企業の目的は「顧客の創造」ですから、必要な基本的機能は「マーケティング」と「イノベーション」の2つです。
「マーケティング」とは、顧客の欲求を起点にして、企業のすべての仕組みや活動をつくり、行うことです。企業の一機能ではなく、顧客の観点から見た企業そのものです。
「イノベーション」とは、経営資源が、より大きな富を生み出す新しい能力をもてるようにすることです。変化し続ける社会の中に事業の機会を発見し、顧客を創造しつづけることです。
マーケティング:顧客の欲求からスタートする
顧客を創造するためには、顧客の欲求からスタートする必要があります。
- 顧客は何を買いたいのか
- 顧客が価値ありとし、必要とし、求めている満足は何か
をまず考えなければなりません。
顧客の欲求を起点にして、企業のすべての仕組みや活動をつくり、行うこと、その機能が「マーケティング」です。企業全体の中心的次元の機能であり、顧客の観点から見た企業そのものです。したがって、企業のあらゆる部門がマーケティングに対する関心と責任を持つ必要があります。
マーケティングが目指すものは、顧客を理解し、製品とサービスを顧客に合わせ、おのずから売れるようにすることです。マーケティングは、販売とは逆の視点を持ちます。理想的には、販売を不要にすることがマーケティングの狙いです。
イノベーション:新しい満足を生み出す
社会は変化し、顧客の欲求は移り変わります。人はより良い生活を望み、より多くの、より質の高い便利さや満足を求めます。財やサービスは、必ず陳腐化するのです。
ですから、顧客を創造し続けるために、イノベーションによって新しい満足を生み出し続けることが不可欠です。
イノベーションは、当初「技術革新」と訳されたため、技術に関することだと思われがちですが、そうではありません。経済や社会のコンセプトです。
イノベーションの理論で有名なのは、シュムペーターです。イノベーションを「新結合」という言葉で表現し、次の5つの類型を示しました。
- 新しい製品の生産
- 新しい生産方法の導入
- 新しい販売先の開拓
- 原料または半製品の新しい供給源の獲得
- 新しい組織の実現
ドラッカーは次のように表現し、シュムペーターの類型をより一般化しています。
イノベーションとは、人的資源や物的資源に対して、より大きな富を生み出す新しい能力をもたらすこと
新しく優れた製品やサービスの創造、既存の製品の新しい用途の開発、新しいプロセスの開発、価格の引き下げなどもイノベーションです。
イノベーションもまた、独立した機能ではなく、事業のあらゆる部門、機能、活動に関わるものです。設計、製品、マーケティング、価格、顧客サービス、マネジメントの組織や手法、物流、人材開発など、事業のあらゆる局面で行われます。
イノベーションは、社会のニーズを、利益をあげる事業機会としてとらえることです。個人による偶然のひらめきではなく、体系的な仕事としてマネジメントしなければなりません。
あらゆる部門において明確な責任と目標が必要です。それぞれの分野における進歩発展に貢献するだけでなく、他の分野におけるイノベーションにも貢献する責任を持ちます。