態度とは何か? − 「人間関係論」とは何か?⑲

「態度(attitude)」とは、物事に対して個人が反応を起こすとき、その反応に影響を及ぼす心的な準備状態を意味すると考えることができます。

同じ刺戟を受けても、人によって反応の仕方は違います。その違いを説明するために、「態度」という概念を用いることができます。

人の内部条件に関わるものが「態度」であり、人の行動に影響を及ぼすものとして重要です。

言語と社会

幼い子どもは、外界を直接そのままに見ています。

まもなく子供は、言葉を覚え始めます。物にはそれぞれ名前があり、事柄や物事は分類することができ、分類することによってこれらを処理する方法が得られることが分かってきます。

さらに、ある言葉の意味は、その言葉に対する人々の反応によって定まることが分かってきます。

これらの過程を経ることによって、外界を、ある程度予想可能で、安定した、秩序あるものとして見られるようになります。無限の多様性があるように見える事物や経験に統一性を見出し、カテゴリーを作ることができるようになります。

分類することができれば、行動するための助けになります。

今視界の中にないものであっても、言葉を通して考えることができるので、過去や未来についても考えることができます。

このような過程によって、大人は、子供のように外界をありのままに見ることができなくなります。自分と外界の間に、言葉を介した象徴的な世界が作られ、それを通して外界を見るからです。考えるという行為さえ、言葉を通してなされることがほとんどです。

言葉は、個人的なものではなく、社会的なものです。なぜなら、言葉は、社会における意思疎通を通して、そして意思疎通を図るために獲得されたものだからです。

言葉や概念の意味は、社会的に受け入れられたカテゴリーや共通の約束であり、社会の文化を反映しています。それがなければ意思疎通ができません。

「概念」とは、社会生活において実際的に重要な区分をしておくための手段です。「言語」は、個人または集団の必要に応じて、外界を構成し直し、個人の行動を物的環境や他人および自分自身と関係づけて組み立てるものです。

このような言語の機能から、W・I・タマスは、「自己完成の予言」と呼ばれる社会学的原理を提示しました。「もしある状況が現存すると規定するならば、その状況は現存するという結果となる」というものです。

経営者が、「労働者は怠惰で無責任な人々であり、労働者の唯一の願いはより多くの金を得ることである」と決めてしまうことによって、この理論がまもなく事実となって現れるような状況に、労働者を追い込んでしまうということです。

態度とは

個人によって現実に関してなされる概念づけや分類は、多くの異なった源から由来します。幼児期の家庭、宗教、第一次集団、第二次集団、その人の個人的体験などです。そのような源を「準拠体制」と呼びます。

各集団は、集団の置かれている状況に必要と思われる諸目標を、各成員が望むように、意識的または無意識的に成員にいろいろ教え込んでいます。成員は、他の集団や他の人々、または特定の状況に対して、特質的な仕方で反応するように期待されています。

状況や人々、または集団への特質的反応は、態度に基づいています。

「態度」(attitude)という言葉の意味は、様々な人が様々に定義していますが、物事に対する個人の反応そのものではなく、反応に影響を及ぼす心的な準備状態を意味すると考えることができます。

ここでは、「態度」という言葉を、環境に反応するいろいろな仕方を説明するために用いられる概念とみなします。与えられたある刺戟は、必ずしも同一の反応を起こすとは限りませんので、人の内部の条件に関わる態度は、行動に影響を及ぼすものとして重要です。

「態度」という概念は、人がある心的構造をもっていることを仮定します。その仮説によって、刺戟と反応との関係、複雑な行動の理由について説明できます。

態度には、これまでの経験が大きな影響を与えており、その経験からして環境をどう受け取るかに基づいています。

工場長にとって、親しく魅力的で、愉快な場所と思える工場が、従業員にとってはそう見えないかもしれません。この場合、工場長と従業員は同一の工場を経験していないということになります。

工場の中のそれぞれの集団にとって、その工場は異なったものであり、各個人でさえも、自分自身の態度と心的状態との立場から工場を見ます。

このことは、その状況が個人にとってどう見られているかということを考慮しなくては、どんな行為をも理解できないことを意味します。

すべての行動には原因があります。その人にとって正当かつ十分な理由でそう行動するという事実を認めなければなりません。行動の理由または原因である条件が変更されれば、その人の行動は変わるはずです。

個人または集団の態度は、特定状況がいかに評価されるかを決定します。それぞれがそれぞれの状況を、異なった準拠体制に基づいて、異なった態度で見ています。

産業上の目的を達するに当たり、態度に関する重要な問題は、次の2点です。

  1. 態度を発見し、測定する方法
  2. 態度は変えられるか。もし変えられるとすれば、その方法はどのようなものか。