クロージング − 「高確率セールス」とは何か?③

実際のところ、一般的な営業活動において言うところの「クロージング」は、最初の段階、すなわち顧客発掘の電話から始まっています。

顧客発掘では「今すぐ欲しい」という高確率な見込み客を選び出し、アポイントを得ます。

「発見/除外」のプロセスでは、質問し、選択肢を示すことによって、話し合う項目を一つひとつあげてリストをつくっていきます。

お客は、すべてのプロセスにおいて質問に答え、コミットメントし、話を先に進めるたびに、自分からクロージングしていることになります。

高確率セールスで言うところの「クロージング」では、そのようにして聞き取っていった情報を含め、「満足条件」(購入決定の前提となる基準)を互いに確認し、合意しながら、記録していきます。

満足条件のリストは「合意文書」に相当します。曖昧な表現を排除し、後から契約破棄する理由をなくします。

お客から最終的なコミットメントが得られたら、注文はほぼ確実になります。最終的にデモンストレーションなどで満足条件を満たすことを証明できれば、正式な契約に至るはずです。

「必ずご期待に添えることをお約束します」といったような無条件の満足保証は絶対にしてはいけません。世の中には、何をしても満足しない人がいるからです。満足条件をリストにすることは、相手の満足条件を限定する意味もあります。

お客がコミットメントを守らなかったら、その時点で除外作業に戻ることになります。

クロージングのスタートを宣言する

「発見/除外」の質問をすべての関係者に対して行ったら、相手に「満足条件」(購入決定の前提となる基準)を正確に定めなければならないことを伝えます。

要望をすべて書き出すことによって、わが社がその要望のすべてに答えられるかどうかを判断することができるからです。

これが、高確率セールスにおけるクロージングのスタートの宣言です。このプロセスに入ることを希望するかどうかを聞きます。

満足条件を満たした場合のコミットメントを求める

具体的な満足条件の決定に入る前に、満足条件を満たす提案を行ったらどうするかを聞きます。ここでも、お客にはっきりと「契約する」なり「注文する」などの答えを言ってもらいます。

それ以外の返事や曖昧な返事が返ってきた場合は、再び基本的なルールを告げます。例えば、先にデモンストレーションやサンプルを見せるように言われた場合、デモンストレーションやサンプル製作には多大な労力がかかることを説明し、相手の満足条件を満たせば注文するというコミットメントがあった場合のみそれらを行いたいと明確に述べます。

それでもはっきりしたコミットメントが取れなければ、訪問を切り上げて、相手を除外します。

満足条件を記録する

満足条件を一つひとつ聞き、確かめ、相手の言葉をそのまま記録していきます。

優先すべきは価格・品質・サービスの満足条件です。価格を後回しにしてはいけません。提供するサービスとしないサービスをはっきりさせます。品質には商品の特徴も含まれます。

「発見/除外」の作業で出てきた要望も満足条件に加えます。書き留めたメモを読み返し、それが正しいかどうか、付け加えることはないかを尋ねていきます。

相手から出されなくても、必要と思われる条件があればこちらから提案します。

詳細を詰める

実際にどこまで受け入れ、何を受け入れないかという具体的な問題を細かく詰めていきます。

記録された満足条件について、すべてが実現できるとは限りませんから、できることとできないことをはっきり伝えます。マイナスポイントを隠してはいけません。

できないことについては、代替策があれば提示し、話し合います。その結果、相手がどうしても譲れない条件であり、どうしても満たすことができないのであれば、相手を除外することになります。

代替案に誘導してはいけません。質問の体裁をとったとしても、事実上売り込むのであれば、それは露骨な操作であり、高確率セールスで行ってはならないことです。

詳細を詰めるに当たっては、明確な議論を経て合意に達することが重要であり、自分の判断に頼ってはいけません。そうしないと、最後に「話が違う」ということになりかねません。

満足条件を判断する基準を尋ねる

一つひとつの条件について、曖昧な基準で合意すると、実際の商品を納品した段階でトラブルになりますから、具体的な数字の基準を合意します。

数字を合意することが難しければ、最低合格ラインあるいは合格幅(上限と下限)の見本を示してもらいます。

繰り返し念を押す

一度コミットメントしてもらっただけで満足してはいけません。その後にもお客に念を押し続けます。相手のコミットメントをテストし、本人が自分で強化できるようにするためです。

本当によいかどうか、よいと思う理由などを聞いていきます。

こうした念押しによって、相手の気が変わることがあるかもしれませんが、気が変わるなら早いほうがよいと考えます。気が変わるとすれば、心もとない理由があるはずですから、その場で探し出さなければなりません。どのような迷いがあるかを聞きます。

取引成立

お客のすべての満足条件について、こちらが満たし得る形でまとめることができれば、取引が成立することになります。最初にそのようにコミットメントしてもらったからです。

あらためて訪問し、提案書またはサンプルを見せ、あるいはデモンストレーションをします。

それらによって満足条件を満たすことができると証明できれば、契約が完成され、注文書を発行してもらいます。