自らの職業人生をマネジメントする

仕事において、自らを最も貢献できるところに位置づけ、常に成長していくためには、自らをマネジメントすることが必要です。

知識労働者は、他人の指揮命令で働くことによっては自らを生かすことができません。自らの中にある知識を適用して仕事をする以上、自らが自らを律し、強みや弱みを明らかにし、組織の成果に対してなすべき貢献を明らかにしなければなりません。

本人がそのような姿勢で仕事に取り組んでこそ、組織は各人を導き、サポートすることができます。

知識労働者が働くことが可能な期間は、50年を超えることが可能です。50年の間には、社会環境は変化し、自らも変化します。知識は次々と陳腐化していくため、刷新を怠ってはいけません。 50年といえば組織の寿命さえ超えますから、組織に自らの職業人生を委ね切ることはできません。 自らの責任において判断することが必要です。

自らの仕事ぶりを評価しながら、自ら強化すべきこと、新たに学ぶべきことを明らかにし、自ら変化を選択していかなければなりません。

定期的に、自らに次の問いを発し、答えていかなければなりません。

  1. 自分は何か。強みは何か。
  2. 自分は所を得ているか。
  3. 果たすべき貢献は何か。
  4. 他との関係において責任は何か。
  5. 第二の人生は何か。

フィードバック分析

自らの職業人生を充実させ、成功に導く最も重要な要素は強みです。

ドラッカーによると、強みを知る唯一の方法は「フィードバック分析」です。何かをすることに決めたら、何を期待するかを直ちに書き留めておき、9か月後ないし1年後に、その期待と実際の結果を照合する方法です。

ドラッカーは50年以上これを続けた結果、2~3年の短期間に、自らの強みが何であるかが明らかになると言います。

フィードバック分析は、自らをマネジメントするためだけでなく、仕事においても常に実行すべき評価方法です。ドラッカーが何度も何度も書籍で繰り返していることです。

この方法は、強みだけでなく、得意な仕事の仕方や価値観など、それに付随する様々なことを教えてくれます。

フィードバック分析について詳しく知りたい方は、次の記事を参照してください。

所を得る

強みや得意な仕事の仕方を知り、重視する価値観を知れば、得るべき所は自ずと明らかになります。

ただし、これらをすべて知るには、一定の年数を要することは覚悟しておく必要があります。実際に仕事をし始めて、しばらく経験をする必要があります。

果たすべき貢献

「何に貢献すべきか」です。「何に貢献したいか」や「何に貢献して欲しいと言われたか」ではありません。

要するに、他人や組織に頼るのではなく、自らをよく知り、得るべき所を知り、自らを最大限に生かす方法を自らの責任において明らかにするということです。

好きなことをすることとは違います。好きなことをするだけでは、単なる気ままであって、自己満足でしかありません。貢献である以上、自分以外の人の役に立つものでなければなりません。

果たすべき貢献については、「それが何か」というだけでなく、「どこで、いかに貢献するか」も重要であると言います。

なお、貢献は具体的なものでなければなりませんから、あまり先を見るのではなく、せいぜい1年半から2年の間にあげられる成果でなければならいと言います。

ただし、目標は、達成可能であるが難しいものでなければならず、意味のあるもの、世の中を変えるものでなければならないと言います。また、目に見える成果であって、できるだけ数字で表せるものが望ましいと言います。

結局のところ、貢献を知るためには、次の3つの要素が必要です。

  • 状況が求めるもの
  • 自らの強み、得意な仕事の仕方、価値観
  • 成果の意義

これらの要素から、取るべき具体的な行動、すなわち、行うべきこと、始めるべきこと、始め方、目標、期限を明らかにします。

人間関係に関わる責任

多くの人は組織の中で仕事をします。たとえ個人で事業を行っている人であっても、あらゆる仕事を自分でこなせる人はいません。

したがって、人との関係なしに仕事をして成果をあげることはできず、人との関係について責任を負わなければなりません。

共に働く人を理解する

人もまた自分と同じ人間ですから、自分を知るのと同じように、共に働く人を知らなければなりません。共に働く人を知り、よく理解するからこそ、自らの強みを生かすことができます。

なぜなら、自らの強みを生かすとは、自らの仕事を最大限に活用してもらうことだからです。相手に生かされて初めて、自らを生かしたことになります。

相手に生かしてもらうためには、相手のことをよく知らなければなりません。相手の何を知り、理解すべきかは、自分の場合と同じです。強み、得意な仕事の仕方、価値観です。

自分の考えを伝える

共に働く人を理解するのと同時に、彼らには自分のことを理解してもらわなければなりません。自分の強み、得意な仕事の仕方、価値観を伝えなければなりません。

もちろん、相手に理解してもらいやすい方法で伝える努力をしなければなりません。読むのが得意な人には文章で、聞くのが得意な人には口頭で説明します。

ドラッカーによると、組織における人間関係の摩擦のほとんどは、相手を理解しようとせず、自分を理解してもらおうとしていないことであると言います。

知識労働者が主体となった組織では、権力による指揮命令で成果をあげることはできません。信頼によってしか成果をあげることができません。

ドラッカーは、信頼とは好き嫌いではなく、「互いに理解し合うことによって信じ合うこと」であると言います。相手に何を期待できるかを互いに知っているからこそ、信頼が生まれます。

第二の人生

知識労働者の働くことができる期間は、50年を超えることが可能です。一方、組織の寿命はせいぜい30年と言われています。もはや一つの組織で生涯の仕事を全うすることはできなくなりました。

第二の人生を考えておかなければなりません。

誰もが最初の職業でうまくいくとは限りません。人生において挫折することもあります。そのような状態で、長い職業人生を同じ仕事で生き抜くことは困難です。第二の人生で早めに心機一転することに意義を見出すことも可能です。

第二の人生を始める方法

働く組織を変わる方法があります。長年仕事をしてきた職種の仕事を、別の組織で行う方法が一般的でしょう。職種を変えてしまう人もいます。

いきなり未経験の仕事にチャレンジする人もいますが、40代で退職して大学に入り直したうえで、新しい職種で働く人もいます。

副業として新しい仕事を始める人もいます。収入を得ず、短時間のボランティアで始める人もいます。本業で社会的に成功した人が、ソーシャル・アントレプレナー(篤志家)になる場合もあります。

第二の人生に備える

第二の人生を始めるには、かなり前からの準備が必要です。定年後から第二の人生を始めると考えたとき、うまく行っている人は、40代くらいから準備しているようです。その頃になると、現在の組織での自分の限界が明らかになるからです。

30代ですでに志をもっている人もいます。

これまでの仕事のスキルがそのまま使えるのであれば別ですが、なかなかそうはいきませんから、定年直前の準備では難しいでしょう。50代でも遅いかもしれません。

マルコム・グラッドウェルは、『天才! 成功する人々の法則』で、「才能や技量が本物になるには、10,000時間の練習が必要である」という「10,000時間の法則」を紹介しています。1日3時間くらい勉強するとしても、10年近くかかる計算になります。

第二の人生を新たな仕事でスタートし、成功を収めたいのであれば、定年に向けて40代から準備を始めるというのは、十分に根拠のあることかもしれません。