仕事の生産性

仕事は、客観的な存在です。課題であり、なすべきことです。人間からは独立したものとして定義することができます。

スキルや知識は、仕事そのものとは関係ありません。働く側の問題であり、働く者が持っているかどうかが問われます。これらは混同することなく、区別して考えなければなりません。

仕事は、生産性をあげることが必要です。客観的な存在ですから、物に対するアプローチをそのまま適用することができます。フレデリック・W・テイラーの科学的管理法、現代のインダストリアル・エンジニアリング(IE)を活用して、論理的に決めることができます(参考:「科学的管理法」とは何か?)。

さらに、仕事をできる限り客観的に深く理解することよって、働くという人間活動に適合させることもできるようになります。そうすることで、人により多くの自由を与えられるようになります。

働く者に聞くことの大切さ

仕事そのものは客観的であり、人からは独立したものとして定義することが大切です。そうすることによって、仕事そのものを深く理解し、より生産的なものにすることができるようになります。

ただし、客観的であると言っても、仕事を深く理解するためには、その仕事についてよく知っている者の意見を聞かなければならないことは言うまでもありません。インダストリアル・エンジニアなどの専門家は、仕事の分析や改善の方法論に詳しいかもしれませんが、仕事そのものにもっとも詳しいとは限りません。

仕事そのものにもっとも詳しいのは、その仕事を行う者です。これからまったく新しい仕事を始める場合は別として、これまでの仕事を改善するのであれば、まず、その仕事を行っている者に話を聞くことから始める必要があります。

  • われわれが教えてもらえることはないか
  • 仕事とその方法についてわれわれに教えてもらえることは何か
  • どのような道具が必要か
  • どのような情報が必要か

仕事を改善し、生産性を向上させるための取り組みには、働く者の参画が必要不可欠です。働く者自身が責任を負い、管理するように求めることが必要です。改善活動自体を仕事に組み込み、継続的な改善が図られるようにすべきです。

分析

インダストリアル・エンジニアリング(IE)を活用して、必要な作業、手順、ツールを明らかにします。次に、必要な作業を論理的な順序に並べます。

ただし、仕事を生産的なものにするには、成果(アウトプット)から考えなければなりません。何をいつ何のために使うのかを決めるのは、成果です。

  • 何を生産したいか
  • そのための仕事は何か
  • 効率的かつ生産的に生産するには、最終製品はどのような設計でなければならないか

に答えることから始めます。

ドラッカーが特に注意していることは、

「職務」の分析は、仕事の分析に含まれない

ということです。「職務」は人に仕事を割り当てることですから、「働くこと(working)」に関わります。「職務の分析」を「仕事の分析」の延長で行うと、テイラーが激しく避難を受けたような人間疎外の要因となります。

「職務」は、働くことの5つの側面に従って設計しなければなりません。

プロセスへの統合

個々の作業を一人分の仕事に統合します。仕事は、なるべく均一に設計しなければなりません。次に、仕事を生産プロセスに統合します。

生産プロセスを組み立てる手法を初めて明らかにしたのは、ガントです。最終的な成果を得るために必要なステップを逆にたどって明らかにするもので、「ガントチャート」と呼ばれます。PERTやクリティカルパス分析、ネットワーク分析などの手法も、ガントチャートの延長線上にあります。

生産の原理

生産プロセスを組み立てる際に適用できる「生産の原理」が存在します。ドラッカーによると、現在4つの原理が明らかになっており、それぞれが独自の制約条件、必要条件、特徴を持っています。マネジメントに要求される能力、スキル、仕事の仕方も異なります。

  • 個別生産
  • リジッド(固定的)大量生産
  • フレキシブル(適応的)大量生産
  • プロセス生産

それぞれの原理について詳しく知りたい方は、次の記事を参照してください。

管理

管理のための手段、すなわちフィードバックの仕組みを組み込みます。

管理手段は、方向性、質、算出量、保守と安全、効率などに関するものです。プロセスの中にそれらを組み込む必要があります。

管理手段によって予期しない偏差を感知し、プロセスの変更が必要かどうかを知ることができます。それをもとに、必要な水準にプロセスを維持します。

条件

管理の具体的な内容は、それぞれの仕事のプロセスによって異なります。標準はありません。しかし、次のような共通の条件があります。

  • 管理とは仕事の管理であって、働く人の管理ではない。働くことの妨げになってはならない。
    • 小売店の販売員が書類作成に多くの時間を取られることがあります。このような場合、専門の事務員の配置で解消できます。
    • 管理は経済的な視点から行い、最小の管理でなければなりません。
  • 管理手段は、あらかじめ設定しておかなければならない。基準と基準からの乖離の許容範囲を決めておかなければならない。
    • 管理の本質は、例外を管理することです。許容範囲を超えた場合に作動するものでなければなりません。
  • 管理は、仕事の成果からのフィードバックによって行わなければならない。仕事自身が管理のための情報を適用しなければならない。
    • 仕事とは別の検査によって管理しようとしてはなりません。検査は管理そのものではなく、管理を管理するための手段です。検査は不良を検知しますが、防ぐことはできません。

定型と例外

管理手段は、定型的なプロセスにしか適用できません。例外を見分け、全プロセスが邪魔されないようにすることが必要です。しかし、管理手段自体で例外を処理することはできません。

例外は、個別に処理しなければなりません。プロセスの中で管理に処理させようとすると、そのわずかな例外のために、プロセス全体が非効率になります。

定型のパターン

  • インプットとアウトプットの双方が定型的な場合
    • 大量生産に該当します。定型的な仕事の流れを組織し、例外は分離して処理します。
  • 多様に見えながら、パターンが定型的な場合
    • 損害保険の処理、病院などが該当します。いくつかのパターンが多くを占め、例外はわずかです。例外は分離して処理します。
    • 不確定要素が多いように見えて、複数の予測可能なパターンが存在することが多いと言えます。管理手段の設計に当たっては、まずそれらのパターンを識別することが重要になります。
  • 特別な状況ばかりの場合
    • すべてが個別の処理になります。仕事の基準、最小限満たすべき基準をあらかじめ定めておき、担当者に大幅な権限を与えます。

3つめのパターンは、プロフェッショナルの知識労働に典型的なものです。プロフェッショナルは、基本的に一人で働き、特別の状況を扱います。管理は、自分で定めた基準によって行うしかありません。

そのような基準の欠如が、プロフェッショナルへの不信と不満をもたらしています。管理手段の欠如です。

ツール

仕事に必要なツールを準備します。スキルに関わる問題です。

条件

  • 最小の労力、複雑さ、エネルギーで使えること
    • 大きいことがよいことではありません。
  • 実用的であること
    • 仕事のためのツールであって、ツールに合わせて仕事を考えるようであってはいけません。
    • コンピューターの導入時には、頻繁にそのようなことが起こっています。高性能な機械を設置した場合も、稼働率を上げるために作りすぎの無駄が生じることがあります。
  • 人がツールの一部になったり、働く者同士に亀裂をもたらしたりしないこと
    • 例えば、組立ラインは、人を機械の一部にし、スピードやリズムを変えることで隣の同僚に迷惑をかけてしまうことがあります。
    • ツールは、人が使用することによって成果をあげるものです。人の能力を高めるものでなければなりません。

オートメーション

人が機械の一部なるような場合は、オートメーション化を検討します。オートメーションには、次の4つの基本的な特性があります。

  • プロセス全体が一つのシステムとなる。
  • あらゆる現象がパターン化され、確率分布によって定型化される想定でシステムが作られる。
  • フィードバックによって管理される。
  • 人は働かず、プログラムする。パターンの範囲内において決定する。

オートメーションのメリットについて詳しく知りたい方は、次の記事を参照してください。

ドラッカーによれば、オートメーションの本質は技術ではなく、機械化でもありません。一つのコンセプトであり、流通や事務の仕事の組織化にも適用されます。

オートメーションの目的は、可能な限り多様な製品を、もっとも安定した方法と最小の費用、作業で生産するための最善のプロセスの完成です。フィードバックによって、目的と手段、投入と算出のバランスを図るために自らをコントロールするシステムです。

算盤(そろばん)がオートメーション化の粋であると、トラッカーは言います。

オートメーションは、人間の仕事をロボットに代えるわけではありません。ただし、未熟練の単純労働者に代わって高度な教育を受けた人材を要求します。誰もがマネジメントになることを要求します。最大限の分権化、柔軟性、自立性を要求します。