アウトソーシングの重要性

ドラッカーは、組織に必要な活動を貢献の種類によって分類します。そのうち、組織全体の成果と関わりのない付随的な活動を「家事活動」と呼んでいます。

家事活動には、健康管理、清掃、食堂、年金・退職基金の管理、政府指定の記録類の管理など、種々雑多な活動が含まれます。本業とは異質の仕事です。

そのため、本業の立場からは軽く見られがちですが、組織にとっては必要な活動ですから、軽く扱うと組織に害を与えます。

ですから、ドラッカーは、少なくとも他の活動から分けておき、望ましくは、職場コミュニティに任せるか、アウトソーシングすべきであると言いました。

アウトソーシングは、事務処理的、保守管理的、補助的な仕事に幅広く導入されています。ドラッカーは、アウトソーシングこそ、それらの仕事の生産性を向上させる唯一の方法であると言います。

生産性の向上を阻害する要因

事務処理的、保守管理的、補助的な仕事は、組織の成果に直接貢献するものではないため、組織外部の顧客が支払う利益によって評価されることはありません。

それらの仕事の直接の顧客は組織内部に存在し、事実上の独占状態にあります。組織内部の顧客は業者を選べないし、変える自由を持ちません。

競争がないため、生産性を向上させるインセンティブが働きにくいと言えます。

本業とは直接関係ないため、人事で重視されず、昇給や昇進は限定的です。通常、組織の本業への異動や経営陣への昇進の機会はありません。この点も、従業員の動機づけを高めるインセンティブが働きにくくなる要素です。

優れた仕事ぶりが本気で評価され、本業と同等に報奨されることはありません。素晴らしい改善提案に真剣に耳を傾けてもらえることもありません。彼らに、注目や敬意がもたらされることはまずありません。

利益による評価から外れているため、予算規模が仕事の重要性と権威の拠り所となってしまいがちです。生産性向上は、仕事の見直しやコスト削減によるのではなく、予算・人員増による対応に傾き、結果的に、組織の肥大化、非効率の温床という逆効果になりかねません。

イノベーションの必要性

事務処理的、保守管理的、補助的な仕事においても、イノベーションが必要です。生産性を向上させるため、仕事を分析して再構成し、ツールの再設計も必要になります。

徹底した仕事の見直しを行うには、集中が必要です。限定された仕事への献身的な取組が必要です。本業に直接関わらない仕事において、そのような献身を要求することは困難です。

アウトソーシングであれば、まさにその仕事を本業にできますから、献身を要求するだけの重要度をもちます。

アウトソーシングによって競合が現れれば、品質改善とコスト削減に取り組まなければ仕事を失うという現実に直面しますから、献身せざるを得ない状況に置かれることにもなります。

生産性の向上に必要な動機づけ

人に対して、仕事の生産性を向上させる動機づけを与えるための重要な要因は、昇進の機会です。その仕事に努力を傾け、立派に行う限り、昇進に頭打ちがないことです。

最終的に、経営陣にまで昇進できる機会が与えられていることが、最大の動機づけになります。

ドラッカーによると、現にアメリカでは、トップ経営陣へと昇進していく主流が、生産部門から財務部門とマーケティング部門に移った途端、工場における生産性が低下し始めたと言います。

形だけの肩書では意味がありません。実質的にも経営陣に入ること、すなわち、経営上の意思決定の権限を実際にもち、責任を負う立場、それに相応しい報酬も伴う立場に昇進できることが重要です。

これを可能とするには、その仕事を本業とする以外にありません。