オートメーションのメリット

ドラッカーによると、工場のオートメーション化は、3年以内に元を取れるといいます。コスト削減と収益向上の両方から、生産性が向上します。

しかしながら、オートメーションのメリットが理解できない経営者は少なくないようです。

コスト面の効果は早く現れ、しかも大きいと言われますが、それが実感できないとすれば、従来の原価計算の方法では補足し難いことが原因と考えられます。

オートメーションのコスト・メリットは、生産された製品一個あたりのコストで把握するのではなく、全生産工程の総コストで把握しなければ分かりません。

収益の向上については、オートメーションを導入しただけで実現できるわけではありません。収益を上げるためには、顧客ニーズに対応できることが不可欠ですから、前提としてマーケティング力が必要です。

収益の向上は、全社的な効果として把握されるといってもよいかもしれません。

コスト削減の効果

オートメーションが削減できるコストは、直接費ではなく間接費が中心です。さらに言うと、実際に消費したコストだけでなく、作業しなかったことによるコストが削減されることです。

一般に「良品は安くつき、悪品は高くつく」と考えるのが品質管理の基本ですが、これを従来の原価計算で把握することはほとんどできないため、これを本当の意味で理解して実践している経営者は多くありません。だからこそ、不祥事が後を絶ちません。

従来の原価計算では、生産工程が設計どおりに動くことを前提としているため、最終製品における合格品の割合(歩留まり)を計算しているだけに過ぎないことも少なくありません。

生産工程のどこで品質の悪化がもたらされたか、問題を解決するためにどれだけの時間と資金が投入されたか、どれだけの部品等が最終検査に行き着かないうちに排除されたか、などが明確にされないまま、残業や仕掛かり、スクラップ率や過剰人員などのなかに埋没してしまうことがほとんどです。

これらのコストは、製造原価に含めることができるなら、間接費として恣意的に配賦されてしまっているかもしれません。場合によっては、販管費に埋没しているかもしれません。

事後のクレーム対応は、販管費のなかの別の経費として分散し、把握することはできないかもしれません。売上減少の機会費用は、まったく考慮されていないでしょう。

ドラッカーによると、このような形で埋没してしまうコストは、高品質工場に分類される場合であっても、3分の1を上回ることがあるといいます。

ところが、オートメーションの場合、品質管理と品質基準を生産工程の各段階に組み込むことが前提です。品質の欠陥が発生したときは、その時点で発見し、知らせることができます。

オートメーションのコスト削減効果は、人件費よりも、品質管理コストのほうがはるかに大きいといいます。

さらに、オートメーションでは、複数モデルを同一工程で流すことが可能になるため、段取り替えに必要な工程の中断がほとんど起こりません。

工程の中断は、何もしないことのコストであり、従来の原価計算では直接費として考慮されることはほとんどありません。しかし、間接費としての人件費や施設維持費などは消費しています。

多品種少量生産になっていけば、工程中断のコストはますます大きくなっていきます。

収益増加の効果

オートメーションによる収益の増加は、工程中断の削減に関わるといいます。つまり、最適な生産の組み合わせによって、より大きな利益をあげることが可能になることを意味します。

ただし、何が最適な組み合わせかは、オートメーション自体が教えてくれるわけではありません。あくまで市場のニーズに基づくものでなければなりませんから、市場調査などマーケティングの手法が必要です。

ですから、生産部門だけでは、明らかにできるものではなく、実現できるでもありません。