指摘しました。

その理由として、アメリカの場合、記録や報告や監督などのための事務職および事務管理者をあまりに多く雇っていることをあげています。

生産性の変化傾向

企業が急成長を遂げているとき、ブルカラー労働者の数は、一般に生産量に比例して増加します。技術や設備などは横ばいです。

ホワイトカラー労働者の数は、生産量や販売量よりも伸びがはるかに低いはずであり、おそらく半分程度です。

ホワイトカラー労働者数の伸びが、生産量や販売量の伸びを上回っていればもちろんのこと、同程度であっても、競争上の危険があります。

一般に、ホワイトカラーの生産性の低下は、前途に「成長の危機」が待ち構えていることを示す最初の確かな徴候です。競争力は失われつつあります。

攻撃を招きやすいうえに、防衛力の弱さは明らかです。明らかな非効率がそこにあるからです。

その他の生産性尺度

その他の手段として、ドラッカーは3つの尺度を提案しています。

第一が、新製品や新サービスの開発終了段階から市場投入への時間です。これは、市場における成否を決定する最大の要因であり、知識労働者の効率性を判断するための、もっとも容易な測定方法です。

第二は、一定期間内において成功した新製品や新サービスの数です。これも、ホワイトカラー労働者、特に知識労働者の生産性の尺度です。

第三は、産出量とスタッフの数との比率、および産出量と管理レベルの数との比率です。

近代的な組織においては、生産活動における規模の経済と同じように、情報における規模の経済が存在するため、産出量が増加するに従って、単位産出量当たりのスタッフ数や管理レベル数は減少するはずです。

ホワイトカラーの生産性向上

ホワイトカラーはブルーカラー以外の労働者ですが、すでに述べたように両者の境界は曖昧です。また、ホワイトカラーには、サービス労働者と知識労働者が含まれますが、この両者の境界もまた曖昧です。

ブルーカラーは概ね生産労働者ととらえることができますが、テイラーの科学的管理法(IE)によって、その生産性は飛躍的に向上してきました。また、働く者の参画によって、仕事に責任をもたせることも可能になっています。

しかしながら、ホワイトカラーの生産性向上は未だ不十分です。ドラッカーは、サービス労働者と知識労働者の生産性向上についても提案していますので、詳しく知りたい方は、次の記事を参照してください。