「リーン・スタートアップ」とは何か?

イノベーションを伴う起業といえども、それはマネジメントの一種です。正しいやり方で進めることによって成功します。やり方を学ぶことができ、教えることができます。

リーン・スタートアップのベースには、リーン生産方式やデザイン思考、顧客開発、アジャイル開発など、従来から活用されてきた製品開発その他のマネジメントの手法があります。

サイクルタイムが極端に短い、顧客の望みを中心とする(顧客から望みを聞くわけではない)、意思決定を科学的に行う、などの特徴を持ち、イノベーションを継続的に生み出せるアプローチです。

スタートアップでは、エンジニアリングや製品開発と同程度に事業部門やマーケティング部門も重視すべきであり、その方法論も同程度に的確でなければなりません。

リーン・スタートアップで最も重要なことは、仮説の検証を通して学ぶことそのものです。

「スタートアップ」と「リーン・スタートアップ」

「スタートアップ」とは、とてつもなく不確実な状態で新しい製品を創り出さなければならない人的組織を指します。会社のサイズ、業界、セクターの違いは問いません。

スタートアップは組織ですから、従業員の採用、職務の調整、成果を出せる企業文化の醸成など、組織の構築に関する様々な活動が行われます。

製品はできるだけ広くとらえます。会社との関わりを通じて顧客が体験すること、顧客にとっての価値を生み出すものすべてを指し、サービスを含みます。

スタートアップが行う新製品開発には、イノベーションが伴うことが前提です。科学的な新発見、既存技術の転用、隠れた価値を掘り起こす新たなビジネスモデル、今まで提供されていなかった場所や提供が不十分であった場所に対する製品の提案などです。

「リーン・スタートアップ」とは、スタートアップが準拠すべきマネジメントの方法を指します。イノベーションをマネジメントする方法であり、一般的な総括マネジメント手法とは異なります。

大いなるビジョン、顧客に対する洞察、サイクルタイムの短縮など様々なポイントに等しく気を配りながら、「検証による学び」を通して画期的な新製品を開発する方法です。

「リーン(lean)」はトヨタ生産方式である「リーン生産方式」にちなんだものです。「ぜい肉の取れた、体が締まった、痩せた」などの意味があり、価値を生み出す活動と無駄をはっきりと区別して、質の高い製品を作ろうとする考え方です。

具体的な内容は、作業員が持つ個人的な知識や創造性の活用、バッチサイズの縮小、ジャストインタイムの製造と在庫管理、サイクルタイムの短縮などです。

リーン・スタートアップでは「検証による学び」を単位として進歩を計測します。科学的な学びを基準にすることによって、スタートアップの足を引っ張る無駄を発見し、源から断つことを目指します。

リーン・スタートアップの原則

リーン・スタートアップには、5つの原則があります。

アントレプレナーはあらゆるところにいる

リーン・スタートアップが前提とする「スタートアップ」は、とてつもなく不確実な状態で新しい製品(サービスを含む。)作り出さなければならない人的組織を指します。

ですから、スタートアップで働く人はアントレプレナーです。スタートアップを目的地に到達させることを役割とします。

起業として新しいスタートアップを立ち上げる一般的なアントレプレナーだけでなく、巨大企業で新規ベンチャーや製品改革を担当する人(イントレプレナー)も含みます。イントレプレナーもまた、社内にスタートアップを立ち上げる必要があるからです。

スタートアップは、あらゆる業界、あらゆるセクターに存在し、すべてにアントレプレナーが必要です。

起業とはマネジメントである

スタートアップとは、製品ではなく組織です。先行きの不透明性という状況に即した新たな経営方法が必要になります。

検証による学び

スタートアップの存在意義は、どうすれば持続可能な事業が構築できるのかを「学ぶ」ことです。この学びは、ビジョンの要素ごとに確認実験を行い、科学的に検証することによって行います。

構築−計測−学習

スタートアップの基本は、次の3段階からなるフィードバック・ループです。

  1. アイデアを製品にする
  2. 顧客の反応を計測する
  3. 方向転換するか、辛抱するかを判断する

スタートアップを成功させるためには、このフィードバックループを素早く順調に回すように社内の仕組みを調整しなければなりません。

革新会計

進捗状況の計測、チェックポイントの設定、優先順位の策定などを定量的に評価する方法です。スタートアップに適した会計手法は、通常の管理会計とは異なります。

スタートアップが失敗する理由

優れた計画やしっかりした戦略、市場調査の活用に目を奪われ、時間を取られることが問題です。これらは、不確実性が大きいスタートアップに相応しくありません。どういう人が顧客になるのか、どういう製品を作るべきか、などが分からないのがスタートアップだからです。

逆に、方法論を諦めて「とにかくやってみようと」と始めてしまうことも問題です。無秩序が成功することはありません。

スタートアップにもビジョンが必要です。その実現のために、人々がつぎ込む情熱やエネルギーを無駄にすることなく、マネジメントしなければなりません。