「組織」、「組織化」とは何か?

ドラッカーの書籍によく登場する言葉に「組織化」というものがあります。

これを「人が集まって組織をつくる」と理解すると、意味が分からない場合も多いです。

もっと一般的な意味で理解しましょう。

「組織」とは、個々バラバラの要素を一定の目的のもとに組み立てたものを意味します。

「組織化」とは、組織をつくることです。

「組織」とは何か?

「組織」という言葉は、一般的に、個々バラバラの要素を一定の目的のもとに組み立てること、あるいは、組み立てられてできあがったもの自体を指します。

会社組織のように、人が集まってできている組織だけを指すわけではありません。

「細胞組織」、「筋肉組織」、「内臓組織」など、生物の構成単位を指す言葉としても使われます。

織物の織り方、つまり、縦糸と横糸の組み合わせ方を指すこともあります。

組織の形や構成は目的によって決まる

どのような要素を組み合わせるのか、あるいは、どのような形に組み合わせるのかは、「目的」によって決まります。

「何のために組み合わせるのか」が重要になるわけです。

個々の要素の機能が相互作用して組織全体の機能となる

組織がつくられても、それを構成している個々の要素は消滅するわけではありません。

個々の要素は、それぞれが特有の機能をもっており、組織の中でもその機能を発揮します。

それぞれの機能を発揮することで、それらがつながり合い、影響し合い、相乗効果をつくりながら、目的に向かって組織全体として一つの大きな機能が発揮されているわけです。

ドラッカーによる組織の特性

人がつくる組織について、ドラッカーが掲げる特性を整理してみましょう。

組織ではない集団、すなわちコミュニティや社会と言われるものは、その中に所属する人そのものが目的です。一人ひとりの生存や生活を守り、幸福を追求できるようにするために存在します。

人が自らの都合だけで生きていけば、全体としては不調和が起こり、自らの生存自体も脅かされますから、集団をつくり、ルールを決め、相互に守ることによって、一人ひとりの生存と幸福追求が保証されるわけです。

他方、組織は、社会に対して特有の機能を果たすための道具です。専門分化し、一つの目的や使命に集中してはじめて、効果的な存在となります。

組織の成果は、常に組織の外部にあります。組織は道具ですから、組織の中にはコストしかありません。

外部に生み出す成果に対し、外部の顧客が対価を支払ってはじめて、組織は報酬を手にし、コストを支払って残った利益を明日のために使うことができます。

組織への参加は自由です。人は自らの専門知識を最大限に生かせる組織を求めて移動する自由があり、組織は人を求めてマーケティングの競争をします。

知識労働者を中核とする組織は、上下関係ではなく同僚によるチーム組織です。知識は、それ自体に上位・下位はなく、共通の任務に対する貢献によって位置づけられるからです。

組織は共通の目的に向かって統合された機能を果たすため、マネジメントが必要です。マネジメントは、戦略を決定し、成果に責任をもちます。戦略の実行は、指揮命令によるのではなく、方向づけによります。

組織は外部に対して目的を果たすための機能ですが、運営においては独立していなければなりません。組織に参加する者たちが自由に仕事を行えなければ、成果をあげるための動機づけはできません。

「組織化」とは何か?

「組織化」とは、組織をつくることです。組織ができあがっていく過程を意味することもあります。

ドラッカーの書籍では、主に前者の意味で使われていることが多いようです。

具体例をあげてみます。

人の組織化

目的に相応しい様々な能力を持った人たちを集めてきて、組織をつくることです。

バーナードは、組織について「2人以上の人々の意識的に調整された活動や諸力の一体系」と定義しました。さらに、組織が成立するための要件として、

  1. コミュニケーション
  2. 貢献意欲
  3. 共通目的

の3つをあげました。

人を組織化する最大のメリットは、様々な強みを集め、互いの弱みを無効化することによって、一人ひとりの能力の合計を大きく上回る能力を手にできることです。

欲求階層説で有名なアブラハム・マズローは、個人の目標を組織の目標と整合できるようメンバーを支援することが、組織化のために必要であると言いました。

コンサルタントのシェリ・ローズは、この考え方を補足して、組織化を可能とするためには、メンバーが自分の信念や価値観が仕事の中にはっきり活かされていると感じられることが重要であると言っています。

適当に集まったメンバーによる組織化は困難です。組織化において最も重要なポイントは、メンバー選定の段階です。高業績企業は、共通して採用の段階を重視し、時間をかけて選抜を行っています。

経営資源の組織化

人、物、金を集めてきて、組織をつくることです。企業などは正にそうです。

資金を集め、社員を集め、設備を導入して、製品を作り、顧客に販売しています。

仕事の組織化

特定の目的(アウトプット)を果たすために、個々の動作(要素動作)や作業(要素作業)、道具、情報などを組み合わせ、順序立てることによって、一まとまりの仕事として組み上げることです。

あるいは、一つの目的を果たすために、多くの人に分担された仕事を順序立て、組み合わせ、連携させることです。

人などの経営資源を組織化することは、仕事を組織化することでもあります。

情報の組織化

バラバラの場所で発生し、蓄積されている様々な情報を集約することです。

集約された情報をもとに、何らかの分析をしたり、問題を明らかにしたり、意思決定をしたりします。

「情報を集約する」とは、単に寄せ集めるだけではありません。互いに組み合わせたり、比較したり、関連づけたり、分類したりしながら、さらにそこから新たな情報を生成し、解釈することです。

実のところ、知識労働者が主体の組織では、情報の収集、分析、選択、結合、加工・再生成、やり取りが仕事の流れそのものです。

ですから、情報の中断、混線、劣化などが起こったり、雑音が混じったりしないよう、円滑に情報が流れるように組み立てられた組織が理想的であると言えます。

そのような組織は、できる限りフラットな組織構造であることが必要です。

組織がフラットになれば、一人の管理者に属する部下の数は多くなります。結果的に仕事は大きく、責任は重くなります。

一人ひとりの部下も、上司から管理されて仕事をするようでは、組織は機能しません。部下の一人ひとりが主体的な情報の担い手にならなければならなりません。

自ら手にし、提供できる情報が、権限と責任を決めるものになります。

すべての者が「いつ、どこで、いかなる情報を必要としているか」を明らかにする責任があります。同時に、すべての者が「誰に、いつ、どこで、いかなる情報を提供しなければならないか」を知らなければならないことも意味します。

(参考:「情報化組織」

責任の組織化

ドラッカー特有の表現です。

「責任」という言葉は、いろいろと専門的な意味があるようですが、一般的には、大きく分けて次の2つの意味があります。

  • 自分が引き受けて行わなければならない任務、義務
  • 自分がかかわった事柄や行為から生じた結果に対して負う義務や償い

ドラッカーは、主に前者の意味で使っているようでありながら、後者の意味も含ませているように思います。

いずれも、自由意思に基づくことが重要であると思います。押しつけられた義務ではなく、自由な選択によって引き受ける義務であるからこそ、「責任」として受け入れることができるわけです。

要するに、自己目標管理の仕組みのもとに、組織のすべてのメンバーが、組織全体の目標達成に貢献すべく参画するということだと理解されます(参考:「自己目標管理」

  • 自由意思による参画であること
  • 所属部門の全体目標設定に参画すること(任務、義務としての責任)
  • 所属部門の全体目標に貢献するため、その目標から導かれる自己目標を自分で設定すること(同上)
  • 自己目標を達成するため、主体的に最善の努力をすること(同上)
  • 結果を自己評価し、自ら改善すること(結果に対して負う義務としての責任)

自ら全体目標に貢献する意思を表明し、自ら目標を設定し、自ら実行し、自ら評価して改善するということが、責任を果たすということです。

「責任を組織化する」とは、組織のすべてのメンバーに、そのような責任を果たすことを要求するということです。そのことは、階層や役職や肩書ではなく、各人が自ら率先して負う責任によって仕事が連結・統合され、組織が成立し、機能するということを意味します。

責任一般に関する考え方については、H・F・サマーズが有名です。彼は、責任を①義務(duty)、②自由裁量(discretional power)、③結果責任すなわち合理的説明の可能性(accountability)の3つに分解しました。責任があるとか、責任を取ったというためには、これら三要素が必要であると考えたわけです。

②「自由裁量」については、責任を果たすためには一定の権限が必要であるということに対応します。自己目標管理において、目標を設定したら、その達成に向けた具体的行動には一定の裁量が与えられるべきという考え方の根拠になるでしょう。

この責任の三要素は、本人の責任の構造を明らかにするものではなく、委任された責任の構造の分析のためのものであるとされます。つまり、組織の一員として、組織の目的の達成に貢献する責任という考え方にもよく馴染むと考えられます。