成果をあげるための秘訣は、最も重要なことから始め、一度に一つのことだけに集中することです。
成果をあげるにはまとまった時間が必要ですが、常に使える時間に比べて重要な仕事は多いからです。時間と労力と資源を集中するほど、実際にやれる仕事の数と種類は多くなります。
集中して成果をあげるためには、なすべき仕事となすべきでない仕事を峻別し、優れた人材をなすべき仕事にあてることが必要です。
必要なことは情報そのものではありません。情報を洞察し、決断する勇気です。成果に貢献する責任と献身、明確な目的意識に裏づけられた決断であり、真のリーダーシップです。
成果をあげる秘訣は「集中」
成果のあがらない人には特徴があると、ドラッカーは言います。
まず、一つの仕事に必要な時間を過小評価し、すべてがうまくいくものと楽観します。しかし、新しい仕事でうまく行くものなど一つもありません。常に予期しないことが起こります。
次に、急ごうとして、同時にいくつかのことを始めます。その結果、手がける仕事のどれ一つにもまとまった時間を割けません。いずれか一つの仕事が問題にぶつかると、すべてがストップしてしまいます。
成果をあげるための秘訣を一つあげるとするなら「集中」であると、ドラッカーは言います。最も重要なことから始め、一度に一つのことだけを行います。
なぜなら、成果をあげるにはまとまった時間と努力が必要ですが、実態は、常に使える時間は少く、行わなければならない重要な仕事は多いからです。同時に複数の仕事に着手すれば、時間も努力も分散し、いずれも成果をあげることはできません。
結果的に、時間と労力と資源を集中するほど、実際にやれる仕事の数と種類は多くなります。
一度に一つのことに集中するためには原則があると、ドラッカーは言います。非生産的な仕事の計画的な廃棄、優先順位の決定です。
計画的廃棄
一つの重要な仕事に集中するためには、計画的、定期的に現在の仕事を見直し、生産的でなくなった過去のための仕事を捨てていくことです。
「その仕事をまだ行っていなかったとして、いまから手をつけるか」を問います。無条件でイエスでないかぎり、やめるか大幅に縮小します。
成果があがらない原因は時間の不足
新しいことで成果をあげることができない原因は、アイデアや創造力の不足ではないと、ドラッカーは言います。
本当の原因は、皆がすでに生産的でなくなった仕事に忙しく、よいアイデアを実現すべく仕事をしていないことです。しかも、非生産的な仕事で発生している多くの問題を解決するために優れた人材が割り当てられて忙しく、よいアイデアを実現するための時間を割くことができないことです。
完全な失敗を捨てることは難しくありません。誰の目にも明かな失敗にこだわる者はいません。
捨てられないのは過去の成功です。会社に恩恵をもたらした成功は、非生産的になった後も生き続ける場合がほとんどです。問題が起こっても、その都度対処して存続を図ろうとします。引続き恩恵を与えてくれることを信じて、手放すことができません。
しかし、ドラッカーがそれ以上に危険であると言っているのは、本来うまく行くべきでありながら、なぜか成果のあがらないまま続けている仕事です。経営者の独善的製品に多いと言います。独善的な投資が続けられ、最も有能な人たちの能力が浪費されているのが常です。
廃棄を計画的に行うためには、スクラップ&ビルドを原則としなければなりません。新しい活動を始める前に、必ず古い活動を捨てることを原則とします。
優れた内部人材を活用する
新しい仕事が成果をあげるには、その仕事に最も相応しい強みをもった有能な人をあてなければなりません。新しいものは必ず問題にぶつかるからです。
新しい仕事のために新しい人を雇ってはならないと、ドラッカーは言います。
組織に外部から違うものの見方を入れるため、外から新しい人材を定期的に採用することは必要ですが、まずは、トップの次の地位や明確で誤解の余地のない活動の責任者につけるべきだと言います。組織との相性や、実際に成果をあげることができるかを見ることが先決です。
新しい仕事は、社内で能力を証明済みの人、社内のベテランによって始めるべきであると言います。
そのためにも、有能な人の負担を軽くしておく必要があります。有能な人が配置されがちな非生産的仕事を廃棄しなければなりません。
優先順位と劣後順位
常に利用できる時間は不足し、有能な人材は多忙です。
すでに非生産的になってしまった過去の仕事を優先する圧力、内部を優先する圧力が常に働いています。重大なものより切迫したものを優先する圧力です。
新しい仕事は後回しにされてしまいます。必要な変化を見出す仕事、組織の外部に注意を払う仕事をないがしろにしてしまいます。
必要なことは、なすべき仕事となすべきでない仕事をはっきりと決めることです。つまり、優先順位の決定です。
ただし、本当に行うべきは、取り組むべきでない仕事の決定、つまり劣後順位の決定とその遵守です。真先に必要なのは、廃棄すべき仕事の決定です。
意思決定の勇気
優先順位や劣後順位の決定では、前提として分析が必要ですが、最も重要なことは勇気です。どれも重要に見え、行わなかったら後悔するかもしれないと恐れるからです。
成果をあげるためには、真に意味あること、最も重要なことは何かという観点から、時間と仕事について勇気をもって意思決定しなければいけません。
勇気と言っても、闇雲に決定することではありません。ドラッカーは、決定のための原則を示しています。
- 過去ではなく未来を選ぶ
- 問題ではなく機会に焦点を合わせる
- 横並びではなく独自性をもつ
- 無難で容易なものではなく変革をもたらすものを選ぶ
いずれの選択に関しても、決して識別が難しいわけではありませんが、選ぶには勇気が必要です。どうしても成功した過去を選びたくなりますし、過去の問題を解決する方が無難だからです。横並びの方が安心ですし、変革は脅威に見えるからです。
上記の要件に合致するものから最優先の仕事を一つ選び、それだけに集中します。
最優先の仕事を終わらせた後、自動的に次の優先の仕事に取り組んではいけません。改めて状況を検討し、最優先すべき次の仕事を選びます。状況は常に変化するからです。新たな課題が常に現われてくるかです。優先順位の高い仕事を実現していくことによっても優先順位は変わっていきます。
優先順位や劣後順位は、常に現実に照らして検討修正しなければなりません。