民営化がもたらす雇用破壊と衰退 − グローバリズムの正体④

国際通貨基金(IMF)のグローバリズム・イデオロギーの背景にある「ワシントン・コンセンサス」には三本の柱があり、その一つが民営化です。

多くの国では、政府がしばしば勢力を傾けるべきでないところに力を注いでいるため、本来やるべきことができずにいます。問題は、政府が大きすぎるというよりも、政府が正しいことをやっていないところにあります。

一般に、政府の本分は製鋼所を経営することではありません。そのような役割は、競争のある民間企業のほうが効率よく果たせます。これが民営化を推進する論拠です。

民営化が経済成長に寄与できるようになるには、満たすべき重要な前提条件がいくつかあります。そして民営化をどのように推進するかによって結果は大きく違ってきます。

IMFは、イデオロギーにとらわれ、民営化を早急に進めなければならないという思い込みが強過ぎました。その結果、しばしば約束された恩恵をもたらさず、民営化そのものに対する反感を生みました。

IMFは、政府が事業から撤退すれば直ちに市場が生まれてあらゆる需要を満たすと推測しましたが、現実には、市場が必要なサービスを提供できていないから多くの政府活動が必要とされるのです。

政府事業を排除することは、大きな穴を放置することにもなります。最終的に民間部門が参入するにしても、それまでの苦しみは大きく、その影響は後々まで残ります。

IMFが民営化を急ぐ理由

IMFは、民営化を急いで進めることこそ重要であり、競争や規制の問題には後で対処できると主張します。そこに危険があります。一度既得権益が生まれてしまうと、そこには資金もあるので、専売権を維持しようとして規制や競争が押しつぶされ、民営化のプロセスが歪められます。

IMFが競争や規制を後回しにするのには理由があります。IMFは、産業の効率性や競争力といった構造的な問題よりも、政府赤字の規模のようなマクロ経済的な問題を重視するからです。民営化によって規制のない専売会社をつくると、結果として政府の収入が増えるため、政府の財政が改善されるように見えるのです。

性急な民営化の弊害

民営化された専売会社は、その専売権を政府よりも有効に活用するため、不当な高価格など、結果的に消費者が苦しめられることになります。

この種の民営化では、労働者も犠牲となります。民営化すると国家事業は赤字から黒字に転じることが多いですが、それは従業員を削減するからです。

しかし、エコノミストは全体の効率性に着目しなくてはなりません。失業に関連する社会的なコストを、概ね民間企業は考慮に入れないものです。

発展途上国の場合、失業した労働者が生活保護を受けることは滅多にありません。それは失業保険という仕組みそのものがないからです。

ただし、大きな社会的コストには事欠きません。最悪の場合、都市暴力、犯罪増、社会不安、政治不安といった形で現れます。

そこまでいかなくても、失業のコストはきわめて高くつきます。何とか職を維持している労働者の間にも不安は広がりますし、疎外感も生まれます。家族にも余計な経済的負担がかかります。

とくに会社が外国人に売られた場合、しばしばそれが顕著となります。国内企業のように社会状況を考慮しないからです。

民営化に伴う最も深刻な心配は、実際に頻発している腐敗です。

市場原理主義者は、民営化によってエコノミストのいう「レント(超過利潤)追求」が減るという決まり文句を口にします。役人が政府事業の収益を掠め取ったり、自分の友人に契約や仕事を斡旋したりすることができなくなるといいます。

しかし、実際は、民営化が事態を一層深刻にしてきました。今日、多くの国で、民営化は「収賄化」だと揶揄されるほどです。政府が腐敗しているときに、民営化すればその問題を解決できるという証拠はありません。その腐敗した政府が民営化の舵を握るだけだからです。

不正に操作された民営化のプロセスは、政府の閣僚が自分の懐に入れられる分を最大限に高めるように設計されるのです。

民営化を進める方法

民営化は、包括的なプログラムの一部でなければなりません。

民営化がしばしば引き起こす雇用破壊を考慮して、雇用創出を盛り込んだプログラムをつくる必要があります。雇用創出を助ける金利の引き下げを含んだマクロ経済政策の実施が必要です。併せて重要なのは、タイミングと順序です。

教科書によると、私有財産権が明確に定義されていさえいれば、新しいオーナーは必ず資産が効率よく運営されるようにするといいます。しかし、相応しい法的構造や市場制度がなければ、新しいオーナーはその資産を産業拡大の基盤として使うよりも、処分したほうがいいと思うかもしれません。

実際、ロシアでも他の多くの国でも、民営化は成長を促す効果的な力になりそこねたどころか、衰退に結びつくことさえありました。それが民主的な市場制度への信頼を損ねる強力な要因となりかねないことも証明されています。