戦術的意思決定と戦略的意思決定

マネジメントが重視すべき意思決定においては、問題を明らかにすることに焦点を合わせなければなりません。

しかしながら、実際の意思決定についての議論の大部分は、問題の答えを出すことに集中しています。答えを重視してよい意思決定は、それほど重要ではない日常の「戦術的な意思決定」です。

一方、マネジメントが行うべき重要な意思決定とは、「戦略的な意思決定」です。

戦術的意思決定

戦術的意思決定は、状況や満足させるべき条件がすでに分かっているような単純な意思決定です。つまり、解決すべき問題はすでに明らかになっており、その解決だけが必要とされている状態で行う意思決定です。

通常は方法論の選択であり、判断基準は経済性です。最小の労力、コスト、影響で求める結果を得る方法を決定します。

ドラッカーが単純な例で説明しています。朝のコーヒーブレイクで、2人の秘書のどちらがコーヒーを運ぶかを決めるのは、戦術的意思決定です。

戦略的意思決定

同じような例で言うと、そもそも朝のコーヒーブレイクは必要かどうかを決定することは、戦略的意思決定に当たります。

コーヒーブレイクは仕事の成果にとってプラスかどうか、あるいは、すでに定着している習慣であれば、それを止めることで社員の不満など大きな問題に発展しないか、などを考慮する必要があります。

すなわち、戦略的意思決定は、仕事の成果、ひいては事業の成果に関わる意思決定であると言えます。

例えば、事業の目標や手段、生産性、組織、大きな資本支出などに関わる意思決定が典型です。

注意しなければならないことは、戦術的意思決定のように見えて、実は戦略的意思決定である場合も多いということです。

例えば、販売区域の決定、販売要員の訓練、工場のレイアウト、原料の在庫水準、機械設備の予防的保全などです。いずれも、生産性を大きく左右し、事業の成果に直接関わります。

ですから、特定の部門だけに関わると考えて安易な意思決定を行うと、部分最適が事業全体に害を及ぼすことさえあります。

たとえ小さな意思決定に見えたとしても、定型的意思決定として職務上明確になっている意思決定でない限りは、戦略的意思決定であることを前提に、問題を明らかにすることから始めるべきです。

戦略的意思決定に特有の対応

戦略的意思決定は、範囲、複雑さ、重要さがどうであろうとも、まず、問題を明らかにすることを重視しなければなりません。

そのためには、状況を把握することが必要です。状況を変えることが必要かもしれません。使える資源、必要な資源を明らかにすることも必要です。

事業の成果に影響を与える意思決定になりますから、部分最適は禁物です。事業全体の目標と調和する必要があります。

問題の明確化、解決案の作成、解決策の選定、効果的な実行が必要です。