組織の目的追究を阻害する要因

組織には、人を間違った方向へ持っていく要因がいくつかあります。組織全体の目的を達成することを難しくしている要因です。

組織がさまざまな人の強みを生かすためにつくられることから来る副作用のようなものです。専門技能が分化し、組織が階層化することによって、自己の仕事に専念する結果、互いの理解が妨げられるようになります。

技能の分化

スペシャリストという知識労働者が急増している今日、重要性を増している阻害要因と言えます。

組織の階級化

「階級」とは、元々、社会的な格付けや身分のことです。

本来、役割や仕事としての位置づけであるはずの上司が、権力を行使することで、階級として高い(偉い)身分に位置づけられてしまうわけです。

上司の言動、些細な言葉じり、癖や習慣までもが、計算され意図された意味あるものと受け取られます。上司のあらゆる言動の矛盾が取り上げられ、組織とマネジメントに対する信頼を失わせます。

例えば、「建前では人間関係が重要だと言いながら、呼びつけて言うのは間接費の削減だ。ところが、ポストを手に入れるのは経理への報告をうまく書く者だ。」といったことです。

どれもマネジメントとして重要なことですが、部下にはその背景や理由が分かりませんので、それを矛盾と受け取ります。

原因は、部下に、なすべきこと、進むべき方向がはっきりと見えていないからです。だからこそ、権力を持つ上司の言動に一喜一憂し、意図を読み取ろうとします。

この問題は、人間関係やコミュニケーションの改善などで解決できるものではありません。

全員の目を、仕事が要求するもの(課題、目的、目標、基準)に向けさせる仕組みが必要です。部下も上司も、なすべきことは仕事であり、それぞれが期待するもの、それぞれの役割において求められる責任を理解し、果たすことです。支配や従属など無関係です。

階層の分離

階層によって仕事と関心に違いがあります。ある意味やむを得ないことですが、このことが間違った方向づけを生みます。

これもコミュニケーションの改善で解決できる問題ではありません。コミュニケーションが成立するためには、共通の言語と理解が必要です。まさにそれらが欠けていることこそ、問題です。

共通の目的によって、共通の言語と理解を手に入れる必要があります。

報酬の意味づけ

報酬は、経済的な意味としては、組織にとってのコストであり、一人ひとりにとっての収入を意味します。ところが、実際はそれだけではなく、多くの価値観を意味として含んでいることが問題を起こします。

トップマネジメントの価値観を表しており、組織や社会における位置づけを意味します。成果に対する評価だけでなく、人間に対する評価にも結びつきます。ゆえに、正義、公正、公平の観念とも情緒的に結びつくことになります。

報酬に、すべての者を納得させるような万能の計算式はありません。様々な意味合いの妥協でしかありません。

ドラッカーは、報酬システムは単純にしなければならないと言います。公式を押し付けるよりも、判断を働かす余地のあるもの、個々の事情に応じられるものにしなければならないと言います。

透明でなければなりません。完全に納得できるものではなくとも、仕組みが理解できるものでなければなりません。

できることは、

  • 間違った行動を褒めていないか
  • 間違った成果を強調していないか
  • 共通の利益に反する間違った方向へ導いていないか

を監視することです。