確実に競争に勝つために − コア・コンピタンス経営⑧

明日の競争に勝つために、最終的にもっとも大切なのは、明日が見えてきたときに、将来の需要が実際にどこにあるのかをライバルよりも先に知ることです。

そのためには、探検的マーケティングによりトライアンドエラーを繰り返しつつ、グローバルな販売網の準備を整えることです。

探検的マーケティング

新しい市場をターゲットとして開発を進めている場合、事前の市場調査は役に立ちません。そのようななかで、未来の市場に一番乗りするために、ライバル会社よりも早く顧客需要を正確に把握し、どのような性能が製品に要求されているのかを知ろうとするなら、コストを抑えながら、ペースの速い市場参入を繰り返さなければなりません。

著者はこれを「探検的マーケティング」と呼びます。探検的マーケティングの現実の問題点は、製品反復の時間とコストをいかに下げるかということです。

探検的マーケティングは学習が目的ですから、失敗という概念はありません。

成功を讃え、失敗を責めるようなことをすれば、探検的マーケティングではなくなります。最初から保守的な安全策をとるようになり、先行者の真似をしたり、顧客から言われたことだけをするようになります。試みた結果、罰せられるのであれば、誰も試みなくなります。

探検的マーケティングは失敗の免罪符ではありませんが、仕切り直しが不可避になったときには学習しなければなりません。失敗と判定する前に、次の問いに答えなければなりません。

  • リスクを適切に管理したか
  • 市場の発展の速さについて無理のない期待をしていたか
  • 次回の成功確率を高めるような何かを学んだか
  • どのくらい速く再調整してもう一度試してみることができるか

これらの答えがすべてノーであるときに限り、失敗宣言を行うべきです。そうでなければ、速やかに学び、再チャレンジすべきです。

世界的シェアの拡大

市場がついに動き出したときには、世界的なシェアをどうやって最大にするかが問題です。そのためには、他社よりも先に世界の顧客の間に共通のイメージ、強い販売網、新製品やサービスを素早く生み出していく企業力を備えておかなければなりません。

半導体、薬品、通信事業のような業界では、開発のためのコストが莫大ですので、このコストを回収するために、最初から世界市場を狙わなければなりません。

仮に自国の市場でコストが回収できるとしても、現代においては、あっという間に他国で競合他社が同種の製品で市場を獲得してきます。本当に大きな利益を得るのは、グローバルな市場に一番乗りする企業です。

世界的な販売促進を行うためには、製品が市場に到達するずっと以前から準備をしなければなりません。

優先的に先取りすべき市場は、まず、製品の評価の基準となる顧客にアクセスできる市場です。その製品に関して、世界でもっとも洗練された顧客の市場です。また、開発コストを償却できるほどのサイズと機会をもつ市場、成長が早くて見込みのある市場です。

競争相手の母国をあえて狙う方法もあります。そこでシェアを獲得することができれば、競争相手が海外市場でしのぎを削るための攻撃に回す利益をいくらかでも吸い上げることができるかもしれません。

ただし、重要な市場にいち早く進出しさえすればよいというわけではありません。その市場においてもっとも効果的な販売網にアクセスすることに注意を払います。企業は好みの流通チャネルをもっており、それがその市場における販売網の選択において障害になることがあるからです。

また、世界中の顧客が新製品を買って試してみたいと心から思うように、競争相手よりも早く関心を引くことも重要です。事前に共通イメージをもたせておくと、後で役に立ちます。強力な企業ブランドや旗手ブランドをもっていると、それ自体が共通イメージをつくります。

なお、製品を素早く展開する能力は、物理的な販売網を意味するだけではありません。新製品のメリットを世界中の地域担当管理職に素早く伝えたり、各国で適切な販売・マーケティングの資源が投入されるようにしたり、新しい革新的製品が根づいていない場合にはそれを素早く見つけ、改善するということなどができる組織力も意味します。