他社との比較分析は従来から行われていました。その代表的なものとして「競争力分析」があります。コスト、品質、納期に関して、競合他社との競争力の差を定量化するものです。
競争力分析は成果を比較するものであるため、その成果を生み出すためのスキルやプロセスについての深い理解を得ることは、通常困難です。
だからといって、競争力分析が不要であるということではありません。競争力分析を基礎にベンチマーキングを組み合わせることによって、成果の違いを生み出しているビジネス・プロセスを知り、具体的な改善につなげていきます。
競争力分析の流れ
競争力分析は、通常、3つの独立した分析の流れで構成されます。
リバース・エンジニアリング
リバース・エンジニアリングとは、完成された製品を分解して、その部品や原材料を調査して、製造方法や原価を推定する手法です。ソフトウェアにも利用されます。
リバース・エンジニアリングによって、効果的な製品設計や、コスト、その生産に必要なプロセス技術が明らかになります。
公開された情報を徹底的に分析し、ビジネス・システム全体の経済性に焦点を当てることによって、競争面でのコスト・ポジションについての根拠がさらに明らかになります。
財務分析
財務分析は、生産能力の稼働状況を示し、他に考え得る流通経路の強みと弱みを明らかにします。
さらに、競合他社の経営資源の使途を分析することによって、戦略の違いを評価します。
現場作業
これらの分析を、サプライヤー、代理店、顧客へのインタビューなどで補足することにより、認識ギャップを埋め、自社と異なるアプローチが、市場でどのように受け入れられているのかを具体的に理解します。
競争力分析の問題点
競争力分析は、自社の非効率、無駄、無気力の根本原因を、経営者が把握するのに十分な助けとなるとは限りません。
競争力分析は業績に着目するため、通常、特定の業界に焦点を当てて検討を進めます。そのため、他の業界に属する企業の業績が示す、隠れた突破口は見逃されます。
つまり、競争力分析は、競合他社の優れた業績とのギャップを定量化しますが、その優れた業績がどのように達成され、維持されるのかについては深く教えてくれません。「これから何をなし得るか」も明らかにしません。
通常、組織構成、役割と責任、スキルのレベル、経営慣行、手続き、動機づけのアプローチが、どのようにシステムとして機能し、業績向上を生み出しているかについては、検討できません。
したがって、競争力分析の結果を表面的にとらえ、業績を上向きに転じさせるために必要な行動と、全く逆の行動をとることすらあります。
ある結果を得るために、これまでのビジネス・プロセスを変えることによって、副次的なマイナス面を伴うことがあります。それをどのように克服するかを知らないままに安易な変更を行い、逆効果になることがあります。
企業は全体構造の中で業務を行っているため、特定の業績に焦点を当てるだけでは見えない部分が数多くあるのです。
公開された情報を見ているだけでは、ありふれた陳腐なものに見えたり、矛盾する部分があったりするものです。
これらの問題点は、ベンチマーキングによって補う必要があります。