城壁に向かう隊列と城壁の側を通過する隊列の重要な違い − キュロスのリーダーシップ⑨

キュロスは、アッシリアから寝返ったガダタスの領地の守りを固めた後、再びバビュロンの方向に向かいました。

バビュロンの近くにも、アッシリア王から離反してキュロスの味方になってくれた者たちがおり、今度は彼らが害を受けることを心配したからです。

キュロスは、進軍しつつバビュロンの都城を見ると、進んでいく道路が城壁のすぐ側を通っていると思われたので、ゴブリュアスとガダタスを呼び、城壁の近くを通らない道が別にないかを尋ねました。

ゴブリュアスは多くの道があることを告げましたが、そのキュロスの質問には驚きを禁じえませんでした。キュロス軍が以前よりも大軍で堂々としているのをアッシリア王に見せつけるために、キュロスは都城のできるだけ近くを通ることを望んでいると思っていたからです。

現に、今より兵力が少ないときにも、キュロスは堂々とアッシリアの城壁のすぐ側まで前進していたことを、ゴブリュアスは知っていました。

キュロスは、隊列が、敵の城壁に向かっていくことと、敵の城壁の側を通ることの違いを説明しました。

敵の城壁に向かう隊列

敵に向かっていくときは、戦うのに最も優れた戦列を組みます。

キュロスは、今よりも小規模の軍隊のときは、広く薄く城壁を囲むこともありましたが、敵の攻撃に備え、戦闘態勢を取るときには、兵力を集め、層の厚い戦列を組みました。

密集隊形にすることによって、兵士たちも互いを身近に意識し、勇気が鼓舞されました。

敵の城壁の側を通る隊列

敵の城壁の側を通るときには、隊列の横腹を城壁に添わせて移動する形になるため、防衛のために戦車を方々に配置しなければなりません。荷車も長い列になるため、その警護兵も数多く必要です。

このような行進では、戦闘部隊が手薄の配置にならざるを得ません。

城壁内にいる敵からすれば、戦列の弱いところを狙って密集隊形で出撃することによって、遥かに強力な兵力で接近戦を戦うことができます。

長い列で行進する兵士たちからは援助の距離が長くなる一方、城壁から出撃する兵士からは城壁に戻る距離が短くなるため、防御にも有利です。

城壁までの距離が、行進している隊列の長さに対して十分に遠い状態で通過していくなら、敵からは隊列全体を大軍として目にすることになります。荷車を防御する武装兵たちによって、全体が恐ろしく見えます。

敵が実際に攻撃してきても、遠くから彼らの姿が目に入るため、弱いところを不意に襲われることはありません。

敵からすれば、攻撃のために城壁から遠く離れなければならないので、退却するにも危険が伴い、全兵力の比較で勝っていると判断しない限り攻撃を試みようとはしません。

以上の話には皆が納得し、ゴブリュアスはキュロスの指示どおりに先導しました。軍隊が都城の側を通り過ぎる間は、後衛部隊を特に強化して通り過ぎました。