リーダーの選抜 − 「人間関係論」とは何か?㉖

経営者がリーダーを選抜する際、自分に似ている人を選びがちです。その結果、経営者に似たような人材を会社に受け入れ、会社は一種の集合人格をもつようになります。

リーダーの選抜は、個別に人材を評価するだけではなく、実際に候補者集団に課業を与えることによって行うことが効果的です。リーダーの優れた選抜方法として有名なのは、ヘンリー・ハリス博士が開発した「集団選抜法」です。

集合的機能としてのリーダーシップ

リーダーシップは、集団の全努力の統合された表れという意味で「集合的機能」であるといいます。

リーダーシップは、集団の問題や目的と関連して生じます。個々人の支配力や貢献度の合計ではなく、それらの相互関係です。

つまり、指導の権威と強制力の元は、その人自身にあるのではなく、全体の状況とその状況が求めるところにあります。

リーダーは、そのときの状況がつくり出している至上命令を知り、それを他人に気づかせ、他人が喜んでするように方向づけることができます。

リーダーは、他人を命令で動かしているのではなく、問題の解決に効果的である集団の集合的能力と感情的態度を動かしているのです。

この考え方からすると、リーダーシップというのは、すべての成員が、自分のレベルおよび分野で集合的努力に参加し、他人からの影響を受け入れ、また他人に影響を与えるという形によって発揮することができるということです。

戦時選抜局における選抜方法の事例

大戦中の戦時選抜局では、ヘンリー・ハリス博士による選抜方法が実施されました。

候補生8名ほどで実験小社会をつくらせ、集団討議や、肉体的、室内・室外的状況のようなある程度の集団的企画を必要とするいろいろな種類の課業を行うように期待されました。

リーダーは指名されず、その集団が自然にリーダーを際立たせるままに任せました。集団が直面する状況が異なるに従い、どの人に集団が自発的に従っていったかが記録されました。

また、成員たちは個別に、医学的(何らかの感情的または知的異常がないかどうか)かつ心理学的(知能水準や性格はどうか)な検査を徹底的に受けました。

集団検査と個別検査とを照合、調整し、各人の各種分野における能力、人々との接触、その人の有効性を甚だしく悪化させることなしに堪え得る圧力量の3つに関する結論を引き出しました。

この選抜方法は、集団に与える課業の型を変更することによって、軍事以外の分野において指導者を選抜する方法としても活用することができると考えられます。

ただし、経営者の見習いとして相応しい人々、またはすでに産業界でリーダーになっている人々は、低い知性、自己中心のパーソナリティ、感情的偏見などの欠点をもっていないならば、人を取り扱う訓練を受けることにより能率を大いに改善し得るといいます。

訓練は、監督して実習させることが大切です。自分にどのような弱点があり、どのような場合にどのような問題を起こすかを知ることができるからです。

特に、集団の成員たちの反応が分かるようになることは、リーダーシップ訓練から得られるもっとも重要な利益の一つです。