完璧な組織構造というものはありません。
できることは、問題を起こさない組織をつくることです。ある程度の摩擦、不調和、混乱は覚悟しておく必要があります。
実際、組織には、さまざまな看過できない問題が現れてきます。
ほとんどの問題の原因は、最初に行うべき分析が十分に行われていないことにあります。戦略に従って組織の基本単位を明らかにしていないこと、適切に位置づけていないことが原因です。
悪い組織の症状と、その原因を知ることが大切です。
マネジメント階層の増加
マネジメントの階層は、放っておくと、どんどん増加します。数理的な情報理論によれば、一つの中継点の追加によって、伝達される情報は半減し、雑音は倍増します。
ですから、階層が増加すると、組織内の相互理解と共同歩調が難しくなります。目標を混乱させ、間違った方向に注意を向けさせます。
階層の増加は、マネジメントの養成のうえでも重大な障害になります。最下層から最上層に達するために要する年月が増大するからです。
組織が細分化されているため、マネジメントではなく、単なる専門家を養成してしまうことにもなってしまいます。
組織の原則は、階層の数を少なくし、指揮系統を短くすることです。
組織構造に関わる問題の頻発
組織構造に関わる問題が頻繁に発生するようになります。一つの問題を解決したと思ったら、同じ問題が装いを新たに登場してくると言います。
ドラッカーによると、昔ながらの組織論を考えもなしに使うことが原因であると言います。
問題の解決は、正しい分析以外にありません。
- 活動分析
- 貢献分析
- 決定分析
- 関係分析
によって、組織の基本単位を明らかにし、組織に位置づけることが必要です。
注意が逸れる
要となる者の注意を、重要でない問題や的外れの問題に向けさせます。就業態度、礼儀作法、手続き、縄張りなど、戦略の遂行に無関係の問題に時間を取られるようになります。
このような問題は、組織を機械的に組み立たときに発生すると言います。
組織構造を設計するには、組織が求める成果からはじめなければなりません。重要な問題、基幹活動、成果、業績に関心を向けさせることが必要です。
会議の増加
大勢の人を集める会議を頻繁に開かざるを得なくなります。取締役会のような審議機関を除き、本来、会議はすべて組織構造上の欠陥を補うためのものです。
組織構造に欠陥がなければ、通常の職務の遂行の過程で、必要な情報は共有されるはずです。貢献の責任やなすべき意思決定の権限も明確になっているはずです。ですから、理想的な組織は、会議なしに動く組織です。
会議が頻繁に必要な理由は、仕事の分析が十分でなく、仕事の大きさが十分大きくなく、仕事が真に責任を伴うものになっていないことを意味しています。
原因は、決定分析や関係分析が十分に行われていないことです。
感情や好き嫌いの横行
人の感情や好き嫌いに気を使わなければいけなくなってきます。人員過剰が原因です。成果は生まれず、仕事ばかりが増えている状態です。
調整役の増加
調整役や補佐役など、実際の仕事をしない人たちを必要とするようになります。
活動や仕事が細分化され過ぎていることが原因です。あるいは、活動や仕事が成果に焦点を合わせることなく、あまりにいろいろなことを期待されている場合にも起こります。
組織の基本単位が、貢献の種類や仕事の流れとは無関係に、職能の種類によって分類されているときにも起こります。職能は、単独で成果に貢献することはできないからです。
組織が求める成果から、組織の基本単位を明らかにする必要があります。
慢性の組織病
組織中が組織構造を気にし、常にどこかで組織改革を行っている状態です。
組織構造の基本をおろそかにしたときに起こります。組織が大きくなり複雑になったとき、目標や戦略が変わったときにも起こります。
ドラッカーは、自己暗示的にうつ病の形でも組織病が発症すると言います。もともと完全無欠の組織はないのですから、ある程度の摩擦、不調和、混乱は覚悟しておくべきです。
組織改革は、危険の伴う外科手術のようなものです。多少の摩擦や不調和で、安易に組織改革をするのは逆に危険であると戒めています。