複合公式組織の構造 − バーナードの組織論⑦

組織には、小さくかつ単純なものから、その内部に補助的組織や下位組織といった部分体系を持つ複合的なものまであります。

大きな「社会」という非公式組織の複合体の中に、公式組織のネットワークが存在します。

公式組織には、支配的な、またはかなり包括的なものがあります。バーナードは、このような組織を「支配的公式組織」と呼び、教会と国家をあげています。

この支配的公式組織に他の公式組織が従属する方法には、直接的な場合と間接的な場合があります。

直接的な場合とは、その下位組織の権利、特権、制約などが、上位組織によって規定され、保証される場合です。間接的な場合とは、許認可などによって制約される場合です。

下位の協働体系は、相当程度、直接、間接に上位組織の司令によって決定されます。ただし、上位組織は下位組織の複合体より成り立っているので、下位組織内に生起することが上位組織に影響します。

個人は国家に従属するとともに、その他の組織にも多重に従属しています。個人はすべての組織の外にあって、様々な組織と多元的な関係を持ち得ます。公式組織の複合性が拡大し、錯綜すればするほど、個人の選択範囲は拡大されます。

そうなると、組織の複合体(複合組織)の間では、個人の貢献を求めようとする競争があり、忠誠の対立が避けられないという重要な問題が導き出されます。

組織の起源と成長

新しい組織は、いくつかの方法によって生じます。

共通目的を達成するために2人以上の人々が同時に努力を捧げる場合、自然発生的に生じることになります。例えば、偶発的な事故に伴って、応急処置のために努力を結集するような場合です。

自然発生的な組織のほとんどは短命ですから、組織であるという印象を与えないことが常です。

新しい組織の起源として、おそらく最も多いと思われるのは、ある個人が意識的に計画し、組織しようと努力することです。自らの目的を掲げ、他人に伝えて協働を求めます。

これと似た別の方法は、既存の組織が親組織となり、人を派遣して新しい組織をつくらせるものです。

既存の組織から分離して新しい組織ができることもあります。成長の結果としての分割、分裂などです。

分割や分裂の場合、新しい組織ができるというよりも、既存の複合組織の補助組織または下位組織の分離に過ぎないこともあります。

新しい組織が、子会社や事業部のように、既存組織との一定の関係を維持しているのであれば、分割や分裂というよりも、既存の複合組織が新しい複合体に変わった、あるいは新しい集団が形成されたといった方が正しいかもしれません。

新しい組織は、最初は小さいことがほとんどです。それは旧来の目的とは異なる新たな目的を自発的に受け入れて生じるか、他の人々を仲間にしようとする一人の人によって促進されます。

小さく単純な組織が、複合的性格の組織に成長していきます。部分組織を新しく作ったり、既存の組織を結びつけたりして、部分組織を増やしながら複合組織として成長していきます。

複合組織の必要性

すべての大きな公式組織は、多数の小さな組織で構成されているということができます。単細胞の大きな組織は存在しないのと同じように、単一体系の大組織というものは存続することが不可能です。

複合組織の基本単位となる組織(単位組織)は、同時にそれに貢献する人々の数でいうと、通常、2〜15人あるいは20人までであり、平均10人以上ではないといいます。

オーケストラのように単純組織として比較的大きいものもないわけではありません。

楽器などによって複数のパートに分かれているという点では複合組織に見えますが、一人の指揮者をリーダーとし、一斉に一つの曲を演奏するため、単純組織というほうが正しいと思われます。

大きな組織が複合組織にならざるを得ない理由は、単純組織の規模に制約があるからです。その制約は、伝達の必要性から生じます。

普通の状態では、目的が単純な場合でさえ、多くの人々は、自分たちのしていることや全般の状況を見ることができません。

中枢伝達経路やリーダーシップがなければ、特定の行為に関わる重要な情報を伝えることができません。

リーダーがいたとしても、人々が広く分散しているような場合は、同時に多くの人々に伝達する範囲や時間に限度があります。

伝達の基本は、目的をその達成に必要な具体的行為に置き換えて伝えることです。何を、いつ(までに)、どこで、なぜ行うべきかということです。

リーダーの必要性

伝達は、たとえ少人数であっても、特定の伝達経路やルールが必要です。ここにリーダーが必要になります。したがって、単位組織の規模は、一般に、効果的なリーダーシップの制約によって決められます。

リーダーシップを制約するものとして、目的や状況の複雑性、伝達すべき内容の難しさ、伝達すべき人数の多さなどがあります。

複合組織は、直接に個人の活動から構成されるではなく、単位組織の活動から構成されます。複合組織には、伝達の必要性から上位リーダーが必要とされます。

上位リーダーは、一般に補助者を伴って上位単位組織を付け加えます。

管理組織

単位組織にも管理職能は必要ですが、必ずしもただ一人によって継続的に行われる必要はありません。

ところが、複合組織においては、伝達の必要性から、ほとんど例外なく下位単位組織の管理職能が通常一人に集中されます。

これは、公式的伝達のために必要であるだけでなく、管理職能を専門に行う管理組織を確立するためにも必要です。いくつかの単位組織の管理者たちが、少なくとも一人の他の人を上位者に持って、一団として一つの管理組織を形成します。

管理職能を専門とする人々は、一つの複合組織における2つの組織単位のメンバーになります。一つは自分が管理者としてまとめている単位組織であり、もう一つは上位の管理組織です。

一人の管理者の一つの具体的行為あるいは意思決定が、2つの異なる単位組織の活動になり、2つの単位組織に貢献することによって複合組織は有機的全体となります。